ローリングストーンズ 2018/10/17 17:05

アメリカ現地時間15日朝、民主党の有力議員であるエリザベス・ウォーレン上院議員は自身のTwitterでトランプ大統領の「ポカホンタス」口撃に対する反撃に打って出た。
7月に行われた共和党の集会で、同議員がネイティヴ・アメリカンの祖先を持つと家系を偽っていると、トランプ大統領が「ポカホンタス」という言葉で揶揄(ポカホンタスとは、17世紀の先住民族女性の名前。一部の先住民からは差別語とみなされている)。さらに「ウォーレンがDNA鑑定を受けないことに百万ドルかける」と言い、万が一鑑定を受けたとしても「彼女が主張するネイティヴ・アメリカンの血筋など出ないだろう」と発言。「もし君が鑑定を受けてインディアンだと証明されたら、トランプの名前で君の好きな慈善団体に百万ドル寄付する」と、そのときトランプは明言している。
そしてウォーレンはDNA鑑定を実施し、その結果真実だったと発表したのだ。
Twitterにアップされた5分30秒の動画には、オクラホマに住む共和党員の家族とかつての雇用主たちのインタビュー、DNA専門家による鑑定結果が映し出されている。
再選に向けて2桁の優勢を保つウォーレンは、中間選挙が終わるまで2020年の大統領選挙へ出馬するかどうか決定しないと言っているが、最近の広報活動を見ると、ウォーレン上院議員は既に大統領選を見据えた地固めを始めているという印象を受ける。
大統領選のキャンペーンでの必需品である政治信念についての書籍も出版し、雑誌にも登場。過去1年間、彼女が最も時間を割いたのが奉仕活動、民主党への寄付活動、そして民主党代表として全米50州を遊説することだったと、10月14日付けのワシントン・ポスト紙が報じた。
この動画とDNA鑑定の結果は、9月に行われたボストン・グローブ紙の徹底的な調査の後、間髪入れずに公表されている。これにより、ウォーレンが主張するネイティヴ・アメリカンの祖先を持つという事実が、かつてウォーレンが教鞭をとっていたハーバード・ロー・スクールなどの法律学校4校での雇用を左右しなかったことが明らかとなった。この記事に関連したるある取材で、ウォーレンはネイティヴ・アメリカンの血統を公にする決断は、彼女の祖母が死去した頃に自分の家族への思いが新たになったことと関連していると語っていた。
ペンシルベニア州立大学で、のちにハーバード大学で紅一点だったウォーレンは、ボストン・グローブ紙に、同僚の中で自分を主張する特徴として、ネイティヴ・アメリカンの血筋を隠すのではなく、強く主張する必要にかられたと述べた。「うつむいたままでいるか、『そう、これが私よ。あなたたちとは違うけど、これが私なの』と言うかのどちらかよ」と。
15日に動画を公開する前に、ウォーレンはDNA鑑定の結果をボストン・グローブ紙に提供した。この鑑定を行ったのがスタンフォード大学のカルロス・ブスタマンテ教授で、同教授の鑑定方法は商業的なDNA鑑定の基礎テクノロジーとして使われている。この鑑定結果でウォーレンの6〜10世代前にネイティヴ・アメリカンの血筋が存在したことが明らかとなった。
一方、ホワイトハウスのケリーアン・コンウェイ補佐官は、この鑑定の科学的根拠を疑問視する手法に出た。
「出てきた結果によって、ジャンク・サイエンスを選んだり、根拠のある科学を選んだりする人が多いようだ。私自身はDNA鑑定に注目したことがないし、全く興味が沸かない」がコンウェイの発言である。
さらに、ウォーレンの動画はロサンゼルス・タイムズ紙の衝撃ニュースの直後に公表されている。同紙の記事は、下院の院内総務を務めるケヴィン・マッカートニー(カリフォルニア州共和党議員)の家族が、チェロキー族の血筋という胡散臭い主張で利益を得た方法をまとめたものだった。マッカートニーの義理の兄弟は、「Northern Cherokee Nation」の一員だと主張した後、少数民族に対する連邦契約によって700万ドル以上を受け取ったという(ロサンゼルス・タイムズ紙によると、この団体は連邦も州も「正当な部族とは認めていない。連邦が認めている部族のリーダーたちによる詐欺行為とみなされている」ということだ)。
今回のウォーレンのDNA鑑定は2011年のバラク・オバマの出生証明書公開の決断を思い起こさせる。これはトランプの「オバマはアメリカで生まれていない」という人種差別的な誤った主張に反応したものだった。オバマの最高戦略責任者デヴィッド・アクセルロッドは15日、ウォーレンの決断がトランプの口撃を抑えるのではなく、さらに刺激する可能性を懸念する談話を出した。
http://rollingstonejapan.com/articles/detail/29212