●さて、いかにお金を振り込ませるか
「ただ、ハラダさんが、もし道代さんには過失はないと認めれば、10日間の拘留で済みます。けれども、道代さん側が保釈金を払えば、今日、出られます」
《話を聞いてすぐ、道代が最近出張から帰ってきたばかりで、今仕事から手が離せないほど忙しいと言っていたのを思い出しました。また、会社に知られたら良くないとも思い、今日のうちに、と思いました》
「おいくらですか」
「200万円です。出せますか?」
「はい」
「現金ですか、振り込みですか」
「現金を直接、そちらへ持っていきます」
「第一審は11時半にあります」
「そちらへ向かうには、2時間近くかかります」
「お宅はどちらですか」 「小平駅です」
「解説」
①相手を思いのままに操る最終段階である。ここを失敗すると、なんのためのそれまでの苦労かということになる。
まず、娘の苦境を救うために解決策を示してやる。これが相手を動かすには必須である。
よくよく考えれば、世の中で発生している苦境の解決には、多彩な解決策があり、しかも時間がかかるのが普通である。しかし、ここでは、相手に考えさせるのではなく、こちらからお金だけ払えば解決です、とずばり提示してやる。そうすれば、あれこれ考えたり迷ったりする必要がない。言うとおりに動きやすい。その程度で済むなら、かわいい娘のためにやってやろうという気持ちになる。
②もう一つここで使われている手法は、時間切迫、つまりあせらせる、というものである。「あと10分で」「できるだけ早く」とかいうセリフを使う。これによって、深く考えずに相手の言うとおりに動いてしまう。
これは、広告宣伝の手法として良く知られている「アイドマの法則」の一つを利用したものである。アイドマの法則とは、次の5つの趣向の頭文字をとったものである。
・Attention 注意を引きつける
・Interest 利益に訴える
・Desire 欲求に訴える
・Memory 覚えてもらう
・Action 買いにきてもらう
時間切迫は、このうちactionを引き出す技法の一つなのである。「先着100名に豪華景品を差し上げます」という定型的な惹句はよく目にするはずである。あれと軌を一にする説得技法である。
●囲い込みをする
「それは無理ですね。それでは、電車に乗られる前に、こちらへ電話をしてください。私の連絡先は、(携帯電話の番号)。お金は、普通預金から出されるのですか?」
「定期預金です」
「普通預金ではだめですか」
「お金がほとんど入っていません」
「いくら残っているのですか?」
「……」
《このやり取りのあたりでさすがに、どうもおかしいな、と思い始めました》
「では、お金を降ろしたら、連絡をください」
「解説」
思い込みの世界に囲い込んだままにしておくことも必要である。このケースでは、お金を早く振り込ませたいために、詐欺師があせったようである。物語(思い込みの世界)の一貫性、必然性を疑わせるようなセリフを連発してしまう。さすがに、大切なお金の話になると、被害者のほうにも警戒心が沸いてくるようである。
このケースのもう一つの失敗は、電話を無造作に切ってしまったことである。これで、相手を思い込みの世界から一時的に離脱させるきっかけを作ってしまった。「心配ですので、携帯で逐一、そちらの状況をお知らせください。それに対応できるようにしておきますから」とでも言ってから電話を切るようにでもされたら、思い込みの世界に囲われたたままの状態だったかもしれない。
●土壇場で、詐欺に気がつく
電話が切れた後、陽子さんは急いで道代さんの名刺を探し出し、道代さんの職場へ電話をした。
あいにく、道代さんの姿は今見あたらない、とのことだった。道代さんの夫に連絡し、状況を話すと、そんな話はおかしいですよ、と笑われた。念のため、地元の警察署に電話をかけ、板橋区大和町に事故があったかどうか、品川の拘置所に道代さんがいるかどうか、調べてほしいと頼んだ。
