安全問題研究会(旧・人生チャレンジ20000km)~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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JR尼崎事故から3年

2008-04-25 21:54:26 | 鉄道・公共交通/安全問題
乗客と運転士、107名が死亡したJR福知山線事故(尼崎事故)から3年を迎え、今年も様々な追悼行事が行われた。

マスコミ報道は、年々事故の真相に迫るものが少なくなりつつある。明らかに事故はマスコミの中では風化しつつある。そんな中、唯一キラリと光ったのが、このニュースだ。

鉄道の運転保安設備点検 6割が外部委託(産経新聞)

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平成17年4月のJR福知山線脱線事故を機に設置が進んだ自動列車停止装置(ATS)など運転保安設備の保守点検を、全国の鉄道事業者50社の約6割が外部委託していることが23日、産経新聞社のアンケートで分かった。コスト削減のための外注化が過度に進むと安全性を損なう恐れが指摘されているが、大手26社の約9割は外注業務の占める割合を明かさなかった。

 アンケートはJR各社と全国の大手私鉄など鉄道事業者51社を対象に実施。50社が回答した。ATSなど運転保安設備を持つ42社のうち、保守点検の全部または一部を外注しているのは27社(64%)。状況確認やデータ測定など現場作業を請負業者に任せ、事業者本体が結果を管理しているケースが目立った。

 外注業務の占める割合については、50社中31社が答えなかった。JRや私鉄、公営地下鉄など大手26社に限ると、京王(2・7%)など2社を除く24社が「算出した経験がない」などの理由で公表を拒んだ。「外注化と安全確保が両立するか」という問いには、大手26社中、無回答だった東急を除く25社が「両立する」と答えた。

 外注化をめぐってはJR西日本が昨年1~3月、請負業者との連携不足などによる輸送障害が5件相次いだとして国土交通省から警告されたほか、15年にはJR東日本が同様の理由で業務改善命令を受けている。
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まぁ、外部委託している鉄道会社にとって、「外注化と安全確保が両立するか」という問いに「しない」とは答えられないだろう。

「コスト削減のための外注化が過度に進むと安全性を損なう恐れが指摘されている」という主張は正しい。鉄道は車両、線路、軌道から信号保安設備までが渾然一体となったシステムとして建設され、運行されるものだからだ。

外注化の問題点はそうした「システムとしての鉄道」を総合的に理解する者が鉄道の現場に立てなくなることだ。信号のことは詳しくても電気は素人、車両のことは詳しくても線路や軌道のことは素人という人間が、それぞれの分野でバラバラに保守管理をやって鉄道の安全は保てるかというと、決してそうはならないのである。

保線作業をやりながら、作業員が信号の動作がおかしいことに気づく。運転士が前方を確認しながらレールを見て、歪みや傷に気づく。昔はそうした「得意分野に通じながら、同時に他の分野に関する業務知識も豊富」な鉄道マンが現場に多くいて、それらが総合的な力となって鉄道の安全を高めていた。
そうしたチームワークによる仕事を分断してしまうのが外注化なのである。

多くの鉄道会社が、外注化の占める比率を明かさなかったという事実こそ外注化の本質を表していると私は思う。外注化と安全確保が両立「する」と本気で思っているならば、臆せず比率を明らかにすればよいではないか。実際はそうでないからこそ、比率を明らかにできないのではないのか?

尼崎事故は、亡くなった107名だけの問題ではない。私たちの誰もが公共交通機関を利用する以上、遺族の悲しみが明日はあなたの家族の悲しみになるかもしれない。当ブログがいつも安全問題に声を挙げるのはそうした理由からである。
自分の近親者が犠牲にならなければいいという問題ではないし、鉄道ファンとして、愛する鉄道が人命を奪う凶器になる瞬間をこれ以上見たくはない。

当ブログは、尼崎事故3周年に当たり、亡くなった107名の方のご冥福をお祈りすると同時に、いまだ治療過程にある負傷者の方々の1日も早いご快癒を願う。そして、加害企業たる鉄道会社とは違った視点で、これからも安全問題について提言を続けていく。

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