人生チャレンジ20000km~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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事故報告書検証委のメンバー決定 遺族ら7人も

2009-11-11 23:54:13 | 鉄道・公共交通/安全問題
遺族ら7人参加決定 JR情報漏えい検証チーム(神戸新聞)

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 尼崎JR脱線事故の調査をめぐる情報漏えい問題で、国土交通省運輸安全委員会が設置する検証チームのメンバーは10日、遺族、負傷者、負傷者家族計7人を含む12人に決まった。同日午前の記者会見で、前原誠司国交相が明らかにした。12月初旬に第1回会合を開く。(山崎史記子、三島大一郎、磯辺康子)


 7人は、事故遺族らでつくる「4・25ネットワーク」世話人の浅野弥三一さん(67)=宝塚市=や、「JR福知山線事故・負傷者と家族等の会」のメンバーら。ほかの5人は有識者。同委員会は「期限は設けず、報告書の信頼性や今後の鉄道事故調査のあり方を含め検証してもらいたい」としている。前原国交相は「納得するまで検証してほしい。協力はできる限りする」とした。

 浅野さんは「問題の検証はもちろんだが、事故調査の結論にも疑問が残っている。できる限り冷静に、客観的な目線で対応したい」と話した。

 そのほかのメンバーは次の通り。(敬称略)

 安部誠治(関西大教授)▽佐藤健宗(弁護士)▽永井正夫(東京農工大大学院教授)▽畑村洋太郎(工学院大教授)▽柳田邦男(作家)▽木下広史、大森重美(遺族)▽小椋聡、坂井信行(負傷者)▽中島正人、三井ハルコ(負傷者家族)
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いよいよ尼崎事故報告書検証委のメンバーが内定、報告書の検証作業がスタートすることになる。鉄道事故の調査は専門性が不可欠であり、あまり感情論に流されすぎると、調査機関の使命である科学的な検証から遠ざかってしまうことになりかねないが、遺族・被害者から選ばれた7名の顔ぶれを見る限り、その心配はなさそうである。むしろ、訳のわからない「自称有識者」「自称鉄道アナリスト」よりも良い結論を出してくれそうな人選である。当ブログの知りうる範囲で、主要メンバーの簡単な紹介をしておこう(以下敬称略)。

安部誠治
 関西大学教授。鉄道安全問題について、以前から積極的に発言。2007年2月10日に開催された「JR西日本の安全を求めて~JR福知山線尼崎脱線転覆事故被害者の切なるねがい」フォーラム(以下フォーラムと略)で、「事故原因とJR西日本の安全思想の欠陥」と題して講演。JR西日本のATS-P設置に関する意志決定の遅さ、カーブで速度超過の可能性があることを知っていながら鉄道会社を何ら指導しなかった政府の鉄道監督行政の責任を指摘。

佐藤健宗
 信楽高原鉄道事故を契機に結成されたTASK(鉄道安全推進会議)事務局長・弁護士。事故を契機に、鉄道事故の専門調査機関設置の必要性を強く訴える活動を続け、この結果、運輸省に初めての鉄道事故調査機関が誕生した(航空事故調査委員会が航空・鉄道事故調査委員会に改組)。

柳田邦男
 ノンフィクション作家・評論家。全日空機羽田沖墜落事故、カナダ太平洋航空機墜落事故など主に航空機事故の取材に関わる。月刊「現代」2005年7月号誌上で尼崎事故に言及。失敗をした個人に対する懲罰主義や、JR西日本の利益優先体質、経営者の安全への無理解等が事故の背景にあるとして、これらを批判。同時に、事故調査機関より警察の捜査権が優先する日本の事故調査体制の見直しを訴える。

淺野弥三一
 遺族。事故で妻と妹を亡くす。4・25ネットワーク世話人。JR西日本が報告書の不正入手を行うきっかけとなった2007年2月1日の国土交通省による意見聴取会に公述人として出席した。その後も国土交通省への要請、事故の捜査を巡る検察への申し入れ等の行動で被害者を取りまとめ、中心的役割を果たす。