2階にいた夫が、1階で陽子さんがバタバタしているのを聞きつけて、「どうした?」と聞いてきた。
《けれども、すっかり私は慌てているので、「ちょっと待って」とこたえるので精いっぱいでした》
すると、ナカヤマから、前の電話から5分を待たずに、次の電話がかかってきた。
「定期口座ですと、お金を降ろすときに銀行から理由を聞かれます。このように(内容覚えておらず)理由をこたえてください」
その後、すぐに地元の警察から電話があり、板橋区の事故も拘置所の件も、実際にはない、とのことだった。
5分後ほどに、再び電話があった。「ハラダというものです」。被害者の夫を名乗った。「待ちに待った子どもだったんです。謝罪をしていただきたい」。泣き声だった。
落ち着きを取り戻した陽子さんは初めて、その演技臭さを感じた
「解説」
土壇場での解決である。ここで注意してほしいのは、解決は自分一人の力ではなかったところである。
詐欺師たちは、自分だけで解決しよう/しなければという気持ちにさせるような物語を作り出して、思い込みの世界への囲い込みをしようとする。アダルトサイトの接続料だとか、痴漢事件、交通事故のもみ消しなどを持ち出す。このケースでも、事故が娘の会社に知られたら大変、200万円で片がつくなら夫にも内緒、自分の気持ちを娘にこんな形で示せるなら、という気持ちにさせる。したがって、夫が「どうした?」と聞いてくれても、事をつまびらかにしない気持ちを責めることはできない。
それでも、職場や警察や義理の息子への電話が詐欺被害から陽子さんを救ってくれた。
思い込みの世界からの脱出は、自分一人では無理である。ましてや、そこに閉じこめておく力が強力に働いている時には。そんな時の助けは、周囲の人々である。
●振り込め詐欺対策のいくつか
さて、こうした振り込め詐欺に引っかからないための対策を考えてみることにする。
やっかいな事には、思い込みには、「思いこんだら地獄まで」というところがある。ひとたび架空の物語の世界に入ってしまうと、そこから自力で脱出するのは極めて難しい。周囲の人々の助けが必要である。
となると、詐欺に引っかからないためには、思い込みの世界へと誘導される前に、そのおかしさに気がつくこと(水際対策)、最後のお金を出すところでの工夫(出口対策)しかない。
1)水際対策
①犯罪に関する知識を豊富にしておく
マスコミが流すニュースは犯罪情報が実に多い。これを自分には関係ないよそ事として見る人もまた実に多い。安全性バイアスと呼ばれている現象の一つである。いろいろの危険情報を得ても、人は自分だけは安全という奇妙な状況認識を強く持つ。とことんまでいかないと危険との認識をしない。
それはさておくとしても、やはり犯罪に強くなるには、どんな犯罪がどのような手口でおこなわているかについて、できるだけ情報を収集し、知識としてもつに越したことない。なんといっても「知は力なり」である。その際、できるだけ自分に引きつけてそうした情報を収集するように心がけておくと、いざという時に役立つ。
②大所高所から状況を眺めるようにする
思い込みの世界に入ってしまうのは、局所的な手がかりだけに強く依存してしまうからである。普段から、全体や一段高いところから状況を眺めるようにしておくと良い。
たとえば、一つの仕事をするにも、その仕事は全体のどの部分なのか、それは仕事全体にとってどんな意味があるのかなどを考えるよう習慣づけておくことである。
③多角的に見る
一つだけの限定された見方をしてしまうことから、思い込みがはじまる。もっと別の見方はないかと自問自答してみるようにすると良い。懐疑精神、批判精神を持つことと言ってもよい。
④即断即決をしない
とりわけ、感情が高ぶってしまっているような時には、それが治まるまで大事な決断はしないようにする。可能ならその事態から一時的に離脱する。トイレに行ってみる、人と相談してみるなどが有効である。
③考えていることを周囲の人が聞いてくれる環境を作る
