日本の12人のパイロット列伝である。
最終章は、ライト兄弟以来百年間の航空機発達史を語る。
たとえば、冒頭の「ハイジャック余話」。1973年、日本航空ジャンボJA8109号機、アムステルダム発、東京行きがハイジャックされた。その副操縦士、高木修の怒りに燃える87時間を伝える。ちなみに、これまでに日本航空は10回、全日空は9回ハイジャックされているというから、意外と多い。
あるいは、飛行機を町づくりに役立てた坂口行治、米国はサンノゼで飛行学校を経営する脇田祐三など、大空と翼に魅せられた男たちの一途な思いと行動が描かれる。海難に際して深夜に出動する航空救難団の活躍もある。
ヒコーキ野郎ばかりではない。紅一点、堀越深雪も紹介される。サン=テグジュペリを愛する少女は、親の猛反対、厳しい訓練、女性パイロット敬遠の風潮をくぐり抜けて、母校の航空大学校の操縦教官となったのだ。
読んでさわやかな話ばかりである。初志貫徹する彼らの実行力は頼もしいかぎりだ。乗客の命をあずかる機長は、こうでなくてはならない。
ただ、少々気になるのは、十五年戦争に係る記述である。日本航空の元機長、三橋孝の小伝はその従軍時代にふれるが、「開戦当初の日本軍による破竹の勢いだった戦局は陰をひそめ」「日本不敗の神話が崩れ去った」といった調子で、戦中に流布した紋切り型の残響がある。併せて語られる敗兵の悲惨な体験から学んでいるならば、「日本軍による破竹の勢い」が侵攻先の住民にどのような結果を与えたか、あるいは「不敗の神話」なぞ彼我の戦力の差からして最初から幻想にすぎなかったことを身をもって知ったはずだ。承知のうえで、あえてステレオタイプを採用しているのは、軍人でも軍属でもなく嘱託だった、という立場からくるものか。あるいは、超然と虚空を行くパイロットの特性からくるものか。
□徳田忠成『機長席への招待状』(イカロス出版、2000)
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最終章は、ライト兄弟以来百年間の航空機発達史を語る。
たとえば、冒頭の「ハイジャック余話」。1973年、日本航空ジャンボJA8109号機、アムステルダム発、東京行きがハイジャックされた。その副操縦士、高木修の怒りに燃える87時間を伝える。ちなみに、これまでに日本航空は10回、全日空は9回ハイジャックされているというから、意外と多い。
あるいは、飛行機を町づくりに役立てた坂口行治、米国はサンノゼで飛行学校を経営する脇田祐三など、大空と翼に魅せられた男たちの一途な思いと行動が描かれる。海難に際して深夜に出動する航空救難団の活躍もある。
ヒコーキ野郎ばかりではない。紅一点、堀越深雪も紹介される。サン=テグジュペリを愛する少女は、親の猛反対、厳しい訓練、女性パイロット敬遠の風潮をくぐり抜けて、母校の航空大学校の操縦教官となったのだ。
読んでさわやかな話ばかりである。初志貫徹する彼らの実行力は頼もしいかぎりだ。乗客の命をあずかる機長は、こうでなくてはならない。
ただ、少々気になるのは、十五年戦争に係る記述である。日本航空の元機長、三橋孝の小伝はその従軍時代にふれるが、「開戦当初の日本軍による破竹の勢いだった戦局は陰をひそめ」「日本不敗の神話が崩れ去った」といった調子で、戦中に流布した紋切り型の残響がある。併せて語られる敗兵の悲惨な体験から学んでいるならば、「日本軍による破竹の勢い」が侵攻先の住民にどのような結果を与えたか、あるいは「不敗の神話」なぞ彼我の戦力の差からして最初から幻想にすぎなかったことを身をもって知ったはずだ。承知のうえで、あえてステレオタイプを採用しているのは、軍人でも軍属でもなく嘱託だった、という立場からくるものか。あるいは、超然と虚空を行くパイロットの特性からくるものか。
□徳田忠成『機長席への招待状』(イカロス出版、2000)
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