あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

こんにゃく問答。

2018-06-12 | 
「こんにゃく、いつ食う?」
「そりゃ、こんにゃくだけに・・・明日じゃないよな」
「いやいや、こんにゃくを食うのだから・・・今晩?」
「違うって、こんにゃくなんだから・・・今宵」
というようなどーしようもない会話を昔の相方JCと何回したのだろう。

こんにゃくというものはこんにゃく芋からできるということを知識で知っていた。
だがその植物がどういう葉っぱをしているのか、どういう芋なのか知らなかった。
今はネットで調べればこんにゃく芋の写真などが幾らでも出てくる。
それで人々は知った気になってしまう。
だが自分で最初からやってみるのと、ネット上で見た写真で知った気になるのとは雲泥の差だ。
友達のゴーティーからピンポン玉ぐらいの種芋をもらったのが数年前。
「3年ぐらいかかるよ」と言われて育て続け、我が家のコンニャク芋もソフトボールぐらいの大きさになった。
いよいよ人生初のこんにゃく作りに挑戦である。
こんにゃくは夏の間に成長して秋になると茎と葉っぱは枯れる。
暑いのが好きな植物なのだろう、温室の中で大きく育ったこんにゃく芋を秋に収穫した。



さていよいよ、こんにゃく作りなのだが、こんにゃくを固めるためには消石灰(水酸化カルシウム)もしくは炭酸ソーダというものが必要だ。
友達のアヤちゃんの実家ではこんにゃくを自分で作っていたそうで、彼女の家から炭酸ソーダを送ってもらって、一緒に作ることになった。
アヤちゃんは何年か前にはマウントクックでハイキングガイドをしていた娘で、今は結婚してクライストチャーチに住んでいる。
家に呼んだり、こちらが遊びに行ったりという仲である。



アヤちゃんのお母さんのレシピに沿ってまずは小さく切ってミキサーでドロドロにする。
こんにゃく芋は素手で触ると痒くなるらしいので手袋着用。
ただしこれにも個人差があるらしく、僕は平気だった。
ドロドロにした物を鍋で10分加熱。
焦げ付かないように気をつけなくては。
そして炭酸ソーダを水に溶かす。
炭酸ソーダの結晶は半透明でいかにも化学物質といった感じで、見た目はアンフェタミンのようだ(見たこと無いけど)
加熱したドロドロの状態にアンフェタミンじゃなかった、炭酸ソーダ水溶液を加えて混ぜる。



ひたすら混ぜる。
するとなんとなく固まってきた。
これを平たい容器に入れて冷ます。
こんにゃくの黒いツブツブはひじきだそうで、他にも青海苔なんかいれるのもあるらしい。
物は試しに少しだけ青海苔を入れてやってみた。
そうして数時間、冷めて固まったものを茹でる。
そして出来上がり。
こんにゃくは腐らないので常温で保存してよい。
ただし水は毎日替えるというのがアヤちゃんのお母さんからの教えである。





さてそうやって作ったこんにゃく。
刺身と田楽で食ってみた。
これが美味いのである。
美味いのだが、それをどう表現してよいか分からない。
食感はプニュプニュで味はシンプルにこんにゃくの味。
これじゃあ、読んでる人は分からないよな。
こんな時に海原雄山は何と言うのだろうか。
この美味さを文字に出来ないのがもどかしいが、とにかく美味い。
これはうちに来て食ってみてくれ、というしかないな。



初めてのこんにゃく作りは大成功。
家族にも大好評、ご満悦である。
とある大学の先生の言葉、「最終学歴よりも最終学習暦」
これはいいぞ。
僕の最終学歴は工業高校卒だが、自分で実際にやって学ぶことを学習と呼ぶならば、最終学習暦はこんにゃくだ。
自分の中では最終学習というより最新学習という方が近いか。
ビール作り、日本酒作り、鳥の捌き方、石鹸作り、いろいろと学んだものだ。
学問というもののあり方、そらに学歴社会というものを疑問に思っている自分である。
机の上の学問も大切かもしれない。
だけど、その教科書なり教材が間違っていたらどうなるのだろう。
僕は自分でこんにゃく芋を育て、先人の知識を借りて自分でこんにゃくを作った。
そうやってできたこんにゃくは美味い。
これが僕にとっての学習である。
そうやって人間は学ぶ。



「ねえねえ、こんにゃくに合うお酒ってなにかなあ」
「えー?こんにゃくに合うんだから日本酒?」
「そうじゃなくて、フランスのお酒でさあ、なんかあったじゃん」
「ああ、あれか、こんにゃくに合うよねあれは・・・ブランデー」
こんなどーしようもないギャグのセンスはいつまでたっても学ばない。
コメント
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