北村家二軍
2010-11-21 | 人
北村家一軍という人たちがいる。
誰が言い始めたか忘れたが、たぶんJCが言い出したのだと思う。
我が家に自由に出入りする人達のことで、なんてことはない皆僕の友達だ。
そんな彼らのことを僕は愛をこめて北村家一軍と呼ぶ。
ガレージには『一軍置き去りバッグ』というものがあり、ボードやスキーの道具、服などが入っており一軍は好きなように使う事が出来る。
使わなくなった板を置いていくヤツもいれば、山小屋のように自分の板を次回自分が滑る時に備えて人に持ってこさせるヤツもいる。
一軍は我が家に来れば、飲み放題食い放題泊まり放題の待遇である。
一軍は年齢性別どこに住んでいるかを問わず、「この世で何が一番大切か」ということを理解している人達でもある。そこを掴んでいれば誰でも一軍になれる。
そして一軍はスキー、ボードで言えばプロ級の腕前を持つ。
スキー、ボード業界の重鎮、伝説のライダーなんてのもいる。ある娘は昔オリンピック候補になったなんて話も聞いた。若手ではプロも生まれた。
言っておくがプロになるような上手い人が一軍になるのではない。
たまたま運動神経が達者な人が集まったのだ。
スキーの腕前はそこそこだが山登りの達人もいる。
自転車でいくつもの峠を越えながら旅をする人もいる。
カズヤのようにスキーはとんでもなく上手いが、北村家では永遠のドレイというような人もいる。
皆、本質を掴んでいてなおかつ自立し前向きに生きている、自然の中で楽しさを共有できる、かけがえのない友である。
職業はアウトドア関係の人がほとんどである。アウトドアのガイドが圧倒的に多いがその他、会社員、自営業、主婦、旅人などなど、職種は問わない。
ちゃんと数えたことはないが30人ぐらいはいるのだろうか。
そんな北村家一軍に去年、めでたくというか、ついにというか、やっとというか、とにかく二軍ができた。
あれは去年リオがクィーンズタウンに来た時のことだった。
リオは自転車で世界一周をしている男でクィーンズタウンの家に一週間ほど転がり込んだ。
http://ameblo.jp/gwh175r/
湖を見ながら僕とリオとエーちゃんの3人でビールを飲んでいた。
「リオ、お前はたいしたことをやってるな。次回は是非オレがいるときにクライストチャーチの家に来てくれ」
「ええ、それはぜひ」
「そうだな、お前も立派な一軍だな」
そして僕は一軍の説明をした。リオは恐縮して言った。
「そんな、だいそれた。だって僕はスキーとかボードとか上手くないですよ。」
「そんなことは関係ない。一軍とは何が大切か分かっていて、前に向かって進んでいて、ある能力に長けた人だ。お前は『自転車で旅をする』能力に長けているだろ?」
「はい、まあそうですねぇ」
「それで充分。ジャンルは関係ない。よって君は一軍」
「ハ、ハァ、ありがとうございます」
こうやって一軍は増えていく。
実際リオの運動のセンスは素晴らしく、1回フリスビーゴルフをやったが危うく負けるところだった。
ふとエーちゃんと目が合った。
「エーちゃんはなあ・・・、そうだなあ・・・。そうだ、今決めた。」
僕はあらたまって言った。
「エージ君、君を北村家二軍筆頭に任命しよう」
「ハイ、ありがたき幸せ」
これだけだと何がなんだか分からないだろうから説明しよう。
エーちゃんとの出会いは2年前だった。
フラットメイトのおっさんを通して彼と出会い、2シーズンフラットメイトとして過ごした。
クライストチャーチの我が家にも遊びに来て、女房も娘もエーちゃんという人柄を認めている。
彼の素晴らしい点はいつもニコニコしていることである。
そして他の一軍と同じく、何が大切か分かっていて前向きに進んでいることだ。