思い込みは頭の中で発生する。したがって、自分から話さなければ、誰も何が起こっているかわからない。自分の思いを普段から周囲の人に話せるようなコミュニケーション環境にしておく。話すことでみずから気がつくということもある。
2)出口対策
①間合いを入れる
「即断即決をしない」と軌を一にする対策だが、いざ行動に移す際に、一度、深呼吸でもして、さらには、これで大丈夫かの点検をしてから、行動に踏み切るようにする。
②大金の支払いはフールプルーフで
ATMの利便性が、振り込み詐欺を支えているもう一つのIT技術である。簡単に100万、200万の大金が見知らぬ人に瞬時に送れるからこその犯罪である。
金融機関もようやく送付金額の上限設定の対策を取るようになったが、個人でもそれなりの対策を考えておいたほうが良い。
そのポイントは、フールプルーフ(fool-proof)である。大金を振り込む(動かす)際には、いつもよりやりにくくしておくことである。
フールプルーフとは、うっかりミスの防止策の一つである。無意識に何かをしてしまってついうっかりとなるのを防いだり、危ないことをしてもただちには事故につながらないようにする仕掛けである。
たとえば、ガスを使うには、ガス栓を押してから回す、ポットからお湯を出すには「解除」を押してからでないと出ないようにする仕掛けである。
我が家でも、10万円以上のお金の移動は、一言、その旨を相手に言う、という取り決めにしている。
●関連した余話を3つ
1)振り込め詐欺の被害者にみる日本人のメンタリティ(心性)
「その1;母/父子密着」
アメリカで活躍していて20年ぶりに帰国したある教授によると、こういう詐欺事件はアメリカでは聞いたことはなかったし、起こり得ないのではないかという。
その理由は、2つ。
一つは、母子/夫子分離がきちんと出来ているので、成人した子供の尻拭いを親がすることはありえないというのが理由の一つ。
もう一つは、金銭決済の方式が小切手なので、お金が決済されるまで時間がかかるというのがもう一つの理由。
後者についてはフールプルーフの話につきるのでさらなる話はないので、前者についてさらに一言。
北海道のある新聞の記者から、自分の母親が振り込め詐欺にあいそうになった。ついてはコメントを、と言われた。彼の母親いわく。「振り込め詐欺ではないかとは思った。でも、200万円で片が付くなら、安い授業料だと思って振り込むつもりだった」。
「その2;リスク感覚の欠如」
関西人は、振り込め詐欺にあまり引っ掛らないらしい。また、もっぱら、専業主婦や高齢者が被害者になってしまう。
そこには、リスクに対する感受性の欠如があるように思えてならない。商売をしている人なら、そんなことはまずありえない。金銭の移動に関しては最大限のリスク感覚を発揮するように習慣づけられているからである。
100万円単位のお金の振り込みには、崖から飛び下りるようなリスクがあると思うのだが、いかに大切な人のためとはいえ、いとも簡単に振り込んでしまう。
2)なぜ何度も振り込んでしまうのか
セールスなどの技法の一つに、「段階的要請法」というのがある。小さいことをまず受け入れさせてから次第に大きなもの(本物)を買わせるのである。まず低い障壁を越えさせるのである。
昨日の新聞には、28歳の女性が、12回にわたり、1200万円を振り込んだ詐欺が報道されていたが、そのテクニックがまさに段階的要請法だった。最初から1200万円振り込めと言われれば、誰しもが逡巡してしまう。まずは、手付けとして10万円、と言われれば、それならとなる。
3)思い込みをしやすい人
思い込みをしやすい人とそうでない人とがいる。チェック欄でみずからの思い込み度をチェックしてみてほしい。
無論、詐欺被害にひっかるのは、その人にだけ責があるというつもりはまったくない。被害にひっかりそうな人と状況とをうまくかみあわせて、一人の人を追い込むのが詐欺犯罪である。蛇足であるが、付け加えておく。
チェック「自分の思い込み度をチェックする」*******
