キキョウの季節である。
あの鮮やかな紫が、夏に涼しげである。
だが、キキョウは秋の七草だ。
よく分からない。
京都でキキョウといえば、廬山寺である。
廬山寺は、京都御苑の寺町通を挟んだ東向かいにある。
この廬山寺は、キキョウで有名であるのは確かだが、それ以上に、紫式部所縁の寺として知られている。
いいや、それは正確ではない。
廬山寺というお寺自体と、紫式部とは、一切関係がない。
現在廬山寺が立てられている土地には、かつて紫式部の邸宅があったといわれている。
そういう意味で、縁があるということだ。
紫式部の邸宅をお寺に改めたとか、そういう話でもない。
廬山寺というお寺は、紫式部の生まれる前より、京都に存在したのである。
応仁の乱で焼失後、この地に移ってきたのである。
そのときには、ここが紫式部の邸宅跡だ、などという認識はまるでなかった。
後の考証でそれが判明したのである。
別に批判ではない。
いかにも歴史を感じるエピソードだ、ということである。
いずれにしても、源氏の庭と呼ばれる庭は、なかなか良い。
キキョウが咲き誇る庭だ。
庭に石碑が建っていて、源氏の庭、と彫られている。
新村出の揮毫だそうだ。
新村出は、広辞苑の編者である。
だからどうということもないのだが。
いずれにしてもこの庭へは、キキョウの季節に行くのが良い。
紫の花が、やっぱり夏に涼しげだ。
秋の七草だが。
キキョウは野の花というイメージがあるが、庭園花として使われても、なかなか良いものだ。
ちなみにキキョウは一部の品種が絶滅危惧種だという。
そういう目で見ると、何かはかない気もする。
”あいらんど”