フラットは坂の上にあり、普通の人なら毎日歩いて通うのもおっくうになるのだが、エーちゃんは晴れた日も雨の日も歩いて通う。ボクにはとても真似できない。
車の運転が苦手ということもあるが、歩く辛さよりも一人で歩く間に色々考える事ができるという長所に意識を向けられる。ポジティブな人だ。
彼の徹底的な欠点はどんくさいということだ。
痛さを身をもって知る男と呼んでもよい。
クライミングでは落ちて骨を折る。マウンテンバイクをやれば大転倒してこれまた骨を折る。
数々の武勇伝を聞いたが「よく死ななかったね」というものはいくつもでてくる。
それでいて常に新しい事に挑戦しようというこの根性。
高所恐怖症のくせにバンジージャンプをやりに行き、一緒に行った女の子は飛べたがエーちゃんは飛べなかったというのも実にエーちゃんらしくてよろしい。
彼のすごいところはそれらの話がすべてネタになるくらい面白く、酒を飲んでいていいつまみになる。ずいぶんと痛いネタだ。
先々シーズンだったか、エーちゃんがオッサンとクライストチャーチにやってきた。
ボクはそのとき仕事が重なって行けなかったので、道具を貸してあげて二人はブロークンリバーに滑りに行った。
オッサンは初めてでもなんなくロープトーに乗ったが、われらがエーちゃんは悪戦苦闘の末プーリー(滑車)に激突。肋骨を折った。
彼の名誉のために書くが厳密にはその時には折っていない。彼の言葉を借りよう。
「なんかですね、それからずーっと痛くて大きく息をすると特に痛むんですよ。仕事に戻って職場の人で元看護婦の人がいるんですけど彼女いわく『それって肋骨にヒビがはいっている。どうにもできないからおとなしくしているしかない。』そうなんですね。それでしばらくして仕事中、くしゃみをしたくなって、『ファー、ファー、ブワックション。ボキッ、アイタタタタ、マジマジ、イテテテ』とまあそんなかんじで折れちゃいました」だそうな。
ちなみに彼はスキーヤーである。
ボーダーならまだ分かる。
スノーボードでロープトーに乗るのはすごく大変だからだ。
だが、だが、スキーヤーでこのどんくささ。
クラブのメンバーなら子供でも乗れるロープトーで・・・。
古今東西、前代未聞。筋金入りのネタ製造マシーン。
それがエーちゃんである。
彼が長けている能力。それは販売である。
以前、横浜の大手パソコンショップの店長だったという彼が言う。
「販売とは道だと思うんですよ」
ヤクザに監禁されながらパソコンを直した話や、店長の苦労話などを聞いていると彼の芯の強さが見えてくる。
今も彼はクィーンズタウンのお土産屋で販売という道を追求している。
フリスビーゴルフでは連戦連敗、アウトドアではネタ満載のエーちゃんだが、販売の事に関しては『これだけはゆずれない』というものを持っている。
実際そういう話をするときのエーちゃんはキリっとひきしまる。
だけどだけどだけど、ロープトーであばら骨折・・・・・・。
普通の人にはできないだろう。
逆の見方をすればこれはエーちゃんにしかできない快挙である。
よって二軍。
ただし断っておくが、一軍がえらくて二軍はダメというのではない。
山や自然を愛する心に上級者も初心者もない。
自然の中での感覚を共有できる事に意味がある。
エーちゃんと何回か一緒に山に行ったが、ニュージーランドの自然にやっつけられる感覚を彼は持っている。
まあ、エーちゃんは別の意味でもやっつけられちゃうのだが・・・。
「いまのところ二軍はエーちゃんだけだからね。二軍筆頭ということでこれからもがんばって面白いネタを作ってください」
「ハイ、痛くない程度にがんばります」
そしてエーちゃんはニコニコと笑うのであった。
さてさてこの先、エーちゃんを越える人材は現れるのだろうか。
