京のおさんぽ

京の宿、石長松菊園・お宿いしちょうに働く個性豊かなスタッフが、四季おりおりに京の街を歩いて綴る徒然草。

故郷へ帰る

2011-07-10 | インポート

 キキョウの季節である。

 あの鮮やかな紫が、夏に涼しげである。

 だが、キキョウは秋の七草だ。

 よく分からない。

 

 京都でキキョウといえば、廬山寺である。

 廬山寺は、京都御苑の寺町通を挟んだ東向かいにある。

 この廬山寺は、キキョウで有名であるのは確かだが、それ以上に、紫式部所縁の寺として知られている。

 いいや、それは正確ではない。

 廬山寺というお寺自体と、紫式部とは、一切関係がない。

 現在廬山寺が立てられている土地には、かつて紫式部の邸宅があったといわれている。

 そういう意味で、縁があるということだ。

 紫式部の邸宅をお寺に改めたとか、そういう話でもない。

 廬山寺というお寺は、紫式部の生まれる前より、京都に存在したのである。

 応仁の乱で焼失後、この地に移ってきたのである。

 そのときには、ここが紫式部の邸宅跡だ、などという認識はまるでなかった。

 後の考証でそれが判明したのである。

 別に批判ではない。

 いかにも歴史を感じるエピソードだ、ということである。

 

 いずれにしても、源氏の庭と呼ばれる庭は、なかなか良い。

 キキョウが咲き誇る庭だ。

 庭に石碑が建っていて、源氏の庭、と彫られている。

 新村出の揮毫だそうだ。

 新村出は、広辞苑の編者である。

 だからどうということもないのだが。

 いずれにしてもこの庭へは、キキョウの季節に行くのが良い。

 紫の花が、やっぱり夏に涼しげだ。

 秋の七草だが。

 キキョウは野の花というイメージがあるが、庭園花として使われても、なかなか良いものだ。

 ちなみにキキョウは一部の品種が絶滅危惧種だという。

 そういう目で見ると、何かはかない気もする。

”あいらんど”