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さまざまな課題残し……「南海トラフ地震臨時情報」呼びかけ期間終了

2024-08-17 15:16:42 | 気象・地震
●ビーチ閉鎖、電車減速…どこまで必要だった? 南海トラフ臨時情報、対応は「受け手まかせ」の大問題(東京)

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●南海トラフ臨時情報が終了 観光業界は悲鳴、医療機関は課題に直面(毎日)

 南海トラフ巨大地震への備えを促す注意の呼びかけが終わった。宮崎県沖の日向灘で発生した最大震度6弱の地震をきっかけに、お盆休みを直撃した初の臨時情報から1週間。万が一の事態にどう備えるのか。対応に追われた観光業界は悲鳴を上げ、自治体や医療機関は課題に直面した。

 15日午前、紀伊半島の南西部に位置する「白良浜海水浴場」(和歌山県白浜町)は臨時情報の終了に先立って閉鎖が解除され、海水浴客が戻ってきた。

 白浜温泉旅館協同組合の菊原博・事務局長(73)は「ひとまず良かった。ただ、地震を恐れたお客さんが本当に元通り戻ってきてくれるのか心配だ」と語った。

 白浜町は海水浴や温泉が楽しめるほか、レジャー施設「アドベンチャーワールド」では複数のパンダを観覧できる。一帯にはホテルや旅館がひしめき、関西屈指のリゾート地として人気が高い。

 お盆休みは書き入れ時だが、気象庁が8日に「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表すると状況は一変した。

 白浜町は地震が起きた場合、最大で高さ16メートルの津波が押し寄せてくると想定されている。最悪の事態に備え、協同組合や観光協会の関係者らは8日夜に町役場に集まり、白良浜を含む町内4カ所にある全ての海水浴場の閉鎖を決定。10日に予定された花火大会も中止された。

 臨時情報の発表に加え、町の対応を公表した頃からホテルや旅館の予約のキャンセルが相次いだ。23施設が加盟する協同組合によると、約1万9000人分の予約が既に取り消され、現時点で損失額は5億円超に上っているという。

 菊原事務局長は「町全体では10億円以上の損失になるかもしれない。地震大国として備えはもちろん必要だが、今回の発表で観光地が受けた被害も災害並み。国は支援を検討してほしい」と訴えた。

 徳島の夏を彩る風物詩「阿波踊り」は徳島市内で予定通り開催されたが、実行委員会は急きょ作成した津波発生時の避難誘導マップを踊り手にメールで通知したほか、観覧席など会場の至る所に張り出す対応を迫られた。

 2017年の運用開始以降、初めて発表された今回の臨時情報。対象になった沖縄県から茨城県まで29都府県の707市町村は、日ごろの備えの再確認や避難の準備を住民たちに呼びかけたが、教訓を残した自治体も少なくない。

 津波の想定が国内で最も高い最大34メートルとされている高知県黒潮町。臨時情報の発表を受けて災害対策本部を立ち上げた町は、町内全域に「高齢者等避難」を出し、計32カ所の避難所を開設した。延べ8人が身を寄せたという。

 巨大地震の発生に備え、町役場は24時間態勢で警戒にあたり、職員が交代で泊まり込んだ。担当者は「この1週間、通常業務を続けながら防災対応もこなすのは心身ともにきつかった。態勢や注意の呼びかけ方も含めて対応を検証していく必要がある」と語った。

 最大13・5メートルの津波が想定される大分県佐伯市は21年、臨時情報が出た場合の対応方針を定めた。巨大地震注意が発表された際は「状況に応じて高齢者等避難を発令」としていたが、今回は発令しなかった。担当者は「どのタイミングで避難の指示を出すのかが難しく、今後の課題だ」と明かした。

 医療機関も課題を突き付けられた。高知市の基幹災害拠点病院「高知医療センター」(620床)は、災害対応マニュアルに臨時情報が出た際の具体的な行動を規定していなかった。

 センターでは臨時情報の発表後、一部の職員が「帰宅して家族の状況を確認したい」と希望した。患者のみならず、病院運営に欠かせないスタッフへの対応も重要になるということが分かったという。

 臨時情報に特化した具体的な取り扱いは厚生労働省から示されていないが、センターはこの1週間の課題を整理したうえでマニュアルを見直すことを決めた。

 取材に応じた山中健徳・事務局次長(46)は「仮にもう1段階上の巨大地震警戒が出たら避難指示が出る可能性もあり、さらに心配する職員が増えるはずだ。災害発生時の手順を再確認するとともに、今回の経験を生かして臨時情報への対応方法を考えていきたい」と語った。【矢追健介、砂押健太、森永亨】
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●宮崎県内の主要ホテルで1.9万人キャンセル 日向灘地震が影響(毎日)

 宮崎県は16日、同県沖の日向灘を震源に発生した最大震度6弱の地震や「南海トラフ地震臨時情報」(巨大地震注意)が発表された影響で、県内主要ホテルなどで少なくとも約1万9000人分のキャンセルが出たと明らかにした。県は関係団体と意見交換しながら対策を検討するとしている。

旅行需要喚起へ対策検討

 同日、県庁で開かれた災害対策本部会議で明らかにした。県によると、スポーツ合宿の中止が17件、花火大会の中止が2件あった他、10〜12日の連休中の観光客入り込みが宮崎、日南、串間の3市で大きく減少した。えびの市や高千穂町など5市町村でもやや減少したという。県はホテル、旅館への影響を軽減したり、旅行需要の喚起を図ったりする対策を検討していく。

