北海道新聞03/21 12:13 更新

しらおい食育防災センター提供
2021年度の北海道学校給食コンクール(道教委と道学校給食会主催)が開かれ、最優秀賞にしらおい食育防災センター(胆振管内白老町)、優秀賞に函館市立亀田中学校、優良賞に利尻郡学校給食共同調理場(宗谷管内利尻富士町)と江差町・上ノ国町学校給食センター(檜山管内江差町)がそれぞれ選ばれた。「受け継ごう! 地域自慢の郷土料理・伝統料理」をテーマに、道内13の小中学校や給食センターが参加。2月15日の審査会では献立の栄養バランス以外に、地域の食文化を継承する食育の視点、家庭や地域とのつながりなどが評価の対象となった。四つの受賞作を寸評とともに紹介する。
<最優秀賞> ■アイヌ料理で文化学ぶ しらおい食育防災センター
センターは学校給食の提供のほか、食育や防災に関する学習、災害発生時の非常食の配給・備蓄の拠点となっている。
受賞作の献立は、アイヌ民族の伝統料理である「いなきびご飯」「チェプオハウ(サケの汁物)」「ボツボツ(カボチャの混ぜ煮)」のほか、「ユク(鹿肉)の竜田揚げ」。アイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の開設1周年を記念して昨年7月、町内の学校給食として提供したメニューを応募した。
調理業務を請け負う日総(札幌)の調理責任者の樋渡喜代子さん(56)と栄養教諭の谷村真美さん(51)は、献立の考案に当たってアイヌ料理の講習会に参加。白老アイヌ協会の会員らのアドバイスを受け、レシピを完成させた。伝統的な野菜の切り方を踏襲し、ダシに使った白老産コンブは具材にも使用し、食材を無駄にしないアイヌ民族の文化を取り入れた。
センターでは「ふるさと給食」として2年前から、アイヌ民族の伝統料理を年に3回提供。白老牛の牛丼やタラコのスパゲティなど特産品を使った地産地消にも取り組んでいる。谷村さんは「日ごろの取り組みが評価されてうれしい。子どもたちには、ふるさとの歴史や文化を食べることで学んでほしい」と話している。
<寸評>試食会を開くなどして、食育指導と地域との連携ができている。地場産品やアイヌ料理を通じ、子どもたちが地元の歴史や食文化を学んでいる。ふるさと給食のメニューをクラスに掲示し、白老町のホームページでも掲載するなど多面的に活用している。
<優秀賞> ■食育授業、捕鯨の歴史紹介 函館市立亀田中学校
函館近海では1999年から約20年間、商業捕鯨が行われた。正月料理の定番でもあったクジラ汁を献立に取り入れた。函館産のマコンブでだしを取り、クジラは独特の臭みを消すため、皮の湯通しを3回行った。
函館出身の栄養教諭の石井咲也子さん(23)は「イカの漁獲量が低迷しており、地域になじみのあるクジラ汁を採用した」と話す。このほかホッケフライや白菜の油炒めも献立に加えた。
クジラ汁を提供する1週間前、中学2年生への食育の授業で商業捕鯨の歴史などを紹介し、地域の食文化を考えてもらった。生徒からは「今まで伝統料理と知らずに食べていた」「正月に作ってみたい」などの意見が寄せられたという。
<寸評>授業を通じて生徒の興味や関心を引き出している。郷土料理に楽しみながら触れ、次世代につなげる活動を続けてほしい。
<優良賞> ■三平汁の調理工程、動画で 利尻郡学校給食共同調理場
利尻島内の小中7学校に、できたての給食を届けている。毎月19日の「食育の日」に合わせ、ホッケのちゃんちゃん焼きやタコザンギなど地元食材を使った郷土料理を提供している。コンクールには「タラ三平汁」や「和風肉団子」「キャベツ塩コンブあえ」で応募した。
栄養教諭の小笠原有沙さん(30)は、小学5、6年生を対象に郷土料理を学ぶ授業を行っている。家庭でも作れるよう、三平汁の調理工程を2分間の動画にまとめた。「(動画投稿サイトなどの)SNSを参考に調理する人が増えている。文章でレシピを紹介するよりイメージがつきやすいと思った」と話し、近くSNSで公開する予定という。
<寸評>動画がとても分かりやすく、「作ってみたい」と思わせるような内容。SNSを通じて、ぜひ活用してほしい。
■ニシン漁の伝説、紙芝居に 江差町・上ノ国町学校給食センター
江戸から明治期にかけ、江差町と上ノ国町の近海で大漁にわいたニシンの甘露煮が主菜。ニンジンやゴボウ、サツマイモをふんだんに入れ、正月に作り置きするなどして味わう「つぼっこ汁」や「フキの油炒め」も献立にした。
栄養教諭の江畑美穂さん(25)は、江差町内の農業者らでつくる「えさし水土里(みどり)の会」などから地元の伝統料理の調理法を学んだ。
江差町は2017年、ニシン漁をテーマに道内初となる日本遺産の認定を受けた。同漁にまつわる伝説を紙芝居にし、給食中の読み聞かせを予定しており、江畑さんは「物語なら子どもにも伝わりやすい。給食から地域の歴史や文化に興味を持ってもらえるのでは」と期待を込めている。
