心の風景 認知的体験

癌闘病記
認知的体験
わかりやすい表現
ヒューマンエラー、安全
ポジティブマインド
大学教育
老人心理

まねて学ぶ

2008-05-06 | 教育

発想王をめざせ(17)


模倣ーーー真似られる力こそ創造の基盤


ポイント******

1)真似るのは高度な能力がある証拠

2)見て真似るが学びの基本

3)たっぷり真似てから自分なりのものを作  り出す

********************


●真似る

 真似ることはやさしいことのように思われているふしがある。

 しかし、たとえば、声でも振る舞いでもよい。小泉首相の真似をしてみてほしい。いかに難しいかがわかるはずである。

 また、今話題の、人間のように歩くロボット(ヒューマノイド・ロボット)も、ただ、人の歩く真似をしているに過ぎないのだが、それを作った人の血のにじむような苦労話を聞くと、びっくりしてしまう。

 模倣は、それをする側には、かなり高度な能力を要求するのである。猿真似ができるのは高度な知能を持つ猿だからであり、犬猫には模倣はできない。


●真似るための力(模倣力)

 では、模倣力を作リあげているものは何であろうか。たとえば、技術の世界を例にとって考えてみる。

 一つには、真似るに値することを見抜く力がある。

 たとえば、外国産の技術は多種多彩であっても、その中から真似るに値する技術を見抜けたものが、日本の社会で根づく技術を開発できたのである。ここで良い模倣と悪い模倣が決まる。

 2つは、何を真似ればよいかを見抜く力である。

 コンピュータを漠然と眺めていても真似はできない。どこに技術の心髄があるかを突き止められる力のある人だけが模倣できる。

 3つは、それを実現できる力である。

 一つの物を作り出すためには、材料の調達から組み立てまでを可能にする技術的な力量がなければならならい。

 ここでは、技術の模倣力を想定してみたが、たとえば、「生徒が教師の」「部下が上司の」「弟子が師匠の」言動や技能の模倣力でもこの3つの力が必要である。


●守破離

 では良質の模倣をするにはどうしたらよいのであろうか。そのヒントは、伝統技能の習得過程「守破離」にある。

 伝統技能の習得の初期段階ーー「守」の段階ーーでは、長期間にわたり、時には師匠と起床をともにしながら、師匠の立ち居振る舞いを見よう見真似で模倣する。

 ここでは、自分がいずれ到達すべき目標が、師匠の技能として常時目に見える。その中からその時自分ができそうなことを「盗んで」一つ一つ身につけていくことになる。

 大事なことは、教えてもらうのではなく、自らが学びたいものを「盗む」ことである。盗めなければ模倣力がないことになる。

 そして、時折、学んだものを「破ってみる」。そして学びの場を「離れて」自分なりの形を作ってみる」。それが、「守破離」の「破離」である。これができて、模倣は創造へとつながることになる。

 OJT(On the Job Training) を今一度、こうした観点から点検してみてはどうであろうか。


 ***本文62行


実習「真似をする」********

 次の絵をみながら模写してみてほしい。


絵 別添



「解説」

 似顔絵の模写では洒落にもならないが、本物にも思いをはせながらの模写も一興かと思う。

 薄紙をあててその上からなぞるのはコピー、イミテーションである。見て真似をするのとくらべるとはるかに楽である。

 模写は、画家養成の基礎訓練の一つらしい。それも名画の模写に限るらしい。「良いもの、本物をみて真似る」のは、やがてやらなければならない創造活動のための基礎訓練なのだ。

******************


解説「模倣によって伝統技能を習得する」*

 伝統技能の習得過程を見事に分析した生田久美子著(1987)「”わざ”から知る」(東大出版会)から、模倣することの大切さを説く言説のいくつかを引用させていただく。


●現代は、昔風の修業、何だかわからないけど、それではいかんと言われて、何べんも何べんも繰り返すということが、ちょっと欠けているような気がしますね(竹本津太夫)

●役者が芸を教わるってことは、正面切って教わりに行く、というより、見て覚える、ってことが本筋ですね。ほくなんか、若いころは舞台の袖の後見溜りで、いつも黒衣着て常後見(じょうごけん)してて、いい役者の芸を見習ったものです。(中村勘三郎)

●通い弟子より内弟子の方がけいこしてもらえないのです。---けれども内弟子というものはいろいろ特典がございましてね。つまり聞く機会が多いわけです。それで、私は生きた芸を聞けると言うのでございます。---内弟子にいた6年間に習っていない曲も覚えました。聞き覚えでございます。(富山清琴)

***********************************************


解説「伝統技能の習得と学校教育とを比較してみると」*************


 

      学校  伝統技能


教える内容 広範  限定


教え方   意図的 無意図的

      言語的 身体的


学び方   受動的 主体的

      要素的 全体的

      


最新の画像もっと見る

コメントを投稿