花は綻び、そして咲く。
京都にまた、さくらの季節がやってきた。
ほんのひと時の盛りを、多くの人が楽しむことだろう。
平安神宮に円山公園。
どちらも京都のさくらの名所である。
この二つのさくらの名所は、京都近代化のシンボルといっていいように思う。
ともに、明治~昭和の名庭師、七代目小川治兵衛の作庭である。
明治の世になり、天皇を失い、都市として衰退しかけた京都は、その失地回復を図った。
その成果が、この華やかな空間である。
そんな風に思う。
同じ手による庭とはいえ、趣はずいぶんと違う。
平安神宮のさくらは、神苑という閉じられた空間に沢山の枝垂ざくらがぎゅっと詰め込まれている。
濃密なほどのさくら模様で、川端康成や谷崎潤一郎もこの風景を作品の中で描いている。
対する円山公園は、どこからどこまでが園地なのかが判然としない、開放の空間である。
そこに多くのさくらが散らばっていて、そのリーダー然として、一本の枝垂ざくらが偉容を誇っている。
どちらも枝垂ざくらが主役なのが、共通点だろうか。
しかし趣がまるで違うのが、やはり面白い。
ところで、さくらの語源の一説に、“咲く”+“ら(群)”というものがある。
花が咲き群れているということだろう。
その木の枝々が花に溢れる姿を思えば、なるほど、という感じである。
”あいらんど”