「なぜ大金を振り込んでしまうのかーー詐欺の心理学」
海保博之 東京成徳大学教授
●はじめに
警察庁によると平成17年の1〜11月までの振り込め詐欺被害額は、226億円にもなる。
架空請求による振り込め詐欺は自分も一度、ひっかりそうになった。法律用語びっしりの請求メールをもらってびっくり仰天してしまった。すぐに学生にこんなものが来ているのだが、というと、さすがに学生はしたたかで、「自分にも来たことがあります。無視が一番です」と忠告してくれて、ほっとしたことを思い出す。
その後、こうした事件報道が多くなった頃、マスコミ関係で働いている娘宛に、葉書で同じような趣旨の請求手紙が来たこともある。娘に見せると、「思い当たるふしがある。電話してみる」と言う。「馬鹿なことをするな。無視が一番」と偉そうに忠告したやったことがある。これほどマスコミで騒がれるようになっても、事が自分に及ぶとあたふたとしてしまう。実に巧みな心理戦略が使われているからである。
本章では、まず一つの実例を追う形で、振り込め詐欺の心理戦略を解剖してみることにする、
以下、小活字ゴッシク体が事件の詳報である。その後に「解説」としたものが、筆者による心理学的なコメントである。なお、これは、朝日新聞朝刊生活欄2004年10月8日付け記事のための朝日新聞東京本社生活部・山田史比古氏による筆者へのメール取材原稿に基づくものである。
この事例分析の結果をふまえて、最後に、振り込め詐欺にあわないための対策のいくつかを提言してみる。
●まずは、発端の電話から
受話器を取ると、相手は、落ち着いた声の男性だった。
「今野道代さん(仮名;64)のお宅ですか。品川警察署の者です」
「解説」
①警察という権威をよそおうことで、相手より心理的に優位に立つ。説得事態では、何より大事なことは、いかに相手より心理的に優位な立場に自分を置いておくかである。名刺も、もらうと、名前よりも先に肩書きのほうに目がいくのも、自分と相手との心理的優劣関係を確認しようとの気持ちがあるからである。
②ここで、電話というメディアが使われているところにも注目されたい。電話では相手が見えない。おまけに、耳からだけしか情報が入ってこない。情報伝達手段としては電話はかなり信頼度の低いメディアである。
「泣き声で話したので、本当に息子からの電話だったと思った」(ある被害者の証言)も、電話の信頼度の低さゆえである。
したがって、この信頼度の低さを受信者側は自分なりに補う必要がある。つまり、電話は、感情的、知的な心理的介入があって成り立つホットメディアである。クールメディアの代表であるTVと比較されたい。
●びっくり仰天、目が点、頭真っ白
9月中旬の平日午前11時半ごろ。小平市の主婦今野陽子さんは、自宅にかかってきた警察の電話で突然、次女(28)の名前を聞かされ、驚いた。
「本日、板橋区大和町の10号線で、道代さんの車が接触事故にあいました」
「エッ、道代は?」
「解説」
①「娘の事故」と聞いただけで、母親は認知的にパニック状態になってしまう。頭真っ白、目が点。正常な思考、判断ができなくなる。これがねらいである。
まっとうな判断ができる状態なら、簡単に話のおかしさに気がつくはずなのに、認知的パニック状態では、それができない。そういう状態にさせるのが、彼らのとりあえずのねらいである。
②心理学の問題ではないが、プライバシー情報の遺漏問題も深刻である。コンピュータを使えば、断片的な個人情報をいとも簡単に寄せ集めて、個人情報バンクを作ることができてしまう。それが詐欺師の手に渡れば、話(物語)の信憑性を作り出す一つの貴重なお膳立てとして使われてしまう。
コラム「説得にかかわる心理学用語」*****
ここで、説得にかかわる心理学用語のいくつかを、「現代用語の基礎知識」(自由国民社)より抜き出しておく。
○説得的コミュニケーション