次のリストに従って、自分の思い込みやすさを判定してみよ。
1)直感的判断に頼ることが多い( )
2)理詰めで考えるのは嫌い( )
3)判断に迷うことはあまりない( )
4)人と相談することはあまりない( )
5)何ごとも自分なりに納得しないと我慢ならない( )
******************************
(事例の引用を許可していただいた朝日新聞に対して、謝辞を表します。)
「ただ、ハラダさんが、もし道代さんには過失はないと認めれば、10日間の拘留で済みます。けれども、道代さん側が保釈金を払えば、今日、出られます」
《話を聞いてすぐ、道代が最近出張から帰ってきたばかりで、今仕事から手が離せないほど忙しいと言っていたのを思い出しました。また、会社に知られたら良くないとも思い、今日のうちに、と思いました》
「おいくらですか」
「200万円です。出せますか?」
「はい」
「現金ですか、振り込みですか」
「現金を直接、そちらへ持っていきます」
「第一審は11時半にあります」
「そちらへ向かうには、2時間近くかかります」
「お宅はどちらですか」 「小平駅です」
「解説」
①相手を思いのままに操る最終段階である。ここを失敗すると、なんのためのそれまでの苦労かということになる。
まず、娘の苦境を救うために解決策を示してやる。これが相手を動かすには必須である。
よくよく考えれば、世の中で発生している苦境の解決には、多彩な解決策があり、しかも時間がかかるのが普通である。しかし、ここでは、相手に考えさせるのではなく、こちらからお金だけ払えば解決です、とずばり提示してやる。そうすれば、あれこれ考えたり迷ったりする必要がない。言うとおりに動きやすい。その程度で済むなら、かわいい娘のためにやってやろうという気持ちになる。
②もう一つここで使われている手法は、時間切迫、つまりあせらせる、というものである。「あと10分で」「できるだけ早く」とかいうセリフを使う。これによって、深く考えずに相手の言うとおりに動いてしまう。
これは、広告宣伝の手法として良く知られている「アイドマの法則」の一つを利用したものである。アイドマの法則とは、次の5つの趣向の頭文字をとったものである。
・Attention 注意を引きつける
・Interest 利益に訴える
・Desire 欲求に訴える
・Memory 覚えてもらう
・Action 買いにきてもらう
時間切迫は、このうちactionを引き出す技法の一つなのである。「先着100名に豪華景品を差し上げます」という定型的な惹句はよく目にするはずである。あれと軌を一にする説得技法である。
●囲い込みをする
「それは無理ですね。それでは、電車に乗られる前に、こちらへ電話をしてください。私の連絡先は、(携帯電話の番号)。お金は、普通預金から出されるのですか?」
「定期預金です」
「普通預金ではだめですか」
「お金がほとんど入っていません」
「いくら残っているのですか?」
「……」
《このやり取りのあたりでさすがに、どうもおかしいな、と思い始めました》
「では、お金を降ろしたら、連絡をください」
「解説」
思い込みの世界に囲い込んだままにしておくことも必要である。このケースでは、お金を早く振り込ませたいために、詐欺師があせったようである。物語(思い込みの世界)の一貫性、必然性を疑わせるようなセリフを連発してしまう。さすがに、大切なお金の話になると、被害者のほうにも警戒心が沸いてくるようである。
このケースのもう一つの失敗は、電話を無造作に切ってしまったことである。これで、相手を思い込みの世界から一時的に離脱させるきっかけを作ってしまった。「心配ですので、携帯で逐一、そちらの状況をお知らせください。それに対応できるようにしておきますから」とでも言ってから電話を切るようにでもされたら、思い込みの世界に囲われたたままの状態だったかもしれない。
●土壇場で、詐欺に気がつく
