JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
10年以上前に御紹介した券も再度御紹介しようかと思います。
古紙蒐集雑記帖
西武鉄道 高田馬場駅発行 振替乗車票 ~その2
前回エントリーで西武鉄道高田馬場駅で発行された、昭和20~30年代のものと思われる振替乗車票を御紹介いたしましたので、現行の振替乗車票を御紹介したいと思います。
2020(令和2年)7月に新宿線の高田馬場駅で発行された振替乗車票です。白色無地紋のA型千切り軟券になっています。発行駅名は記入式となっており、管理人はこの様式となってから、駅名が印刷されているものを見たことがありません。
最近、首都圏大手の私鉄では、振替輸送が実施されても振替乗車票は発行せず、振替先の事業者においても振替区間に有効な定期券もしくは乗車券を提示すれば乗車できるようになっているのが実態で、路線バスに振り替えるときなど、請求しなければ振替乗車票が発行されないことが多いようです。そのような理由からでしょうか、同駅のようなターミナル駅であっても、駅名の印刷された券ではなくなっているようです。
西武鉄道 高田馬場駅発行 振替乗車票 ~その1
発行された時期は不明ですが、西武鉄道新宿線の高田馬場駅で発行された振替乗車票です。
白色無地紋のB型券となっています。
券面を見ますと、發・乘・驛などの文字が見られますので、昭和20年代から30年代初頭ごろに発行されたものではないかと思われます。
また、着駅を記入する部分の「驛」と発行駅名部分の「駅」が同じ文字であっても片方が旧字体になっており、活字が変換される過渡期のものなのかもしれません。
「着駅」の印刷が「著駅」となっています。「著」という漢字の意味は「書物を書きあらわすこと、また、その書物、著書」や「明らかであること」などであり、意味合いとして「ちゃくえき」にはなりませんので、活字ミスなのでは無いかと思われます。
ただし同じ記載方法の振替乗車票が京浜急行でも発行された実績があり、これが活字のミスなのかどうかは断定できません。
裏面です。券番の他、着駅で改札掛に渡す旨の案内文がありますが、こちらは「著駅」ではなく「着駅」と印刷されています。
仁賀保駅発行 仁賀保から110円区間ゆき片道乗車券・急行券 連綴券
前回と前々回エントリーで国鉄新潟印刷場で調製された乗車券と急行券の連綴券をご紹介いたしました。ご紹介してまいりましたように、連綴券は一般式乗車券と急行券の2枚を1枚にまとめたような様式ですが、たまにそうではない様式の券が出てくることもありました。
1977(昭和52)年12月に羽越本線仁賀保駅で発行された、仁賀保から110円区間ゆき片道乗車券と急行券の連綴券です。
青色こくてつ地紋のD型大人専用券で、新潟印刷場で調製されたものです。
左側乗車券部分は同駅から110円区間ゆきの金額式片道乗車券で、右側急行券部分は同駅から100kmまでの急行券となっています。
前回ご紹介いたしました大館駅から弘前駅までのものと同じ近距離用の券で、当時の110円区間は営業キロ11~15kmの区間帯になります。恐らく、この距離帯にある急行停車駅が営業キロ14.2kmの羽後本荘駅と11.3kmの象潟駅が該当し、どちらの着駅に対しても発売できるように金額式券の様式が採用されたものと思われます。この券が発売された当時、国鉄の急行料金に50kmまでの区間がありませんでしたので、大館の券と同様に100kmまでの区間が適用され、近距離であるがため、運賃の110円よりも急行料金400円と高くなってしまっています。
また、乗車券が発売当日限り有効の通用期間が1日間であるのに対し、急行券は1回限り2日間有効の通用期間が2日間となっており、発行日の翌日に未使用である場合、乗車券は無効であっても急行券だけは使用できることになります。
列車が頻繁に運転されている首都圏ではこのような近距離区間に優等列車を利用するという選択肢はさほど多くはないと思いますが、運転本数の少ない区間では、各駅停車を待つ時間がかなり長いため、「しかたなく」優等列車を利用しなければならない機会が少なくはないと思います。そのため、このような近距離の区間でも急行列車を利用する需要が多く、乗車券と急行券を発券する手間を合理化し、近距離用の連綴券が設備されていったのでしょう。