人をその気にさせるために行うメッセージの提供である。広告やセールスではとりわけ重要である。これを効果的なものにするには、四つの考えどころがある。(1)提供者側の専門性や信頼性、(2)コミュニケーションの内容のつくり方、例えば、長所のみ(1面提示)か長短あわせてか(両面提示)など、(3)受け手の何に訴えるか、例えば、不安や恐怖など、(4)メッセージの提示方法、対面しての話術や各種メディアの活用など。
○説得への抵抗
榊博文によると、説得への抵抗の高い人(説得されにくい人)とは、自分に自信のある人、不安傾向の低い人、攻撃性の高い人、そして女性より男性である。しかし、説得の仕方や状況によってあっさりと説得されてしまうことも、また逆に、説得とは反対の方向に変わってしまうブーメラン効果も知られており、説得も一筋縄ではいかない。
○段階的要請法
セールスでは、ともかくドアの中に入れてもらえたら勝ちである。ささいなことを受け入れてもらたら、もっと大きなことも受け入れてもらえる可能性が高くなるからである。少額の入会金を納めさせてから次第に高額の買い物をさせる商法がこの例である。
○特典除去法
最初に割引きなど客にとって優利な条件を提示して購入を決めさせてから、都合で割引き率を下げざるをえないと伝えて強引に購入させてしまう。逆に、購入を迷っている人に特典を提示して購入を決断させてしまう特典付加法もある。
******************************
●相手のペースに乗せられる
「これから順序立ててお話します。お気持ちは分かりますが、落ち着いてよく聞いてください」
《道代はどうなっているのか、私はそれをまず知りたかったのですが、相手はたたみかけるように話を続けてきました》
「解説」
①「たたみかけて」一気に自分たちのペースにのせるのは、「バナナのたたき売り方略」である。説得方略の一つである。話のつじつまが合わないところや不審なところをどんどん新しい話を展開することで覆い隠して、自分のペースに巻き込んでしまう。疑問、質問を封じてしまう効果もある。
②「お気持ちはわかりますが」の一言も見逃せない。これも、「慰め方略」と呼ぶにふさわしい説得方略の一つなのである。
過度に長時間、心理的に優位に立ったままだと拒否や反発や逃避をくらうこともあるので、その緩和をねらう。さらに、相手への共感を示すことで、説得事態を親和的な雰囲気にする効果もある。
●物語を作る
「相手は自転車に乗っていて、ハラダカツヨさんという28歳の女性です」「道代さんは会社やお友達に連絡するより、まずは実家の連絡してくださいとのことでしたので、ご連絡しました。お母様ですね?」
「はい」
《相手の説明に、はいはいと答えるしかありませんでした。ただ、道代は車の運転が好きではありません。話を聞きながら、半信半疑でした》
「道代さんはムライアイコさんの白いバンに乗って運手していたそうです。アイコさんはお友達ですか、同僚の方ですか。アイちゃん、と呼んでいるそうですが」
「アイコさんは同乗していたのですか?」
「今は分かりません。道代さんは、アイコさんをかばっているのか、お話しません」
《聞いているうちに、本当に道代が運転していたのだと思い始め、だんだんドキドキしてきました》
「もう一度、詳しく話を聞かせてください」
「解説」
①詐欺は、いかにして相手を架空の物語の世界に導くかが最大のポイントである。これに成功すれば、あとは、その思いこませの世界で、相手を自由自在に操れる。
この事例では、架空の物語を相手に作り出させる(思いこませる)ための仕掛けが巧みである。
個人情報に加えて、確認できない情報、一つは友人の車を運転、もう一つはその友人の名前を使って、物語の真実性を高めている。これなら、嘘がばれる心配はない。
一般に、物語作りには、次のような心理的な効果がある。
1)全体に一貫性を与える
・事の真実性を高める
・細部のおかしさを覆い隠す