木下広史
 遺族。息子を事故で亡くす。2007年2月10日の「フォーラム」で、「事故に関する原因究明と説明責任について」と題し報告。運転士用の標準時刻表が整備されておらず、その作成が運転士任せになっていた実態、ATS-Pのデータ入力が誤っていたり入力されていなかったりするなどのずさんな状況があったことを明らかにした。また、「私はただ人間でありたいだけです。それまでの朝と同じように“行ってきます”と出かけていった家族が“ただいま”と帰ってくる姿を見守る幸せを奪われた遺族として、親として、息子への責務を果たしたいと思うのは当然のこと。それなのに、事故から2年近く経とうとする今になっても、息子の墓前に私はなにひとつ報告することができない」と涙ながらに訴えた。

小椋聡
 負傷者。「フォーラム」では「JR西日本の負傷者対応について」と題し講演。JR西日本の不誠実な被害者対応を批判した。

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報告書不正入手、山崎前社長が直接指示

2009-11-10 22:53:55 | 鉄道・公共交通/安全問題
JR西、前社長が直接指示…事故報告書案漏えい(読売新聞)

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 JR福知山線脱線事故の最終報告書案漏えい問題で、JR西日本の山崎正夫・前社長(現・嘱託)が、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)の窓口となる同社の担当部門の社員(55)に対し、漏えい工作を直接指示していたことがわかった。

 社員を通して事前に入手した報告書案を公述人への応募を働きかけた国鉄OBに送付。そのうえで、山崎前社長が、述べてほしい意見をOBらに伝えていた。刑事責任追及をかわす狙いがあったとみられ、山崎前社長が工作を主導していた可能性が強まった。

 JR関係者らによると、事実調査報告書が公表される前の2006年12月頃、山崎前社長は社員に対し、「報告書案の内容を把握したいので、その資料をできるだけ早く入手してほしい」と指示。これを受け、社員は事故調の佐藤泰生・元鉄道部会長(70)らから報告書案を入手した。

 山崎前社長は社員から入手したとの報告を受けた際、07年2月予定の意見聴取会で意見を述べてもらう公述人候補に、国鉄OBだった伊多波美智夫、小野純朗両氏の名前を挙げ、「あらかじめ報告書案を送っておいてくれ」と要請した。

 その際、山崎前社長は社員に、「伊多波さんは運転保安設備の専門家。新型の自動列車停止装置(ATS)をカーブに整備することは一般的ではなかったという当社の意見を理解してもらいたい」、「小野さんはダイヤに詳しい。福知山線のダイヤは過密ではないという話をしてもらいたい」と話していたという。

 この頃、兵庫県警は、現場カーブへのATS未設置を業務上過失致死傷容疑で立件する最大の焦点に絞り込み、幹部らの聴取を進めていた。また事故を起こした運転士が異常な速度で運転した背景に、余裕のないダイヤがあったとみていた。

 山崎前社長の発言は、こうした捜査をかわす狙いがあったとみられる。
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一時期、山崎社長(当時)には、遺族対策を真摯に行い、一部の遺族から信頼を勝ち得る一歩手前まで行った時期もあった。しかし、この事実はどうだろう。完全に報告書の不正入手を主導している様子がうかがえる。

福知山線のダイヤに余裕がなかったことは明らかである。事故当時の運転時刻表(運転士が運転中、運転席に備え付ける業務用時刻表)には10秒発、40秒着などと表記されているものもあった。従来の列車ダイヤの考え方を変更してまで運転時分を切り詰めようとしていたことは疑いない。

そもそも国鉄時代は列車ダイヤの最小単位は15秒だったから、30秒発や45秒発はあり得ても、10秒発、40秒発などというダイヤはあり得なかった。今でも西日本以外のJR各社は基本的に15秒単位のダイヤを踏襲している。かつて「時計より正確」と言われた国鉄のダイヤは列車本数が少ない当時だったからこそ運用できた部分もある。東京や大阪の国電区間では、ラッシュアワーを中心に15秒単位のダイヤすら形骸化し、守れないことが常態になっていたというのに、国鉄時代より4割も人員を削減したJR西日本が国鉄時代より厳しい10秒単位などというダイヤを設定したのだから、守れるほうがおかしいのである。

当ブログはこうした事情を知っているから、事故を起こして亡くなった高見運転士の責任など問えるわけがないと思っている。山崎前社長の責任も確かに重大だが、前任者が築いた体制の上で指揮を執らなければならなかったという意味での限界も抱えていた。報告書不正入手は、そうした中から生まれてきた企業犯罪であり、山崎前社長の罪は当然問われてしかるべきだが、同時に彼ひとりだけが責任を問われるのも公平を欠く。やはり、こうしたダイヤにするよう指示した会社発足以来の歴代幹部の責任こそ問われなければならないのである。