あるとしたら、それはそれでまた楽しみである。
誰が言い始めたか忘れたが、たぶんJCが言い出したのだと思う。
我が家に自由に出入りする人達のことで、なんてことはない皆僕の友達だ。
そんな彼らのことを僕は愛をこめて北村家一軍と呼ぶ。
ガレージには『一軍置き去りバッグ』というものがあり、ボードやスキーの道具、服などが入っており一軍は好きなように使う事が出来る。
使わなくなった板を置いていくヤツもいれば、山小屋のように自分の板を次回自分が滑る時に備えて人に持ってこさせるヤツもいる。
一軍は我が家に来れば、飲み放題食い放題泊まり放題の待遇である。
一軍は年齢性別どこに住んでいるかを問わず、「この世で何が一番大切か」ということを理解している人達でもある。そこを掴んでいれば誰でも一軍になれる。
そして一軍はスキー、ボードで言えばプロ級の腕前を持つ。
スキー、ボード業界の重鎮、伝説のライダーなんてのもいる。ある娘は昔オリンピック候補になったなんて話も聞いた。若手ではプロも生まれた。
言っておくがプロになるような上手い人が一軍になるのではない。
たまたま運動神経が達者な人が集まったのだ。
スキーの腕前はそこそこだが山登りの達人もいる。
自転車でいくつもの峠を越えながら旅をする人もいる。
カズヤのようにスキーはとんでもなく上手いが、北村家では永遠のドレイというような人もいる。
皆、本質を掴んでいてなおかつ自立し前向きに生きている、自然の中で楽しさを共有できる、かけがえのない友である。
職業はアウトドア関係の人がほとんどである。アウトドアのガイドが圧倒的に多いがその他、会社員、自営業、主婦、旅人などなど、職種は問わない。
ちゃんと数えたことはないが30人ぐらいはいるのだろうか。
そんな北村家一軍に去年、めでたくというか、ついにというか、やっとというか、とにかく二軍ができた。
あれは去年リオがクィーンズタウンに来た時のことだった。
リオは自転車で世界一周をしている男でクィーンズタウンの家に一週間ほど転がり込んだ。
http://ameblo.jp/gwh175r/
湖を見ながら僕とリオとエーちゃんの3人でビールを飲んでいた。
「リオ、お前はたいしたことをやってるな。次回は是非オレがいるときにクライストチャーチの家に来てくれ」
「ええ、それはぜひ」
「そうだな、お前も立派な一軍だな」
そして僕は一軍の説明をした。リオは恐縮して言った。
「そんな、だいそれた。だって僕はスキーとかボードとか上手くないですよ。」
「そんなことは関係ない。一軍とは何が大切か分かっていて、前に向かって進んでいて、ある能力に長けた人だ。お前は『自転車で旅をする』能力に長けているだろ?」
「はい、まあそうですねぇ」
「それで充分。ジャンルは関係ない。よって君は一軍」
「ハ、ハァ、ありがとうございます」
こうやって一軍は増えていく。
実際リオの運動のセンスは素晴らしく、1回フリスビーゴルフをやったが危うく負けるところだった。
ふとエーちゃんと目が合った。
「エーちゃんはなあ・・・、そうだなあ・・・。そうだ、今決めた。」
僕はあらたまって言った。
「エージ君、君を北村家二軍筆頭に任命しよう」
「ハイ、ありがたき幸せ」
これだけだと何がなんだか分からないだろうから説明しよう。
エーちゃんとの出会いは2年前だった。
フラットメイトのおっさんを通して彼と出会い、2シーズンフラットメイトとして過ごした。
クライストチャーチの我が家にも遊びに来て、女房も娘もエーちゃんという人柄を認めている。
彼の素晴らしい点はいつもニコニコしていることである。
そして他の一軍と同じく、何が大切か分かっていて前向きに進んでいることだ。