2)よくわかる話しで、相手の知識を活用する
・巻き込み効果を狙える
・細部を相手(被害者)が勝手に補ってくれる
3)感情を揺さぶる
・感情を揺さぶって、冷静な判断をさせない
・感情移入をさせる
・納得させることができる
②思い込みが起こるのは、目の前の状況がどうなっているかについての認識と解釈がすばやく求められる時に発生しがちである。たとえば、
・知らない土地でのドライブでどっちにまがったら目的地につけ
るか
・火災報知器が鳴っている原因を知りたい
・名刺をもらえない初対面の人がどんな人を推測する
こんな場面に遭遇すると、その時その場での顕著な手がかりだけに基づいて、頭の中に状況の解釈のためのメンタルモデルを作り出し、それに基づいて自分なりの状況認識をしてしまう。これが思い込みである(図参照)。
それが、いつも不適切というわけではないが、誤ってしまうことも多い。なぜかというと、状況の中で目についた顕著な部分的な手がかりによって触発された頭の知識の一部を使った認識だからである。
振り込め詐欺では、自分たちに都合の良い思い込みの世界を強制的に作り出させる手がかりを物語の形で提示しているである。
●物語作りのだめを押す
「私は警察の者でお知らせをしています。今後は、検事からお聞きくださって、相談してください」
「ちょっと待って。道代はどこにいますか」
「品川の簡易裁判所に拘置されています。相手のハラダさんが東京海上火災の国選弁護人を雇われたので、電話を代わります」
陽子さんの耳に、遠くの方で、「今野道代さんのお母さんです」と電話を代わる声が聞こえた。電話口に出てきたのは、警察官と同じ高めの声音で、やはり穏やかな口調の男だった。
「弁護士のナカヤママサシといいます。道代さんはとても優しく、まじめな方で、大変なショックを受けています。お気の毒です」
道代さんは制限速度で走っていたが、自転車に乗ったハラダカツヨさんが横断歩道でないところを飛び出してしまった。幸い、車の正面ではなく横にぶつかったので、大けがではなかった。倒れただけだった。道代さんが車の窓を開けて「大丈夫ですか」と聞き、ハラダさんは「大丈夫」と答えた。道代さんは車から降りず、そのまま去った。
しかし、実は女性は妊娠6カ月で、縁石におなかをぶつけたため、念のために病院へ行った。すると流産だった。本人には本当のことは知らせていないが、夫は大変ショックを受けている。結婚して4年目で待ちに待った赤ちゃんだったらしい。夫は、「妻も悪いが、心からの謝罪をしていただかないと困る」と言っている」。
《女性が妊娠、と聞いた瞬間に、私の頭は真っ白になってしまいました。相手が道代と同じ28歳、ということも、ますますひとごとでないと思わせました》
ナカヤマの話は続いた。
「道代さんに非はなかったとはいえ、車から降りず、走り去ってしまったのでひき逃げになります。過失致傷で6年の刑が執行されます」「裁判は第一審、第二審というのがありまして、今日が第一審です」
《ずいぶん急展開な話、とは思ったのですが、すでに気が動転していますので、問いただすこともしませんでした》
「解説」
①もはやこの段階になると、多少の疑問や不審も役に立たない。見事なまでの物語がこの主婦の頭の中に出来上がってしまっている。「相手が妊娠」の一言も物語に迫真性を加えている。
②法律用語は、法律の素人に対しては事態の真実を隠すめくらましの道具としては最適である。ある程度は意味がわかるが、かといって本当のところはわからない。何か大変なことが起こりそうとの予感を持たせるのに効果的である。さらに、そんな言葉をあやつる人は権威の象徴のように思えてしまう。これも心理的に優位に立つ仕掛けの一つである。
海保博之 東京成徳大学教授
●はじめに
警察庁によると平成17年の1〜11月までの振り込め詐欺被害額は、226億円にもなる。