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ベルリンの壁崩壊から20年

2009-11-09 22:40:37 | その他社会・時事
(当エントリは、当ブログ管理人が月刊誌に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

●唐突な「壁解放」の真相
 1989年11月9日、ドイツ民主共和国(東独)の首都ベルリンからやって来たその発表は世界に大きな衝撃を与えた。「(東独国民は)直ちに、全ての国境通過地点から出国が認められる」…後の歴史を大きく塗り替えることになる、ベルリンの壁解放の瞬間だった。

 1989年、世界人口の3分の1を占め、共産圏と呼ばれていた世界は大きな動揺の渦中にあった。中国ではこの年6月、民主化を求めて天安門に集まった学生らを人民解放軍が無差別殺傷する天安門事件が起きたばかりだった。1985年、ソ連共産党書記長に就任したゴルバチョフが「ペレストロイカ」(刷新)、「グラスノスチ」(情報公開)を掲げ、改革を初めて4年あまり。改革の波は東欧社会主義圏全体を揺るがすものになりつつあったが、多くの社会主義国ではいまだに改革は道半ばで、共産党・労働者党が一党支配原則を放棄する決心もつかず逡巡していた時期だった。

 しかも、ちょうどその1ヶ月前の10月9日、東独建国40周年記念式典で、ホーネッカー国家評議会議長兼社会主義統一党書記長が「壁は今後とも数十年間、いや100年にもわたり存続するであろう」と演説したばかりだった。社会主義体制を放棄しても生き残れる可能性がある他の国と違って東独は社会主義を放棄すれば西独に吸収されるのみであり、他の国が社会主義を放棄しても最後まで社会主義を固守するに違いないと信じられていたから、私にはその発表があまりにも唐突なもののように思えたのである。

 それから20年経った今日、謎めいた「壁解放」の真相は担当者の誤発表だったというのが定説になっている。実際には、社会主義友好国にしか自由な旅行が認められていなかった東独国民に対する外国旅行の全面自由化が指導部によって決定され、その自由化が1989年11月10日から発効することになっていた。しかもその外国旅行自由化は「ベルリンの壁を除く」ことになっていたにもかかわらず、社会主義統一党のシャボウスキー政治局員が決定内容を正しく理解しないまま、冒頭のような誤った発表をしてしまったのである。

 シャボウスキー政治局員の発表を「正しく理解」した東ベルリン市民は、大挙して壁に押し寄せ、わずか数日間のうちに東独国民700万人が西独へ出国を申請したといわれる。それは東独国民の4割にも及ぶ恐るべき数字である。東独は翌90年、西独に吸収される形で消滅し、第二次世界大戦の敗戦以来分断されていたドイツはあっけなく統一を達成してしまった。

●壁崩壊の光と影
 ソ連・東欧の社会主義が崩壊して以来20年、社会主義に対する資本主義陣営の勝利が大々的に喧伝されるとともに、資本主義陣営のトップである米国の一極支配が始まった。だが、資本家が労働者を搾取することによって成立する資本主義の一極支配で良い時代が来るなんて、どうしても私には思えなかった。世界経済の教科書が再びマルクスやケインズからアダム・スミスに戻ってしまうのではないかという漠然とした不安に襲われた。

 そうした不安は、今、最悪の形で現実となってしまった。共産圏崩壊の引き金を引くことになるゴルバチョフが登場した1985年はまた労働者派遣法制定の年だが、この法律によって企業の使用者責任はなし崩しとなり、労働者保護の精神を定めた職業安定法は解体させられた。派遣労働者を初めとする非正規雇用は1700万人に上り、20歳代に限れば全体の4割を占めるとも言われる。貧富の格差は拡大し、社会保障は崩壊、彼らはみんな低賃金とピンハネ、理不尽な首切りに怯えながら日々を過ごしている。国鉄改革によって解雇された1047名は、いまだ解雇のまま復職も実現していない。

 自由が抑圧され、錆び付いた「労働者の王国」でも、それが資本主義陣営に対抗できる形で存在していれば、各国の労働者はここまで追い詰められなかったであろうし、ましてやそれが政治的自由を大幅に認める改革を成功させていれば、歴史は大きく変わったであろう。改めて、共産圏崩壊が世界の労働者に与えた負の影響の大きさを実感させられる。