電話が切れた後、陽子さんは急いで道代さんの名刺を探し出し、道代さんの職場へ電話をした。
あいにく、道代さんの姿は今見あたらない、とのことだった。道代さんの夫に連絡し、状況を話すと、そんな話はおかしいですよ、と笑われた。念のため、地元の警察署に電話をかけ、板橋区大和町に事故があったかどうか、品川の拘置所に道代さんがいるかどうか、調べてほしいと頼んだ。
2階にいた夫が、1階で陽子さんがバタバタしているのを聞きつけて、「どうした?」と聞いてきた。
《けれども、すっかり私は慌てているので、「ちょっと待って」とこたえるので精いっぱいでした》
すると、ナカヤマから、前の電話から5分を待たずに、次の電話がかかってきた。
「定期口座ですと、お金を降ろすときに銀行から理由を聞かれます。このように(内容覚えておらず)理由をこたえてください」
その後、すぐに地元の警察から電話があり、板橋区の事故も拘置所の件も、実際にはない、とのことだった。
5分後ほどに、再び電話があった。「ハラダというものです」。被害者の夫を名乗った。「待ちに待った子どもだったんです。謝罪をしていただきたい」。泣き声だった。
落ち着きを取り戻した陽子さんは初めて、その演技臭さを感じた
「解説」
土壇場での解決である。ここで注意してほしいのは、解決は自分一人の力ではなかったところである。
詐欺師たちは、自分だけで解決しよう/しなければという気持ちにさせるような物語を作り出して、思い込みの世界への囲い込みをしようとする。アダルトサイトの接続料だとか、痴漢事件、交通事故のもみ消しなどを持ち出す。このケースでも、事故が娘の会社に知られたら大変、200万円で片がつくなら夫にも内緒、自分の気持ちを娘にこんな形で示せるなら、という気持ちにさせる。したがって、夫が「どうした?」と聞いてくれても、事をつまびらかにしない気持ちを責めることはできない。
それでも、職場や警察や義理の息子への電話が詐欺被害から陽子さんを救ってくれた。
思い込みの世界からの脱出は、自分一人では無理である。ましてや、そこに閉じこめておく力が強力に働いている時には。そんな時の助けは、周囲の人々である。
●振り込め詐欺対策のいくつか
さて、こうした振り込め詐欺に引っかからないための対策を考えてみることにする。
やっかいな事には、思い込みには、「思いこんだら地獄まで」というところがある。ひとたび架空の物語の世界に入ってしまうと、そこから自力で脱出するのは極めて難しい。周囲の人々の助けが必要である。
となると、詐欺に引っかからないためには、思い込みの世界へと誘導される前に、そのおかしさに気がつくこと(水際対策)、最後のお金を出すところでの工夫(出口対策)しかない。
1)水際対策
①犯罪に関する知識を豊富にしておく
マスコミが流すニュースは犯罪情報が実に多い。これを自分には関係ないよそ事として見る人もまた実に多い。安全性バイアスと呼ばれている現象の一つである。いろいろの危険情報を得ても、人は自分だけは安全という奇妙な状況認識を強く持つ。とことんまでいかないと危険との認識をしない。
それはさておくとしても、やはり犯罪に強くなるには、どんな犯罪がどのような手口でおこなわているかについて、できるだけ情報を収集し、知識としてもつに越したことない。なんといっても「知は力なり」である。その際、できるだけ自分に引きつけてそうした情報を収集するように心がけておくと、いざという時に役立つ。
②大所高所から状況を眺めるようにする
思い込みの世界に入ってしまうのは、局所的な手がかりだけに強く依存してしまうからである。普段から、全体や一段高いところから状況を眺めるようにしておくと良い。
たとえば、一つの仕事をするにも、その仕事は全体のどの部分なのか、それは仕事全体にとってどんな意味があるのかなどを考えるよう習慣づけておくことである。
③多角的に見る
一つだけの限定された見方をしてしまうことから、思い込みがはじまる。もっと別の見方はないかと自問自答してみるようにすると良い。懐疑精神、批判精神を持つことと言ってもよい。