架空請求による振り込め詐欺は自分も一度、ひっかりそうになった。法律用語びっしりの請求メールをもらってびっくり仰天してしまった。すぐに学生にこんなものが来ているのだが、というと、さすがに学生はしたたかで、「自分にも来たことがあります。無視が一番です」と忠告してくれて、ほっとしたことを思い出す。
その後、こうした事件報道が多くなった頃、マスコミ関係で働いている娘宛に、葉書で同じような趣旨の請求手紙が来たこともある。娘に見せると、「思い当たるふしがある。電話してみる」と言う。「馬鹿なことをするな。無視が一番」と偉そうに忠告したやったことがある。これほどマスコミで騒がれるようになっても、事が自分に及ぶとあたふたとしてしまう。実に巧みな心理戦略が使われているからである。
本章では、まず一つの実例を追う形で、振り込め詐欺の心理戦略を解剖してみることにする、
以下、小活字ゴッシク体が事件の詳報である。その後に「解説」としたものが、筆者による心理学的なコメントである。なお、これは、朝日新聞朝刊生活欄2004年10月8日付け記事のための朝日新聞東京本社生活部・山田史比古氏による筆者へのメール取材原稿に基づくものである。
この事例分析の結果をふまえて、最後に、振り込め詐欺にあわないための対策のいくつかを提言してみる。
●まずは、発端の電話から
受話器を取ると、相手は、落ち着いた声の男性だった。
「今野道代さん(仮名;64)のお宅ですか。品川警察署の者です」
「解説」
①警察という権威をよそおうことで、相手より心理的に優位に立つ。説得事態では、何より大事なことは、いかに相手より心理的に優位な立場に自分を置いておくかである。名刺も、もらうと、名前よりも先に肩書きのほうに目がいくのも、自分と相手との心理的優劣関係を確認しようとの気持ちがあるからである。
②ここで、電話というメディアが使われているところにも注目されたい。電話では相手が見えない。おまけに、耳からだけしか情報が入ってこない。情報伝達手段としては電話はかなり信頼度の低いメディアである。
「泣き声で話したので、本当に息子からの電話だったと思った」(ある被害者の証言)も、電話の信頼度の低さゆえである。
したがって、この信頼度の低さを受信者側は自分なりに補う必要がある。つまり、電話は、感情的、知的な心理的介入があって成り立つホットメディアである。クールメディアの代表であるTVと比較されたい。
●びっくり仰天、目が点、頭真っ白
9月中旬の平日午前11時半ごろ。小平市の主婦今野陽子さんは、自宅にかかってきた警察の電話で突然、次女(28)の名前を聞かされ、驚いた。
「本日、板橋区大和町の10号線で、道代さんの車が接触事故にあいました」
「エッ、道代は?」
「解説」
①「娘の事故」と聞いただけで、母親は認知的にパニック状態になってしまう。頭真っ白、目が点。正常な思考、判断ができなくなる。これがねらいである。
まっとうな判断ができる状態なら、簡単に話のおかしさに気がつくはずなのに、認知的パニック状態では、それができない。そういう状態にさせるのが、彼らのとりあえずのねらいである。
②心理学の問題ではないが、プライバシー情報の遺漏問題も深刻である。コンピュータを使えば、断片的な個人情報をいとも簡単に寄せ集めて、個人情報バンクを作ることができてしまう。それが詐欺師の手に渡れば、話(物語)の信憑性を作り出す一つの貴重なお膳立てとして使われてしまう。
コラム「説得にかかわる心理学用語」*****
ここで、説得にかかわる心理学用語のいくつかを、「現代用語の基礎知識」(自由国民社)より抜き出しておく。
○説得的コミュニケーション
人をその気にさせるために行うメッセージの提供である。広告やセールスではとりわけ重要である。これを効果的なものにするには、四つの考えどころがある。(1)提供者側の専門性や信頼性、(2)コミュニケーションの内容のつくり方、例えば、長所のみ(1面提示)か長短あわせてか(両面提示)など、(3)受け手の何に訴えるか、例えば、不安や恐怖など、(4)メッセージの提示方法、対面しての話術や各種メディアの活用など。