●「レーガンになんて誰も感謝していない」
 ところで、ソ連と共産圏が崩壊したのは、レーガン米政権がSDI(戦略防衛構想:現在のMD=ミサイル防衛構想の原型)を初めとする軍拡競争を仕掛けながらソ連を経済的に追い詰めていったからであるとして、レーガンを冷戦勝利の英雄視する空気が米国にはいまだにあるといわれる。しかし、今年11月のニューヨークタイムズは、東西冷戦の主戦場であったヨーロッパでは必ずしもそうした見方はされていないとして、次のように解説している。

 『ベルリンの壁が崩れて冷戦が終わったのは米国と特にレーガン政権のおかげだ、米国の勝利だと自慢するのが米国側の認識だが、欧州では特にレーガンに感謝していないし、むしろドイツの東方政策と衛星テレビで西ドイツの番組を東に向けて流し続けたおかげ、いわゆる「ソフトパワー」のおかげだと思っている。そしてロシアでは、別にソ連が負けたわけではなく「弱腰ゴルバチョフがぐずぐずして、勝手にソ連を崩壊させただけだ」と未だにゴルバチョフ氏を唾棄している』

 筆者はこの見解に全面的賛同はしない(というより、賛否を表明できるだけの資料を持ち合わせていないと言ったほうが正しい)が、ソ連の社会主義体制が当時の指導部によって人為的に解体されたとする説は一定の説得力があると今でも思っている。歴史的に考えれば、ソ連の社会主義体制は、マルクスやエンゲルスの古典に書かれていたような「生産手段の社会的性質とその資本主義的所有形態との矛盾」が爆発するような形で起きたというよりは、ボルシェヴィキによって上から政治的に移植されたというのが実態だったからだ。革命の第一人者であったトロツキーでさえ、ロシアが「資本主義の鎖の最も弱い環」しか存在していない国だという事実を、なかば公式に認めていた。

 人為的に移植された政治体制は、解体も人為的に行うことができる。ペレストロイカについて、ああでもない、こうでもないといろいろ試してみた挙げ句、大爆発を起こしてしまったゴルバチョフという人物は、研究者には向いているが国家の指導者には向いていなかったということなのかもしれない。

●映画「グッバイ・レーニン」が語る希望
 今から5年ほど前の2004年に、「グッバイ・レーニン」という映画が公開され、東西統一後のドイツでは600万人の観客を動員するほどのヒットになった。

 主人公のアレックスは東独のテレビ修理店に勤める青年だが、社会主義体制に辟易していた。一方、彼の母、クリスティアーネは、社会主義の祖国を捨てて西側へ亡命した夫の反動で、社会主義体制への傾倒を強めていく。ある日、クリスティアーネは、息子アレックスが反社会主義デモに参加し警官隊と衝突しているのを見て、ショックで心臓発作を起こしてしまう。昏睡状態となった彼女は、医師から「二度と覚醒しない」と宣告されるが、奇跡的に意識が回復する。だが、彼女の長い昏睡状態の間に、ベルリンの壁は崩壊し、東独は資本主義の波に洗われていた。

 アレックスは医師から「クリスティアーネが再び大きな精神的ショックを受けて心臓発作が起きたら、今度は助からない」と宣告されたため、映像制作会社に勤める友人の協力を経て、社会主義体制崩壊の事実を母から隠そうとする。社会主義時代と変わらないニュース番組を作って自宅のテレビだけに流したり、キッチンにある外国製ピクルスの瓶のラベルを東独の国営企業のものに貼り替えるなどの工作を行う。初めのうち工作はうまくいくが、やがてクリスティアーネが散歩に出かけた先で外国企業の看板を見つけるなどするうち、彼女は疑いを抱くようになる。母が再び心臓発作を起こすのではないかと案じたアレックスは、そこで母に対し、最後の宣伝工作を打つのである。

 『壁が解放されたベルリンでは、西側資本主義の競争社会に疲れた労働者たちが、続々と社会主義の東独に押し寄せてきています』

 クリスティアーネは、そのニュース映像を見て満足そうにうなずく。これが大まかなあらすじである。

 筆者は、このシーンが、冷戦後の世界を席巻した新自由主義に対する強烈なアンチテーゼであると考えている。広がる一方の格差、下がり続ける生活水準の一方で肥え太っていく資本家たち。ドイツ国民はこの映画の中にユートピアの再興を夢見たのではないか。