裏面です。急行券部分は券番のみですが、乗車券部分については券番の他に「仁賀保から110円」の表記と発行駅名が記載されています。これは、新潟印刷場の金額式券がこのような様式になっていたことに拠るものと思われます。
参考までに、発駅はご紹介の券の着駅である羽後本荘駅のものになりますが、当時の新潟印刷場で調製された金額式券を御紹介いたしましょう。
同印刷場の金額式券は発行駅名が裏面に印刷され、裏面には発行駅名のほか、発駅からの金額区間についての記載があり、恐らくこの様式に倣ったものと思われます。
しかしながら、当時はワンマン運転や乗車券を料金機に投入するようなことは無かったのに、なぜ裏面にまで金額表示をしたのか、理由は不明です。
大館駅発行 弘前ゆき 片道乗車券・急行券連綴券
前回エントリーで南小谷駅発行の東京都区内ゆき片道乗車券・急行券連綴券をご紹介いたしましたので、今回は同じ新潟印刷場で調製された乗車券と急行券の連綴券ですが、近距離用のものをご紹介したいと思います。
1977(昭和52)年6月に奥羽本線大館駅で発行された、弘前ゆきの乗車券と急行券の連綴券です。
青色こくてつ地紋のD型大人専用券で、新潟印刷場で調製されたものです。
左側乗車券部分は同駅から弘前ゆきの片道乗車券で、右側急行券部分は同駅から100kmまでの弘前駅まで対応する急行券となっています。
大館駅から弘前駅までは営業キロ44.2kmの区間で、この券が発売された当時は国鉄の急行料金に50kmまでの区間がありませんでしたので、100kmまでの区間が適用され、近距離であるがため、運賃の340円よりも急行料金400円の方が高くなってしまっています。同駅から100kmまでということは、営業キロ81.6kmの青森駅まででも対応できる距離帯になります。
また、乗車券が発売当日限り有効の通用期間が1日間であるのに対し、急行券は1回限り2日間有効の通用期間が2日間となっており、発行日の翌日に未使用である場合、乗車券は無効であっても急行券だけは使用できることになります。
同区間を急行列車利用とするとかなり割高感がありますが、大館と弘前はともに秋田県と青森県の中堅都市であることと、大館市は県庁のある秋田市や県南部への交通の便は悪く、娯楽や観光・商業・医療の面では秋田県内よりも、隣県である弘前市のほうが繋がりが強いという事情があり、都会のように運転本数が頻繁でない区間では、時間的要素から利用する列車が限られるということから、連綴券が発売されるほどの需要があったものと推測されます。
裏面です。注意事項は特段ありませんので、券番しかありません。
南小谷駅発行 東京都区内ゆき 片道乗車券・急行券連綴券
1977(昭和52)年8月に、大糸線南小谷駅で発行された、東京都区内ゆきの片道乗車券と急行券の連綴券です。
青色こくてつ地紋のD型大人専用券で、新潟印刷場で調製されたものです。
左側乗車券部分は同駅から東京都区内ゆきの片道乗車券で、「岡谷・三鷹経由」となっております通り、大糸線から篠ノ井線を経由して中央東線に至る乗車経路になっています。
また、右側急行券部分は同駅から201km以上の新宿駅まで対応する急行券となっています。
当時、南小谷駅を発車する急行アルプス号は、前夜23時45分に新宿駅を発車する夜行のアルプス13号が南小谷駅に翌朝7時26分に到着し、上りアルプス4号として同駅を9時58分に発車する列車と、やはり前夜に新宿駅を23時20分に発車する夜行のアルプス11号が翌朝5時56分に3駅手前の信濃森上駅に到着し、日中は信濃大町に回送されたのではないかと思いますが、夜行のアルプス14号として同駅を22時00分に発車する列車の2本がありましたので、この券はこれらの列車用として設備されていたものと思われます。
裏面です。急行券部分の裏は券番のみですが、乗車券部分には一般的な片道乗車券と同様、券番の他に東京都区内各駅では下車前途無効である旨の注意書きがあります。
発駅が違いますが、新潟印刷場で調製された一般的な東京都区内ゆきの片道乗車券です。
基本的な記載内容は同一です。
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