④即断即決をしない
とりわけ、感情が高ぶってしまっているような時には、それが治まるまで大事な決断はしないようにする。可能ならその事態から一時的に離脱する。トイレに行ってみる、人と相談してみるなどが有効である。
③考えていることを周囲の人が聞いてくれる環境を作る
思い込みは頭の中で発生する。したがって、自分から話さなければ、誰も何が起こっているかわからない。自分の思いを普段から周囲の人に話せるようなコミュニケーション環境にしておく。話すことでみずから気がつくということもある。
2)出口対策
①間合いを入れる
「即断即決をしない」と軌を一にする対策だが、いざ行動に移す際に、一度、深呼吸でもして、さらには、これで大丈夫かの点検をしてから、行動に踏み切るようにする。
②大金の支払いはフールプルーフで
ATMの利便性が、振り込み詐欺を支えているもう一つのIT技術である。簡単に100万、200万の大金が見知らぬ人に瞬時に送れるからこその犯罪である。
金融機関もようやく送付金額の上限設定の対策を取るようになったが、個人でもそれなりの対策を考えておいたほうが良い。
そのポイントは、フールプルーフ(fool-proof)である。大金を振り込む(動かす)際には、いつもよりやりにくくしておくことである。
フールプルーフとは、うっかりミスの防止策の一つである。無意識に何かをしてしまってついうっかりとなるのを防いだり、危ないことをしてもただちには事故につながらないようにする仕掛けである。
たとえば、ガスを使うには、ガス栓を押してから回す、ポットからお湯を出すには「解除」を押してからでないと出ないようにする仕掛けである。
我が家でも、10万円以上のお金の移動は、一言、その旨を相手に言う、という取り決めにしている。
●関連した余話を3つ
1)振り込め詐欺の被害者にみる日本人のメンタリティ(心性)
「その1;母/父子密着」
アメリカで活躍していて20年ぶりに帰国したある教授によると、こういう詐欺事件はアメリカでは聞いたことはなかったし、起こり得ないのではないかという。
その理由は、2つ。
一つは、母子/夫子分離がきちんと出来ているので、成人した子供の尻拭いを親がすることはありえないというのが理由の一つ。
もう一つは、金銭決済の方式が小切手なので、お金が決済されるまで時間がかかるというのがもう一つの理由。
後者についてはフールプルーフの話につきるのでさらなる話はないので、前者についてさらに一言。
北海道のある新聞の記者から、自分の母親が振り込め詐欺にあいそうになった。ついてはコメントを、と言われた。彼の母親いわく。「振り込め詐欺ではないかとは思った。でも、200万円で片が付くなら、安い授業料だと思って振り込むつもりだった」。
「その2;リスク感覚の欠如」
関西人は、振り込め詐欺にあまり引っ掛らないらしい。また、もっぱら、専業主婦や高齢者が被害者になってしまう。
そこには、リスクに対する感受性の欠如があるように思えてならない。商売をしている人なら、そんなことはまずありえない。金銭の移動に関しては最大限のリスク感覚を発揮するように習慣づけられているからである。
100万円単位のお金の振り込みには、崖から飛び下りるようなリスクがあると思うのだが、いかに大切な人のためとはいえ、いとも簡単に振り込んでしまう。
2)なぜ何度も振り込んでしまうのか
セールスなどの技法の一つに、「段階的要請法」というのがある。小さいことをまず受け入れさせてから次第に大きなもの(本物)を買わせるのである。まず低い障壁を越えさせるのである。
昨日の新聞には、28歳の女性が、12回にわたり、1200万円を振り込んだ詐欺が報道されていたが、そのテクニックがまさに段階的要請法だった。最初から1200万円振り込めと言われれば、誰しもが逡巡してしまう。まずは、手付けとして10万円、と言われれば、それならとなる。