 2008年末に起きた金融危機と全世界的規模での雇用・生活崩壊は資本主義が長い歴史の過程をたどりながらも死滅に向かっていることをはっきりと示した。このままではいけないという認識は多くの人々の共有するところとなり、半世紀間、政治的惰眠をむさぼっていた日本でもついに政権交代が実現した。

 「グッバイ・レーニン」は資本主義に代わる新たなユートピアの正体を示すことまではできなかった。しかし、ソ連より民主的で労働者の自主裁量性の高い新たな社会主義を実現させる環境が整いつつあるのではないだろうか。壁崩壊から20年を経た2000年代最後の年の暮れ、ふと筆者はそんなことを思うのである。

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福島県営あづま運動公園の銀杏並木

2009-11-08 23:35:14 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
今日は、福島県営あづま運動公園の銀杏並木を見に妻と2人で出かけた。ここは、福島県内でも有数の銀杏の名所で、この時期は多くの人が訪れる。

今日は、改正の天気の下、金色に染まった銀杏並木と青空のコントラストがとても美しかった。(サムネイル写真)

銀杏並木の写真(その2)

銀杏並木を観た後は、四季の里内にある農園レストランで、ジンギスカン料理(写真)を食す。

食後はクルマで福島市内に出て国道4号線のルートで家路につく。この日、福島市内で行われていた東日本女子駅伝による交通規制にぶつかったが、大きな渋滞にはならなかった。

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JR西3社長起訴問題と国鉄分割民営化

2009-11-04 22:17:50 | 鉄道・公共交通/安全問題
JR西歴代3社長の起訴申し入れ 脱線事故遺族ら(朝日新聞) - goo ニュース

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 JR宝塚線(福知山線)脱線事故で、業務上過失致死傷容疑で告訴され不起訴処分になったJR西日本の歴代社長3人について、遺族らでつくる「4・25ネットワーク」は4日、起訴するよう神戸地検に申し入れた。

 3人は、井手正敬(74)、南谷昌二郎(68)、垣内剛(65)の各氏。神戸地検は7月、事故現場を急カーブに付け替えた際に鉄道本部長だった山崎正夫・前社長(66)のみ在宅起訴し、3人は「山崎氏に安全対策を委ねていた」と不起訴処分にした。だが、遺族らから不服申し立てを受けた神戸第一検察審査会が10月、「3人は安全対策の最高責任者だった」と起訴相当の議決をし、神戸地検が再捜査している。

 この日、遺族と負傷者計9人が検事に面会し、「安全対策をとらないままダイヤを余裕のないものにしたことが、事故にどうつながり、3人に責任はなかったのか改めて捜査してほしい」と求めた。申し入れ後、取材に応じた兵庫県三田市の木下広史さん(51)は「3人を起訴して、事故の真相を裁判で明らかにしてほしい」と話した。(千種辰弥)
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「4.25ネットワーク」の神戸地検への申し入れについては8月にも行われており、当ブログの感想も8月21日付エントリで既に述べたとおりだから、特段付け加えるべきこともない。

当ブログとしても、いつも同じことを繰り返していても仕方がないので、今日は波紋を承知の上で、思い切ったことを書いてみる。

過去、当ブログでは尼崎事故のほか羽越線事故問題、JR東日本による信濃川からの不正取水問題、国労バッジ着用社員に対する不当処分問題、テナント商店「ベルク」追い出し問題などを取り上げてきた。そして、昨日のエントリでは、JR東海による名松線廃止計画に反対を表明した。

これらの事実を検証してきて思うのは、国鉄分割民営化政策によって生まれたJR体制が、完全に破綻したということである。そしてそれは、国鉄分割民営化政策の破綻という評価に直接的に結びつく。

しかし、考えてみればそれは当然だ。国鉄分割民営化というのは、端的に言えば、国民のための鉄道であるものをビジネスのための鉄道に変えるということにほかならなかった。公共性を捨て、安全を捨て、地方を切り捨てることを通じて利潤のために奉仕する、それこそがこの「改革」の本質だった。

国鉄分割民営化が国会で審議されていた1985~86年頃、分割民営化反対派を中心にこうした事態を危惧する声はあったが、圧倒的な「国鉄職員怠け者論」の前にその声はかき消されていった。そして、労働組合までが公共性・安全・ローカル線を切り捨てようとする勢力の前に膝を屈していった。「国鉄がどのような事業体になろうと、黒字でなければならない。タクシーの運転手さんが、呼ばれればどんどん出ていって仕事をする。それはそれによって利益があがるからです」(1986年7月9日、鉄労大会に来賓として出席した松崎明・動労委員長の挨拶)--国鉄職員が、呼ばれればどんどん出ていって仕事をすることに異論はないが、労働組合自身が黒字であることを要求した瞬間、鉄道の安全と公共性は解体したのである。

