QJWeb3/6(日) 11:00

L.M.モンゴメリ不朽の名作『赤毛のアン』に、大胆な現代的アレンジを加えたNetflixドラマ『アンという名の少女』シーズン3第9話、いよいよ次が最終回である。すれ違いつづけるギルバートとアンの想いはどうなるのか? ゲーム作家(『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『変顔マッチ』など)でライターの米光一成による全話レビュー。
残念なことにシーズン3で打ち切り
『アンという名の少女』シーズン3最終回直前の第9話「深淵なる闇」。
アンとギルバートの恋の行方、そしてミクマク族への「文化的虐殺」に焦点が絞られてきた。
『アンという名の少女』第10話でシーズン3は終わる。そして残念なことにシーズン3で打ち切りなのである。
シーズン1の第8話レビューでも書いたが、打ち切りの理由は、はっきりしない。(関連記事「ここで終わりなんてあり得ない『アンという名の少女』最終回の衝撃からまだ立ち直れない」参照)
シーズン継続の嘆願運動なども起こったが、再開するというニュースはない。
シーズン3が配信開始されたのは2019年。すでに3年が経ってしまっている。カクウェットやミニー・メイなど幼い子供も多く登場する本作の再開は難しいだろう。
ちなみに当時13歳でカクウェットを演じたギャワンディーヨ・ターベルも、もうすぐ16歳。
「Light at the End」のミュージックビデオで、堂々たる歌声を聞かせてくれる
アンの手紙は、ギルバートには届かない
第9話。
ようやくギルバートへの愛を確信したアン。
「私と同じ間違いを犯してはダメ」とマリラに助言され、ギルバートの家に告白しに行く。だがギルバートはいない。
アンは、手紙を書いてテーブルに置く。だが、手紙は、風で床に落ち、ステイシー先生のバケツの裏に貼りつき落ち、戻ってきたギルバートの足の裏に貼りつき、外でぐちゃぐちゃになってしまう。
アンの手紙は、ギルバートには届かない。
カナダ政府は、1867年に「インディアン法(Indian Act)」を施行。先住民族を服従させるための法律だ。この法律を通じて、寄宿学校の制度を作り上げる。
先住民族の信仰や文化や生活を「野蛮」だと切り捨て、「野蛮人に囲まれている子供たちを救う」という発想で、親から引き離した。「不登校者対応官」を任命し、子供を逮捕し、学校に連れ戻す権限が与えられた。
役人が「君の母さんにそんな権利はない」と言っているのは、こんな「文化的虐殺」の制度があるからだ。
カクウェットの父と母は、アンたちに助けを求め、アンとマシューは寄宿学校へ向かう。こんなひどいことは「何かの手違い」に違いないと考えるが、「手違い」ではない。
寄宿学校側は、断固としてカクウェットを返そうとしない。それどころか会わせようともしないのだ。
戻ってきたアンは、マリラから「ギルバートがウィニフレッドにプロポーズする」と聞く。
アンは事を確かめるために、ギルバートの家に行くが、ギルバートはすでにシャーロットタウンに出かけたあとだった。
なかなかギルバートへの愛に確信が持てず、さらにずれ違いを繰り返し、最終話までやきもきさせるアンだが、モンゴメリーの『赤毛のアン』シリーズのアンも、やきもきさせる。
何しろ、デイヴィ(マリラが引き取った少年)から「ギルバートが死にかけてるよ」と聞かされて初めて、自分の気持ちに気づくのだ。
〈そして今、ギルバートは死の淵をさまよっているのだ!
聖書に天啓の書があるように、誰の人生にも、天啓の書がある。アンは、大嵐と漆黒の闇のなか、苦悩に一睡もしなかったこの痛恨の夜、天の啓示を受けたのだった。私はギルバートを愛している──今までずっと彼を愛してきた! それが今、わかったのだ。〉
『アンの愛情』L.M.モンゴメリ 著/松本侑子 訳/文藝春秋
いかなる結末を迎えるのか
さて、愛に確信を持てたアンは、その気持ちをギルバートに伝えることはできるのか。ふたりの恋の行方はどうなるのか。そして、寄宿学校に連れ去られたカクウェットは家族のもとに戻れるのか。
打ち切りになった『アンという名の少女』は、いかなる結末を迎えるのか。
アンとギルバートの恋の行方にはドラマとして決着を見せるが、カクウェットの問題は、存在しない次のシーズンへ持ち越されてしまう。
覚悟して最終話を観るしかない。
最終話のレビューは、3月7日(月)朝8時更新予定。
『アンという名の少女』
原題:Anne with an “E”
制作:2017年 カナダ
原作:L・M・モンゴメリ
製作総指揮:モイラ・ウォリー=ベケット
キャスト
アン・シャーリー(エイミーベス・マクナルティ)(上田真紗子)
マリラ・カスバート(ジェラルディン・ジェームズ)(一柳みる)
マシュー・カスバート(R・H・トムソン)(浦山迅)
ダイアナ・バリー(ダリラ・ベラ)(米倉希代子)
ギルバート・ブライス(ルーカス・ジェイド・ズマン)(金本涼輔)
レイチェル・リンド(コリーン・コスロ)(堀越真己)
ジェリー・ベイナード(エイメリック・ジェット・モンタズ)(霧生晃司)
Netflixシーズン1から3まで配信中
米光一成
(よねみつかずなり)ゲーム作家/ライター/デジタルハリウッド大学教授/日本翻訳大賞運営/東京マッハメンバー。代表作は『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』『BAROQUE』『はっけよいとネコ』『記憶交換ノ儀式』等、デジタルゲーム、アナログゲームなど幅広くデザインする。池袋コミュニティ・カレッジ「表現道場」の道場主。宣伝会議「編集ライター養成講座 即戦力コース」専任講師。著作『自分だけにしか思いつかないアイデアを見つける方法』(日本経済新聞出版社)、『思考ツールとしてのタロット』(こどものもうそうブックス)等。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3c5c420e39a9fc260813f1c054e4cf77adf02301