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模擬訓練」安全・安心の心理学

2013-10-30 | 安全、安心、

模擬訓練




           ―――危険を擬似的に体験することから学ぶ
●危険に遭遇することはほとんどない
特別に危険な仕事に従事している人でない限り、身の危険に遭遇することは、一生のうちでも数えるほどという人が大部分であろう。自分の個人的な体験でも、ヒヤリハット体験は数々あれど、身の危険を感ずるようなことは、幸いなことに皆無である。
そんなこともあって、ニュース報道で安全を脅かす数々の事件、事故、災害が取り上げられることの多い昨今ではあるが、それが明日は我が身に、と思う人もそれほど多くはない。多くの人は、それはどこか特別な世界で起こった絵空事との思いさえある。
そうなると、問題は、実際に危険に遭遇したときの対処の方策を身に付けることができないし、その必要性さえ感じないということにもなりかねない。そこで考え出されたのが、疑似体験、模擬訓練である。

●危険を疑似体験する
今、さまざまな危険を擬似的に体験させてくれる公共施設があちこちに出来てきた。インターネットで、「危険体験」をキーワードにして検索してみると、驚くほどの数のそうした施設が見つかる。
これらの施設での危険体験は、大きく2つのタイプに分かれる。
一つは、プチ危険体験である。消火器を使って火を消してみたり、
起震車にのって地震を体験したりするようなタイプである。
もう一つは、その技術進歩もあって最近特に増えてきたのが、仮想現実やシミュレーターを使ったものである。大画面3次元映像を使ったり、特殊な装置を装着してみずからが危険とあたかも実際に遭遇しているかのような疑似体験ができる。
いずれも疑似体験である。そこに限界はあるが、それでも体験しないよりは次のような点ではましである。
・さまざまな危険の存在を知ることができる
・恐怖を体感できる
・危険に対する感受性が高まる
学校教育の中でも、安全、安心教育に費やす時間割合は残念ながら、それほど多くはない。せめて、こうした施設の見学や、家族そろっての見学、体験をすすめてほしいものである。

●危険対処の模擬訓練をする
9月1日、防災の日である。毎年、大がかりな訓練がニュース番組で放映される。セレモニー(儀式)という感じを与えることもあるが、最近の安全、安心への危機意識の高まりもあってか、真剣味も随所に見られる、またそのような方向への変化の兆しもある。
これは、もっぱら行政主体の、いわばエキスパート訓練である。日頃の訓練の披露と、関連組織間の連携チェックが主になる。これはこれで大変に意義のある訓練であるが、ここで問題にしたいのは、「普通の人々の」危険対処の訓練である。

●まずは、知識を自分のものに
危険は、時代とともに変わる。というより、創造されると言ってもよいかもしれない。とりわけ、犯罪にはそうした面がある。
したがって、まずは、危険に関する知識を豊富なものにする必要がある。「知は力なり」だからである。
「ゲームで撃退 悪質商法」の見出しである新聞が紹介しているのは、消費者教育支援センター(財団法人)の試みである。すごろく方式で、さまざまな手口を示し対処の仕方を学んでもらう。
こうしたゲーム方式や、ドラマ仕立てやイラスト入りパンフレット配布での知識提供もよくおこなわれている。手を変え品を変えて、適度の頻度での知識提供、あるいは、知識収集が必要である。
何もかも学校に押しつけるわけにはいかないので、こうした趣向を前述した施設やマスコミなどで取り入れてほしいものである。

●危険への対処の訓練
最近、心臓発作に対する緊急救命措置として、自動体外式除細動器の一般人の使用が許可されるようになった。発作直後の措置が極めて有効であることがわかってきたからである。
問題は、この措置に限らないのだが、仮にその装置が使用できる状態にあったとしても、緊急時に、誰もが措置できるかどうかである。
消化器の使用や止血くらいなら、訓練なしでも表示に従えばなんとかなる。しかし、多くの緊急措置は、自分や周囲の人々も含めて、はじめて遭遇する危険状況でおこなうことになる。果たして、適切な措置ができるであろうか。注2**
一度か2度の緊急措置体験や防災、防犯体験はするとしても、その程度の体験では、実践にはとても使えない。訓練に訓練を重ねないと、手続的知識は有効なものにならないからである。
それでは、そうした危険対処体験は無駄かというとそんなこともない。適切な状況認識を導く知識として使えるし、自分はできなくとも誰に頼めば良いかへの示唆も得られる。少なくとも、机上での対処知識の学びよりも実践的である。
危険対処体験――訓練ではないことの認識が必要――の限界をきちんと知った上での方策としては、危険が想定されるところでは、対処方策をマニュアル化して表示しておくことである。その好例は、消火器である。操作のシンプルさもさることながら、その使い方の表示もシンプルで、これなら、誰もがその時に使える。なお、その時その場にいた人が緊急措置をしなくとも、その訓練を受けているエキスパートに速くきてもらうための手順を示すことも大事である。
(K)

注1 防災関連施設 のリストについては、「子どもの危険回避研究所」のHPを参照されたい。

注2 なお、自分で救命措置ができる自信がある人のために、こんな法律的バックアップがあることを念のため紹介しておく。人助けは、できるところではやるのが社会的気義務である。
(緊急避難)
第37条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
2 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。
○民法第698条(緊急事務管理)
管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。








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