○説得への抵抗
榊博文によると、説得への抵抗の高い人(説得されにくい人)とは、自分に自信のある人、不安傾向の低い人、攻撃性の高い人、そして女性より男性である。しかし、説得の仕方や状況によってあっさりと説得されてしまうことも、また逆に、説得とは反対の方向に変わってしまうブーメラン効果も知られており、説得も一筋縄ではいかない。
○段階的要請法
セールスでは、ともかくドアの中に入れてもらえたら勝ちである。ささいなことを受け入れてもらたら、もっと大きなことも受け入れてもらえる可能性が高くなるからである。少額の入会金を納めさせてから次第に高額の買い物をさせる商法がこの例である。
○特典除去法
最初に割引きなど客にとって優利な条件を提示して購入を決めさせてから、都合で割引き率を下げざるをえないと伝えて強引に購入させてしまう。逆に、購入を迷っている人に特典を提示して購入を決断させてしまう特典付加法もある。
******************************
●相手のペースに乗せられる
「これから順序立ててお話します。お気持ちは分かりますが、落ち着いてよく聞いてください」
《道代はどうなっているのか、私はそれをまず知りたかったのですが、相手はたたみかけるように話を続けてきました》
「解説」
①「たたみかけて」一気に自分たちのペースにのせるのは、「バナナのたたき売り方略」である。説得方略の一つである。話のつじつまが合わないところや不審なところをどんどん新しい話を展開することで覆い隠して、自分のペースに巻き込んでしまう。疑問、質問を封じてしまう効果もある。
②「お気持ちはわかりますが」の一言も見逃せない。これも、「慰め方略」と呼ぶにふさわしい説得方略の一つなのである。
過度に長時間、心理的に優位に立ったままだと拒否や反発や逃避をくらうこともあるので、その緩和をねらう。さらに、相手への共感を示すことで、説得事態を親和的な雰囲気にする効果もある。
●物語を作る
「相手は自転車に乗っていて、ハラダカツヨさんという28歳の女性です」「道代さんは会社やお友達に連絡するより、まずは実家の連絡してくださいとのことでしたので、ご連絡しました。お母様ですね?」
「はい」
《相手の説明に、はいはいと答えるしかありませんでした。ただ、道代は車の運転が好きではありません。話を聞きながら、半信半疑でした》
「道代さんはムライアイコさんの白いバンに乗って運手していたそうです。アイコさんはお友達ですか、同僚の方ですか。アイちゃん、と呼んでいるそうですが」
「アイコさんは同乗していたのですか?」
「今は分かりません。道代さんは、アイコさんをかばっているのか、お話しません」
《聞いているうちに、本当に道代が運転していたのだと思い始め、だんだんドキドキしてきました》
「もう一度、詳しく話を聞かせてください」
「解説」
①詐欺は、いかにして相手を架空の物語の世界に導くかが最大のポイントである。これに成功すれば、あとは、その思いこませの世界で、相手を自由自在に操れる。
この事例では、架空の物語を相手に作り出させる(思いこませる)ための仕掛けが巧みである。
個人情報に加えて、確認できない情報、一つは友人の車を運転、もう一つはその友人の名前を使って、物語の真実性を高めている。これなら、嘘がばれる心配はない。
一般に、物語作りには、次のような心理的な効果がある。
1)全体に一貫性を与える
・事の真実性を高める
・細部のおかしさを覆い隠す
2)よくわかる話しで、相手の知識を活用する
・巻き込み効果を狙える
・細部を相手(被害者)が勝手に補ってくれる
3)感情を揺さぶる
・感情を揺さぶって、冷静な判断をさせない
・感情移入をさせる
・納得させることができる