フラットは坂の上にあり、普通の人なら毎日歩いて通うのもおっくうになるのだが、エーちゃんは晴れた日も雨の日も歩いて通う。ボクにはとても真似できない。
車の運転が苦手ということもあるが、歩く辛さよりも一人で歩く間に色々考える事ができるという長所に意識を向けられる。ポジティブな人だ。
彼の徹底的な欠点はどんくさいということだ。
痛さを身をもって知る男と呼んでもよい。
クライミングでは落ちて骨を折る。マウンテンバイクをやれば大転倒してこれまた骨を折る。
数々の武勇伝を聞いたが「よく死ななかったね」というものはいくつもでてくる。
それでいて常に新しい事に挑戦しようというこの根性。
高所恐怖症のくせにバンジージャンプをやりに行き、一緒に行った女の子は飛べたがエーちゃんは飛べなかったというのも実にエーちゃんらしくてよろしい。
彼のすごいところはそれらの話がすべてネタになるくらい面白く、酒を飲んでいていいつまみになる。ずいぶんと痛いネタだ。
先々シーズンだったか、エーちゃんがオッサンとクライストチャーチにやってきた。
ボクはそのとき仕事が重なって行けなかったので、道具を貸してあげて二人はブロークンリバーに滑りに行った。
オッサンは初めてでもなんなくロープトーに乗ったが、われらがエーちゃんは悪戦苦闘の末プーリー(滑車)に激突。肋骨を折った。
彼の名誉のために書くが厳密にはその時には折っていない。彼の言葉を借りよう。
「なんかですね、それからずーっと痛くて大きく息をすると特に痛むんですよ。仕事に戻って職場の人で元看護婦の人がいるんですけど彼女いわく『それって肋骨にヒビがはいっている。どうにもできないからおとなしくしているしかない。』そうなんですね。それでしばらくして仕事中、くしゃみをしたくなって、『ファー、ファー、ブワックション。ボキッ、アイタタタタ、マジマジ、イテテテ』とまあそんなかんじで折れちゃいました」だそうな。
ちなみに彼はスキーヤーである。
ボーダーならまだ分かる。
スノーボードでロープトーに乗るのはすごく大変だからだ。
だが、だが、スキーヤーでこのどんくささ。
クラブのメンバーなら子供でも乗れるロープトーで・・・。
古今東西、前代未聞。筋金入りのネタ製造マシーン。
それがエーちゃんである。
彼が長けている能力。それは販売である。
以前、横浜の大手パソコンショップの店長だったという彼が言う。
「販売とは道だと思うんですよ」
ヤクザに監禁されながらパソコンを直した話や、店長の苦労話などを聞いていると彼の芯の強さが見えてくる。
今も彼はクィーンズタウンのお土産屋で販売という道を追求している。
フリスビーゴルフでは連戦連敗、アウトドアではネタ満載のエーちゃんだが、販売の事に関しては『これだけはゆずれない』というものを持っている。
実際そういう話をするときのエーちゃんはキリっとひきしまる。
だけどだけどだけど、ロープトーであばら骨折・・・・・・。
普通の人にはできないだろう。
逆の見方をすればこれはエーちゃんにしかできない快挙である。
よって二軍。
ただし断っておくが、一軍がえらくて二軍はダメというのではない。
山や自然を愛する心に上級者も初心者もない。
自然の中での感覚を共有できる事に意味がある。
エーちゃんと何回か一緒に山に行ったが、ニュージーランドの自然にやっつけられる感覚を彼は持っている。
まあ、エーちゃんは別の意味でもやっつけられちゃうのだが・・・。
「いまのところ二軍はエーちゃんだけだからね。二軍筆頭ということでこれからもがんばって面白いネタを作ってください」
「ハイ、痛くない程度にがんばります」
そしてエーちゃんはニコニコと笑うのであった。
さてさてこの先、エーちゃんを越える人材は現れるのだろうか。
あるとしたら、それはそれでまた楽しみである。