自由意志の問題は、心理学にとって最もやっかいな問題であり続けてきましたし、これからもそうだと思います。
結論から言うと、心理学では、自由意志は研究の対象から巧妙にはずしてきました。なぜなら、心理学を科学にするためには、どうしても、自由意志の介入は邪魔になるからです。
たとえば、心理実験の場面でも、被験者は、実験者に「自由に」逆らうことができます。本当は見えたものも見えないと報告する自由があります。
19**年頃に盛んに行なわれた力動的知覚の実験で、実際にこんなことが起こっているのではないかと疑われる現象がみられました。口に出すことがはばかれるタブー語を瞬間的に呈示して見えたか見えないかを問う実験です。被験者は見えないと報告するときでも、実は、皮膚電気反射(GSR;galvanic skin response)には、見えていることをうかがわせる生理的な反応が起こったのです。被験者は、恥ずかしいので、「嘘」をついているのではないかと疑われました。
結局、無意識の世界で起こる、心と身体の乖離現象の一つということになりましたが、こんなところに、自由意志の「心理実験上の」困った問題の一端をみることができます。
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