それから20年が過ぎ、無残でボロボロになったJRの姿は、かき消されていった危惧の声が正しかったことを余すところなく証明した。JRは目的(利潤)のためなら手段を選ばない脱法企業として国民の上に君臨し、今やその存在、そして経営形態それ自身が、日本社会発展のための桎梏となるに至った。

私たちは今こそ物事の表層ではなく本質に迫らなければならない。JR各社を取り巻くこれら恥ずべき事件の大部分は、それが国鉄であったならば発生しなかったであろうと思われるものばかりである。安全のために声を上げる国鉄職員が健在なら福知山線にATS-Pが早期設置されていたに違いないし、車両軽量化も起こりえなかった。羽越線の風速規制が科学的根拠もなく緩和されることもおそらくなかったであろうし、国鉄時代は駅ビル経営をはじめ一切の副業が禁じられていたから、テナント商店「ベルク」への追い出し以前に国鉄が関与するエキナカビジネス自体、存立する余地がなかった。駅ビルは純粋な民間資本によって経営され、テナント商店を入れ換えるにしても、もう少し民間的でスマートな手法が採用されたはずである。

このように考えていくと、現在起きている恥ずべき事件のほとんどは、職員に対してだけ民間流の厳しい働き方を強制しながら、自分たちだけは例外としてきたJRの経営手法に発しているということが理解できるはずである。民間であるという理由で政府からの統制も受けず、かといって民間並みのガバナンス=企業統治も行われないまま、JRの経営者は治外法権の無法状態に置かれてきた。そのことが、こうした害悪の原因になっているのである。

半世紀ぶりの政権交代により、日本国民は2回目の「新日本建設の礎」を勝ち取った。この千載一遇の機会を捉え、社会の公器である鉄道を治外法権から私たちの統制下に取り戻さなければならない。JR各社に対する当ブログの「告発」は、こうした目的のために行っているものだが、気の遠くなるようなこの事業が当ブログだけで達成されることはもちろんあり得ないのであって、当ブログの読者、JRの事故で大切な人を失ったご家族、その他JRおかしいじゃないかと思っている皆さんの協力が不可欠である。安全も公共性もローカル線も二の次、利潤第一で行動するふざけたJRからの根本的転換を望む人は、今こそ当ブログに続いてほしいと思っている。

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異議あり!名松線一部廃止

2009-11-03 23:19:49 | 鉄道・公共交通/交通政策
<JR東海>名松線・家城-伊勢奥津間を廃止へ(毎日新聞)

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 台風18号の影響で一部区間の不通が続いている三重県のJR名松線(松阪-伊勢奥津(おきつ)駅、43.5キロ)について、JR東海は29日、不通区間(家城(いえき)-伊勢奥津駅、17.7キロ)を廃止し、バス輸送への切り替えを決定、地元自治体と協議を始めたことを明らかにした。JR東海発足後、同社が鉄道路線を廃止するのは初めて。

 今月8日の台風では、同線の39カ所で線路上に土砂が流入したり、盛り土が流れ出すなどの被害が発生。同15日から松阪-家城間で鉄道運行を再開したが、家城-伊勢奥津間は代行バスを運行、被害調査を進めていた。

 記者会見で中村満・鉄道事業本部長は廃止を決めた理由について▽険しい地形のため速度制限や雨量規制が厳しいこと▽仮に復旧しても、台風18号以下の風水害で長期の運転規制が起きうること▽周辺道路が改良され、バスの方が安全で安定した輸送を行えること▽利用者の減少--などを挙げた。28日、三重県や津、松阪市に考え方を伝えたという。

 地元の同意が得られ次第、国土交通省に同区間の廃止届を提出する。代行バスは現在、三重交通が1日11本を運行しているが、廃止後も同社へ委託するとみられる。

 名松線は1935年に全線開通。87年度には1日当たりの利用者は1670人だったが、08年度は同700人に減少。特に家城-伊勢奥津間は、87年度の同430人から同90人にまで減った。

 JR名松線の一部廃止について、三重県の野呂昭彦知事は「県としては、関係部局で現地を調査し、住民への影響など今後の対応について沿線の市とよく協議していきたい」とのコメントを出した。【山田一晶、田中功一】
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初めにはっきり言っておく。
JR東海よ、ふざけるな!!

