誕生日
2010-07-27 | 日記
7月21日に誕生日が来てボクは42歳になった。
41歳もいろいろあったが、晴れてというか無事にというかめでたくというか42歳になったわけだ。
誕生日の前日、何か分からない不安感があった。
ちょっとした体の疲れが溜まり、自分のエネルギーが下がっていたのだと思う。
何となく、この日がカギだ、この日を上手く乗り切ればその後は上手く行く、という想いがあった。
だが道中で事故にあうんじゃないか、とかスキーでケガをするんじゃないか、という普段はあまり考えないようなイヤな気持ちは消しきれなかった。
その日の朝、深雪に言った。
「深雪よ、お父さんに力を貸してくれないか?何か今日はイヤな気がするんだ。今日、お父さんが無事に帰って来られるよう、祈ってくれないか?」
「うん、お父さん、お仕事がんばってね」
家を出るときは、女房と深雪と3人で輪になって手をつなぎボクは唱えた。
「私が今、望んでいる物は今日という日を無事に終え、家族の元に戻ってくることです。どうか力を分け与えてください」
そうやって自分の守護神にお願いをした。
その日のお客さんは毎年ニュージーランドへスキーに来るリピーター。時には一冬に2回来るという熱のこもりようで、数年前からのお客様である。
1日ツアーの場合、天候の具合と雪の状態を見て行く先を選ぶのだが、ガイドというボクを信頼してくれるのでボクも気は楽である。
この日に行ったのはライフォルド。
クライストチャーチ近辺のスキー場は天気が崩れそうだったので、ちょっと足を伸ばしてノースカンタベリーのスキー場にした。
こっちならばなんとか夕方まで天気は持ちそうだ。
予想通り、山がガスることもなく、雨や雪に降られることもなく、僕らは1日スキーを楽しんだ。
午後になりロープトーが空き、急斜面をガンガン滑った後にお客さんが言った。
「他のスキー場だと常に仕事のことが頭から離れないけど、クラブフィールドは仕事の事を忘れられるからいいな」
ボクの心はその言葉で一気に軽くなった。
この仕事をやっていて良かったと心から思った。
ボクはお客さんにエネルギーを与えるが、ボクも彼らからエネルギーを与えてもらう。
エネルギーを奪い合うのではなく、あくまで自然体に良い状態でのエネルギーの交流ができる。
クラブフィールドとはそんな場所だ。
案の定、帰る途中で雨が降り出した。
夜の雨のドライブは事故の確率も高い。
帰る途中、事故現場に遭遇した。
そんなにひどい事故ではなかったが、自分がああなるかと思うとぞっとする。
ボクは気を引き締めて運転した。
帰り道ではローカルのパブに寄って軽く一杯。
このお客さんとのツアーではお決まりの事だ。
お客さんが望む事をするのがガイドだし、素顔のニュージーランドを見せるのがガイドである。
お客さんはガイドブックに載っていない所に行きたいのであり、ボクがいることによって安心して地元の酒場に行ける。
お客さんはビールを頼み、ボクはジュースを飲んだ。
自分自身ビールは大好きだが、今この状況でビールを飲んでもハッピーになれない。それより不安感は増すことだろう。
それなら人が喜んでビールを飲む姿を見ながらパブの雰囲気を楽しむほうがよっぽど良い。
ビールは家に帰ってから飲めばいいのだ。
そこから町まで夜の雨のドライブは続く。
町の中心に入ってきて、もう一件、車の事故を見た。
あれは別の世界での自分だ。
この世界では家族の愛のおかげで無事に帰って来られた。
運転をしながらも家族の愛というものをひしひしと感じた。
無事にホテルまでお客さんを送り届けてその日の仕事は終わった。
無事に、何事もなくという当たり前の事が一番大切なのだ。
家に帰って着替えると、深雪がビールを出してくれた。
お客さんが喜んでくれて、自分の納得のいく仕事が出来た、そういう日のビールが一番ウマイ。
女房がご飯を作ってくれる。娘がビールを持ってきてくれる。幸せである。
次の日、誕生日を迎えた。
朝、全員が起きたところで深雪がカードとプレゼントを持ってきた。
カードは深雪の手作り。女房と深雪が笑っている絵がありニワトリが二羽。
深雪が書く絵は全て人が笑っている。良いことだ。
プレゼントはパンツとTシャツ。
Tシャツはペンギンがとぼけた姿で立っていて吹き出しからは『何を言ってるのかさっぱりわからない』という日本語の文字。
ボクは思わず大爆笑をしてしまった。
最近、エネルギーの話とか、ブーメランの法則とか、魂の年齢とか、小難しい事を言っているオヤジに一言『何を言ってるのかさっぱりわからない』。
こういうシャレは必要なのだ。最高のプレゼントだ。
スピーチを求められたので一言。
「みんな祝ってくれてありがとう。今こうやってみんなで居られること。これが一番大切で一番うれしいです」
喋っていて涙があふれてくる。40を超えると涙腺が緩むのか、涙もろくなった。
涙だけならまだしも、一緒に鼻水もズルズル出るのが困る。
幸せとは今ここに在るものであり、それに気付くことである。
その瞬間は永遠のものであり、消えてなくなってしまうものではない。
それを心に刻みながら42のボクは生きていくだろう。
『何を言ってるのかさっぱりわからない』
