JR四国 三原から東京都区内ゆき 片道乗車券

1993(平成5)年2月にJR四国予讃線の今治駅で発行された、JR西日本山陽本線の三原駅から東京都区内ゆきの片道乗車券です。


   

青色JR四地紋のA型一般式大人・小児用券で、高松印刷場で調製されたものです。


   

裏面です。券番の他、東京都区内下車前途無効の注意書きが記載されています。

御紹介の券は今治駅で発行されていますが、発駅が三原駅という他駅発の片道乗車券であり、また、発行駅がJR四国の駅であるのに対し、発駅がJR西日本の駅であるという、かなり特徴のある常備券になります。
今治駅と三原駅の間には瀬戸内海があり、直線距離でも40km程度離れていますが、このような乗車券が設備されていた理由は、当時の付近の交通事情にあったようです。

この券が発売されていた当時、今治駅から約1Km、バスで約5分のところに今治港フェリーターミナルがあり、ここから三原港までの三原・今治国道フェリーという航路がありました。
この航路は昭和海運と瀬戸内海汽船の2社が共同運航していたフェリー航路で、最盛期には従来型のフェリーと高速船がそれぞれ1時間間隔で1日18往復運航されており、航海時間はフェリー1時間45分、高速船60分という利便性がありました。
そのため、今治から大阪・名古屋・東京方面へ行く旅客は、予讃線と本四備讃線・宇野線を経由して山陽本線の岡山駅に出てから新幹線に乗るよりも、フェリーで三原まで海を渡り、そこから新幹線で東京まで行く方が時間的に有利であったために需要が高く、ご紹介のような全く自社線(JR四国)を経由しない片道乗車券の常備券が設備されていたものと思われます。

しかしながら、1999(平成11)年にしまなみ海道が全通すると、いままで船で海を渡っていた旅客は、橋を渡って福山駅まで1時間半、広島まで2時間半で走る高速バスにシフトしてしまうため、三原・今治国道フェリーは航路廃止に追い込まれます。当然ながら、今治駅から三原駅を経由して東京方面へ向かう旅客の需要は皆無になり、御紹介の券の需要はなくなっているものと思われます。

航路廃止になった後も、同航路はせと観光ボートという会社に引き継がれて高速船のみが運航されていましたが、こちらも2007(平成19)年に廃止されているようです。

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