京のおさんぽ

京の宿、石長松菊園・お宿いしちょうに働く個性豊かなスタッフが、四季おりおりに京の街を歩いて綴る徒然草。

月夜の散歩

2011-04-01 | インポート

  江戸時代の俳人、森川許六はひねる。

 

     清水の上から出たり春の月

 

 与謝野晶子は詠む。

 

     清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢う人みなうつくしき

 

 春はあけぼのと、清少納言は言ったという。

 春は明け方こそ趣があるという。

 が、春の夜、月夜もまた良いものだろう。

 「清水の上から」というのは、要するに「東山の上」にということだろう。

 森川許六は、松尾芭蕉の門人だった。

 

     布団着て寝たる姿や東山

 

 という句を詠んだ服部嵐雪も、芭蕉の門人である。

 東山の寝姿が月に照らされているのも、趣だ。

 与謝野晶子の短歌には、夜桜見物のにぎやかさを感じる。

 ただ、春の月は、

 

     ♪月は朧に東山~

 

 になることも多い。

 よく知られるこの祇園小唄は、長田幹彦の作詞である。

 長田幹彦は、明治~昭和に活躍した文人である。

 祇園モノを多く書いたが、時代の流れの中で忘れられていった人物である。

 名前は消えたが、フレーズは残り続けている。

 京都を訪れた夜、宿の部屋でのんびり、というのも良し。

 しかし、外へ出て見て、空を眺めるのもまた一興。

 どこかのお寺に入るわけではなしに、のんびり町を逍遥してみては。

 昼間の京都とは別の景色に出会えることでしょう。

”あいらんど”