②思い込みが起こるのは、目の前の状況がどうなっているかについての認識と解釈がすばやく求められる時に発生しがちである。たとえば、
・知らない土地でのドライブでどっちにまがったら目的地につけ
るか
・火災報知器が鳴っている原因を知りたい
・名刺をもらえない初対面の人がどんな人を推測する
こんな場面に遭遇すると、その時その場での顕著な手がかりだけに基づいて、頭の中に状況の解釈のためのメンタルモデルを作り出し、それに基づいて自分なりの状況認識をしてしまう。これが思い込みである(図参照)。
それが、いつも不適切というわけではないが、誤ってしまうことも多い。なぜかというと、状況の中で目についた顕著な部分的な手がかりによって触発された頭の知識の一部を使った認識だからである。
振り込め詐欺では、自分たちに都合の良い思い込みの世界を強制的に作り出させる手がかりを物語の形で提示しているである。
●物語作りのだめを押す
「私は警察の者でお知らせをしています。今後は、検事からお聞きくださって、相談してください」
「ちょっと待って。道代はどこにいますか」
「品川の簡易裁判所に拘置されています。相手のハラダさんが東京海上火災の国選弁護人を雇われたので、電話を代わります」
陽子さんの耳に、遠くの方で、「今野道代さんのお母さんです」と電話を代わる声が聞こえた。電話口に出てきたのは、警察官と同じ高めの声音で、やはり穏やかな口調の男だった。
「弁護士のナカヤママサシといいます。道代さんはとても優しく、まじめな方で、大変なショックを受けています。お気の毒です」
道代さんは制限速度で走っていたが、自転車に乗ったハラダカツヨさんが横断歩道でないところを飛び出してしまった。幸い、車の正面ではなく横にぶつかったので、大けがではなかった。倒れただけだった。道代さんが車の窓を開けて「大丈夫ですか」と聞き、ハラダさんは「大丈夫」と答えた。道代さんは車から降りず、そのまま去った。
しかし、実は女性は妊娠6カ月で、縁石におなかをぶつけたため、念のために病院へ行った。すると流産だった。本人には本当のことは知らせていないが、夫は大変ショックを受けている。結婚して4年目で待ちに待った赤ちゃんだったらしい。夫は、「妻も悪いが、心からの謝罪をしていただかないと困る」と言っている」。
《女性が妊娠、と聞いた瞬間に、私の頭は真っ白になってしまいました。相手が道代と同じ28歳、ということも、ますますひとごとでないと思わせました》
ナカヤマの話は続いた。
「道代さんに非はなかったとはいえ、車から降りず、走り去ってしまったのでひき逃げになります。過失致傷で6年の刑が執行されます」「裁判は第一審、第二審というのがありまして、今日が第一審です」
《ずいぶん急展開な話、とは思ったのですが、すでに気が動転していますので、問いただすこともしませんでした》
「解説」
①もはやこの段階になると、多少の疑問や不審も役に立たない。見事なまでの物語がこの主婦の頭の中に出来上がってしまっている。「相手が妊娠」の一言も物語に迫真性を加えている。
②法律用語は、法律の素人に対しては事態の真実を隠すめくらましの道具としては最適である。ある程度は意味がわかるが、かといって本当のところはわからない。何か大変なことが起こりそうとの予感を持たせるのに効果的である。さらに、そんな言葉をあやつる人は権威の象徴のように思えてしまう。これも心理的に優位に立つ仕掛けの一つである。
手柄?ばなし
電話に
ぜんぜんとりあわなかったら
『動けなくしてやる』
てふ捨てぜりふ
当時手術退院したばかりの老父
『もう 動けないから来なくていいです』
通報したら
派手にパトカーが来てもうた
てふ
顛末
何度かコメしている
老父
何度も自慢する(゜∀゜;ノ)ノ
振り込め詐欺のがっかう
振り込め詐欺の企業化
なんてふ見出しが
出るやうな時代になりましたです
m(_ _)m