リニア新幹線の建設のために「4兆円でも出す」と言っているJR東海が、名松線を復旧させるための費用(たかだか数十億~数百億レベルだろう)が出せないなどあり得ない。

それに、JR東海は「険しい地形のため速度制限や雨量規制が厳しい」「仮に復旧しても、台風18号以下の風水害で長期の運転規制が起きうる」「周辺道路が改良され、バスの方が安全で安定した輸送を行える」「利用者の減少」などとごたくを並べているが、この程度の水害で復旧をあきらめなければならないとしたら、九州なんて全ての路線が消えてしまうだろう。なにせ、鹿児島県では毎年「水害で死者が出たら梅雨明け間近」といわれているくらいなのだ。

利用者の減少などというのもまったく理由にならない。JR東日本は、輸送密度(1日1キロメートル当たり輸送人員)がたったの85人しかいない岩泉線を存続させているのだし、福知山線のATS-P設置費用を出し渋っていたJR西日本ですら、7月の水害で寸断された姫新線を2ヶ月で復旧させている。それに比べ、東海道新幹線というドル箱路線を持つJR東海が、この程度の金すら出さないというのでは「在来線安楽死政策」と受け止められても仕方がないし、新幹線とリニアにしか興味のない会社だと言われても反論できないだろう。

そのうえ、廃止後の代替輸送をJR東海バスが担うというならまだしも、三重交通に押しつけるとは厚かましいにもほどがある。当ブログは、鉄道ファン仲間からの批判を覚悟で敢えて言わせてもらう。「JR東海に公共交通を担う資格はない。こんなふざけた企業は公共交通の現場から出ていけ」と。

結論として、当ブログは今回の名松線廃止を絶対に認めない。強く、撤回を求める。

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冬への備え、そして初雪観測

2009-11-02 22:55:59 | 日記
11月からいきなり寒波襲来が予想されているので、10月31日に一足早く車のタイヤをスタッドレスに履き替えた。昨年の初雪は11月中旬だったので、早いようにも思ったが、予報なので仕方ない。同時に、ストーブを出して冬へ備えた。

いくら何でも11月の初めから雪なんて降るわけないよなぁと思っていたら、なんと、今日夕方から雨が雪に変わった。2009年の初雪観測である。昨年よりなんと半月以上早い。妻と2人であわてて近所のスタンドへ灯油を買いに走った。

過去のエントリで紹介した地球寒冷化は、案外事実なのかもしれない。

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「コロプラ★乗り放題きっぷ」発売

2009-11-01 23:17:51 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
JR九州と携帯位置情報ゲーム「コロプラ」が初のタイアップ!~毎日の移動がゲームになる。列車で始まる位置ゲーの旅~(JR九州プレスリリース)

携帯電話のGPS機能を利用した位置登録ゲームの草分け的存在である「コロニーな生活☆PLUS」(略称コロプラ)とJR九州がタイアップして、ついに特別切符の発売となってしまった。

「コロプラ」というのは、「ケータイ国盗り合戦」と並ぶ携帯位置登録ゲームの草分け的存在だ。出かけた先で携帯電話から位置情報を送信、自分のいる位置を登録してゲーム内のみで使える仮想通貨「プラ」を貯めたり、特典を受けられたりするゲームで、最近急激に登録者が増加している。昨年12月末に私がユーザー登録をした時点では9万台だったコロニー番号(登録番号)が今では60万台を超えている。つまり60万人以上のユーザーがいるわけだ。

IT技術に覚えのある福岡の1学生の手によって「コロプラ」が作られてから、3年間で9万人だった登録者数はそれからわずか10ヶ月で51万人も増えたことになる。倍々ゲームどころではない、恐ろしい増え方である。

そして、これだけのユーザーがいれば、当然ながら「コロプラ」の運営企業(2008年10月から「コロプラ」は株式会社化している)は大きな発言力を持つことになる。高速道路1000円政策以降、利用者減少に悩む鉄道会社が目をつけたとしても不思議ではない。そして、この手の携帯ゲームとの提携は、JRとしてもちろん初に違いない。

期間限定という制約はあるが、JR四国の「バースデイきっぷ」同様、かなり使い勝手のいい切符になることは間違いない。

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