3)思い込みをしやすい人
思い込みをしやすい人とそうでない人とがいる。チェック欄でみずからの思い込み度をチェックしてみてほしい。
無論、詐欺被害にひっかるのは、その人にだけ責があるというつもりはまったくない。被害にひっかりそうな人と状況とをうまくかみあわせて、一人の人を追い込むのが詐欺犯罪である。蛇足であるが、付け加えておく。
チェック「自分の思い込み度をチェックする」*******
次のリストに従って、自分の思い込みやすさを判定してみよ。
1)直感的判断に頼ることが多い( )
2)理詰めで考えるのは嫌い( )
3)判断に迷うことはあまりない( )
4)人と相談することはあまりない( )
5)何ごとも自分なりに納得しないと我慢ならない( )
******************************
(事例の引用を許可していただいた朝日新聞に対して、謝辞を表します。)
何度聞いても、、興味を引かれますお話です(@_@)
そう言えば、つい先週?、歯科に行った際に、どこかの(近所だとおもいます)ご高齢の主婦の患者様、 受付の歯科衛生士さんと、その後院長にも、「この間はすみませんでした、本当に………。7回も電話があって、、………、本当にびっくりしてしまいましたヨ(x_x;)、、
なんか7回も電話があったものですから………ねぇ(/_・、)、、
すみませんでしたー、、ご迷惑をおかけして………(ノ_・。)」
っと、来るなり受付で、謝っておりました~(*´д`*)心配そうに………。
近くにいたgreen、「なんか、7回も電話があって………」 のどこかの患者様の不安そうなお話に、院長が、
「いえいえ。家はナンバーディスプレイといって、かかってきた相手の電話番号が出るようにしてありますから………、、まぁ、そういうわけの分からないものには気をつけているというか、
知らない番号にはかかってきても、かけない様にしておりますから、、
うちは大丈夫だったのですけど、、、
まぁ、そういう風にするのも一つの手かもしれないですよねー。
そうですよねー、詐欺なんなには、気をつけた方がいいですねーφ(._.)………」
っと、話しておるのが聞こえました(..)
………多分、その患者様か御主人への、(例えば急遽事故にあわれて、こちらに駆けつけましたので治療を致しました、治療費を支払って下さい、振り込んで下さい、)などの、歯科医を名乗っての 詐欺電話?(7回) だったのかと、予想しました(..;) ←歯科医院に謝罪していましたので、そんな感じだったのかと………
悪質です!!
green、攻撃性はあります(-_☆) ハイ;
先生の紹介してくれました振り込め詐欺事件を読んでいて、思いましたgreen。
確か、拘束、留置所に入れられた時には、一回は、電話が許されるのではφ(._.)メモメモ?っと。
アメリカなどでは(ドラマですが、)よく見かけます。
「警察です!」
っと名乗られてしまうと焦ってしまうのですが、やはりここは、「本人の声を聞かせて頂かねば!!」っと、事実がよく確かめられないと思います[壁]_-)
シャキーン(`・ω・´)
うちも、ナンバーディスプレイにしよう(=゜ω゜)ノ としたのですが、業務上FAXとつながっているため、出来ないと NTT で言われてしまいましたf(^_^;)
しかし、父兄弟に警官がおりますので、もし警察を名乗るあやしい電話でしたら、やはり、親戚に確認をとろうかと思っております★★
(=°ω°=)一昨日、
母、携帯に知らない番号から着信あり
green、登録外なら かけなおさない方がいいよー! と 忠告するも、
母、○○さんの番号に似ているからそうかもー(=゜ω゜)ノ と、かけなおしてしまいました(;)
ら、 別の近所のお友達からの 「トウモロコシ頂いてありがと~う(@^O^@)ノ」 の お電話でした(^^;)
意外と忠告を聞かない母(^_^;) 今回は 〃トウモロコシ用件〃 で済んで良かったですが;苦笑い;