 また会議では、京都大防災研究所宮崎観測所の山下裕亮助教が今回の地震を解説。「1996年10月の震源域の割れ残りがある可能性がある」と指摘し、「タイミングは予測不可能だが、いずれマグニチュード(M)7程度の地震が再び発生する可能性が高い」と注意を呼び掛けた。

 県は16日、災害対策本部を情報連絡本部に移行し、24時間の監視態勢を継続することを決めた。河野俊嗣知事は「県民のみなさんに理解を求めながら、地震、津波への備えを改めて徹底を図っていきたい」と述べた。【下薗和仁】
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8月8日発生した宮崎県日向灘沖地震に伴って発表された「南海トラフ地震臨時情報」(巨大地震注意)の呼びかけ期間(1週間)が、8月15日17時をもって終了した。何も起きることなく経過したのは幸いだったが、地震の危険は常に存在する。呼びかけ期間は1つの目安であり、これを機会に「備え」のあり方を見直したという方も多いだろう。その備えが「次」に活かされることを願ってやまない。

今回の「南海トラフ地震臨時情報」(巨大地震注意)の発表は、紹介した記事にあるようにさまざまな課題を残した。巨大地震「注意」では住民避難は強制ではないが、巨大地震「警戒」が発表された場合、避難が困難な高齢者、障害者にどう対応していくか。観光業などが「キャンセル」によって受けた被害にどう対処するか。そもそも確率論に基づいて発表される「臨時情報」にひとりひとりがどう向き合えばよいのか、等である。

臨時情報への向き合い方でいえば、私は8月8日の記事で降水確率を引き合いに、「30%であれば傘を持って出かけない人でも、60%になったら傘を持って出かけるだろう」と説明したが、その考えは今も変わっていない。野球でも、ピンチで打席に入った相手チームの選手が1割打者なら「まず打ち取れる」と思う投手でも、3割打者が打席に立てば「打たれるかもしれない」と思って警戒するだろう。しかし、3割打者であっても「打たれない確率のほうが高い」ことには変わらず、対策をきちんとすれば「打ち取れる」(地震で言えば「被害を最小限に食い止められる」)のである。私は、「起きない確率のほうが高い」と見て、念のため家具の固定や非常持ち出し品の確認をしたが、結局、その程度だった。

観光業に関していえば、浮沈、栄枯盛衰は世の習いとはいえ、気の毒な感じはする。4年近くにわたる長い「コロナ禍」が5類引き下げによって明け、通常の社会活動がようやく戻ってくると思ったのもつかの間、昨年(2023年)のGWは2023年5月5日に発生した能登半島地震によって潰れ、2023年末~2024年始のかき入れ時も、またも能登地震(2024年1月1日発生)でチャンスが潰れた。そしてお盆の繁忙期、また今回の地震……

年末年始、5月GW、お盆という観光・旅行業界の最繁忙期をまるで「狙い撃ち」するように巨大地震が起きているのは不運というしかなく、つくづく日本の観光・旅行業界は(運を)「持っていない」と思う。しかし、「南海トラフ地震臨時情報」への備えといっても、南海トラフ地震発生時に30mを超える巨大津波が予想される太平洋沿岸と、その心配がない日本海沿岸が同じ対策をする必要まではないし、北海道の観光業界が静岡県と同じように自主休業までする必要があるかというと、さすがにそこまでの反応は不要だと思う。「いつでも来る可能性がある通常の大地震」への備えを怠りなくしながら、通常通りお客さんを迎えるというのが、あるべき姿ではないか。

漫画家・倉田真由美氏が、「地震の前に人間は無力という諦観が必要」なんとかできるは「おこがましさの現れ」(日刊スポーツ、2024年8月16日)と私見を述べ論議を呼んでいる。倉田氏も、ホリエモンこと実業家・堀江貴文氏などとともに最近は「リバタリアン」(公権力による一切の規制を受けず、動物のように本能の赴くままに行動することを望む「自由至上主義者」)化が著しく、非常時にこうした人たちの意見にいちいち耳を貸していたら対策は何もできなくなってしまうので、非常時には放置でよいと思う。私としては、多くの人々が「備え」と社会経済生活を両立させながら、被害を最小限に食い止められる日本社会に発展してほしいと思っている。

こうした残念な人たちの反応を見ていると、改めて思うのは非常時にこそ「日本人の弱点」が浮かび上がるということである。平たくいえば「形のあるもの」や「危機がはっきり目に見える形を取っているとき」の対策、対処はそれなりに得意だが、「形のないもの」や「危機がはっきりとは見えていない」段階での対策、対処がとにかく苦手ということである。世界経済が「ハード」(物作り)中心から「ソフト」(デジタル、データなどの「無形」サービス)中心に変わってから日本経済が凋落の一途を辿っているのも、案外、こうした国民性にも起因しているように思われる。

東京電力が津波の危険を何度も指摘されながら、対策を取らず福島第一原発事故を起こしたのも、結局は「すぐそばに危険が迫っていない段階では、目先の決算のほうが大事」だと思ってしまう日本人の国民性があるのではないだろうか。私が関わっている東電刑事訴訟も、東電旧経営陣が1審、2審とも「無罪」判決となり、困難に直面している。東電の企業体質との闘いと思っていたのが、次第に「日本人の精神性」との闘いに変わってきているからだ。79年前の敗戦の時のように、日本人が「何に負けたのかわからないまま一億総懺悔」するだけで、責任追及も再発防止も実現せず、なし崩し的に新社会への「復興」という路線に流し込まれてしまうのではないかという危惧は、私の中で以前よりもむしろ強まっている。

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