Tシャツのとぼけたペンギンが笑っている。
41歳もいろいろあったが、晴れてというか無事にというかめでたくというか42歳になったわけだ。
誕生日の前日、何か分からない不安感があった。
ちょっとした体の疲れが溜まり、自分のエネルギーが下がっていたのだと思う。
何となく、この日がカギだ、この日を上手く乗り切ればその後は上手く行く、という想いがあった。
だが道中で事故にあうんじゃないか、とかスキーでケガをするんじゃないか、という普段はあまり考えないようなイヤな気持ちは消しきれなかった。
その日の朝、深雪に言った。
「深雪よ、お父さんに力を貸してくれないか?何か今日はイヤな気がするんだ。今日、お父さんが無事に帰って来られるよう、祈ってくれないか?」
「うん、お父さん、お仕事がんばってね」
家を出るときは、女房と深雪と3人で輪になって手をつなぎボクは唱えた。
「私が今、望んでいる物は今日という日を無事に終え、家族の元に戻ってくることです。どうか力を分け与えてください」
そうやって自分の守護神にお願いをした。
その日のお客さんは毎年ニュージーランドへスキーに来るリピーター。時には一冬に2回来るという熱のこもりようで、数年前からのお客様である。
1日ツアーの場合、天候の具合と雪の状態を見て行く先を選ぶのだが、ガイドというボクを信頼してくれるのでボクも気は楽である。
この日に行ったのはライフォルド。
クライストチャーチ近辺のスキー場は天気が崩れそうだったので、ちょっと足を伸ばしてノースカンタベリーのスキー場にした。
こっちならばなんとか夕方まで天気は持ちそうだ。
予想通り、山がガスることもなく、雨や雪に降られることもなく、僕らは1日スキーを楽しんだ。
午後になりロープトーが空き、急斜面をガンガン滑った後にお客さんが言った。
「他のスキー場だと常に仕事のことが頭から離れないけど、クラブフィールドは仕事の事を忘れられるからいいな」
ボクの心はその言葉で一気に軽くなった。
この仕事をやっていて良かったと心から思った。
ボクはお客さんにエネルギーを与えるが、ボクも彼らからエネルギーを与えてもらう。
エネルギーを奪い合うのではなく、あくまで自然体に良い状態でのエネルギーの交流ができる。
クラブフィールドとはそんな場所だ。
案の定、帰る途中で雨が降り出した。
夜の雨のドライブは事故の確率も高い。
帰る途中、事故現場に遭遇した。
そんなにひどい事故ではなかったが、自分がああなるかと思うとぞっとする。
ボクは気を引き締めて運転した。
帰り道ではローカルのパブに寄って軽く一杯。
このお客さんとのツアーではお決まりの事だ。
お客さんが望む事をするのがガイドだし、素顔のニュージーランドを見せるのがガイドである。
お客さんはガイドブックに載っていない所に行きたいのであり、ボクがいることによって安心して地元の酒場に行ける。
お客さんはビールを頼み、ボクはジュースを飲んだ。
自分自身ビールは大好きだが、今この状況でビールを飲んでもハッピーになれない。それより不安感は増すことだろう。
それなら人が喜んでビールを飲む姿を見ながらパブの雰囲気を楽しむほうがよっぽど良い。
ビールは家に帰ってから飲めばいいのだ。
そこから町まで夜の雨のドライブは続く。
町の中心に入ってきて、もう一件、車の事故を見た。
あれは別の世界での自分だ。
この世界では家族の愛のおかげで無事に帰って来られた。
運転をしながらも家族の愛というものをひしひしと感じた。
無事にホテルまでお客さんを送り届けてその日の仕事は終わった。
無事に、何事もなくという当たり前の事が一番大切なのだ。
家に帰って着替えると、深雪がビールを出してくれた。
お客さんが喜んでくれて、自分の納得のいく仕事が出来た、そういう日のビールが一番ウマイ。
女房がご飯を作ってくれる。娘がビールを持ってきてくれる。幸せである。
次の日、誕生日を迎えた。
朝、全員が起きたところで深雪がカードとプレゼントを持ってきた。
カードは深雪の手作り。女房と深雪が笑っている絵がありニワトリが二羽。
深雪が書く絵は全て人が笑っている。良いことだ。
プレゼントはパンツとTシャツ。
Tシャツはペンギンがとぼけた姿で立っていて吹き出しからは『何を言ってるのかさっぱりわからない』という日本語の文字。
ボクは思わず大爆笑をしてしまった。
最近、エネルギーの話とか、ブーメランの法則とか、魂の年齢とか、小難しい事を言っているオヤジに一言『何を言ってるのかさっぱりわからない』。
こういうシャレは必要なのだ。最高のプレゼントだ。
スピーチを求められたので一言。
「みんな祝ってくれてありがとう。今こうやってみんなで居られること。これが一番大切で一番うれしいです」
喋っていて涙があふれてくる。40を超えると涙腺が緩むのか、涙もろくなった。
涙だけならまだしも、一緒に鼻水もズルズル出るのが困る。
幸せとは今ここに在るものであり、それに気付くことである。
その瞬間は永遠のものであり、消えてなくなってしまうものではない。
それを心に刻みながら42のボクは生きていくだろう。
『何を言ってるのかさっぱりわからない』
Tシャツのとぼけたペンギンが笑っている。