<寸評>地域の歴史や文化をしっかり学んでいる。紙芝居の読み聞かせについても積極的に行ってほしい。
◇
受賞した献立と作り方は、道教委のホームページ(https://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/ktk/96352.html)で公開している。道教委は23、24日の2日間限定で、しらおい食育防災センターと函館市立亀田中の献立を道議会食堂(札幌市中央区北2西6)で提供する。いずれも一食650円。(今関茉莉) ◆チェプオハウの「プ」とユクの「ク」は小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/659331

しらおい食育防災センター提供
2021年度の北海道学校給食コンクール(道教委と道学校給食会主催)が開かれ、最優秀賞にしらおい食育防災センター(胆振管内白老町)、優秀賞に函館市立亀田中学校、優良賞に利尻郡学校給食共同調理場(宗谷管内利尻富士町)と江差町・上ノ国町学校給食センター(檜山管内江差町)がそれぞれ選ばれた。「受け継ごう! 地域自慢の郷土料理・伝統料理」をテーマに、道内13の小中学校や給食センターが参加。2月15日の審査会では献立の栄養バランス以外に、地域の食文化を継承する食育の視点、家庭や地域とのつながりなどが評価の対象となった。四つの受賞作を寸評とともに紹介する。
<最優秀賞> ■アイヌ料理で文化学ぶ しらおい食育防災センター
センターは学校給食の提供のほか、食育や防災に関する学習、災害発生時の非常食の配給・備蓄の拠点となっている。
受賞作の献立は、アイヌ民族の伝統料理である「いなきびご飯」「チェプオハウ(サケの汁物)」「ボツボツ(カボチャの混ぜ煮)」のほか、「ユク(鹿肉)の竜田揚げ」。アイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の開設1周年を記念して昨年7月、町内の学校給食として提供したメニューを応募した。
調理業務を請け負う日総(札幌)の調理責任者の樋渡喜代子さん(56)と栄養教諭の谷村真美さん(51)は、献立の考案に当たってアイヌ料理の講習会に参加。白老アイヌ協会の会員らのアドバイスを受け、レシピを完成させた。伝統的な野菜の切り方を踏襲し、ダシに使った白老産コンブは具材にも使用し、食材を無駄にしないアイヌ民族の文化を取り入れた。
センターでは「ふるさと給食」として2年前から、アイヌ民族の伝統料理を年に3回提供。白老牛の牛丼やタラコのスパゲティなど特産品を使った地産地消にも取り組んでいる。谷村さんは「日ごろの取り組みが評価されてうれしい。子どもたちには、ふるさとの歴史や文化を食べることで学んでほしい」と話している。
<寸評>試食会を開くなどして、食育指導と地域との連携ができている。地場産品やアイヌ料理を通じ、子どもたちが地元の歴史や食文化を学んでいる。ふるさと給食のメニューをクラスに掲示し、白老町のホームページでも掲載するなど多面的に活用している。
<優秀賞> ■食育授業、捕鯨の歴史紹介 函館市立亀田中学校
函館近海では1999年から約20年間、商業捕鯨が行われた。正月料理の定番でもあったクジラ汁を献立に取り入れた。函館産のマコンブでだしを取り、クジラは独特の臭みを消すため、皮の湯通しを3回行った。
函館出身の栄養教諭の石井咲也子さん(23)は「イカの漁獲量が低迷しており、地域になじみのあるクジラ汁を採用した」と話す。このほかホッケフライや白菜の油炒めも献立に加えた。
クジラ汁を提供する1週間前、中学2年生への食育の授業で商業捕鯨の歴史などを紹介し、地域の食文化を考えてもらった。生徒からは「今まで伝統料理と知らずに食べていた」「正月に作ってみたい」などの意見が寄せられたという。
<寸評>授業を通じて生徒の興味や関心を引き出している。郷土料理に楽しみながら触れ、次世代につなげる活動を続けてほしい。
<優良賞> ■三平汁の調理工程、動画で 利尻郡学校給食共同調理場
利尻島内の小中7学校に、できたての給食を届けている。毎月19日の「食育の日」に合わせ、ホッケのちゃんちゃん焼きやタコザンギなど地元食材を使った郷土料理を提供している。コンクールには「タラ三平汁」や「和風肉団子」「キャベツ塩コンブあえ」で応募した。
栄養教諭の小笠原有沙さん(30)は、小学5、6年生を対象に郷土料理を学ぶ授業を行っている。家庭でも作れるよう、三平汁の調理工程を2分間の動画にまとめた。「(動画投稿サイトなどの)SNSを参考に調理する人が増えている。文章でレシピを紹介するよりイメージがつきやすいと思った」と話し、近くSNSで公開する予定という。
<寸評>動画がとても分かりやすく、「作ってみたい」と思わせるような内容。SNSを通じて、ぜひ活用してほしい。
■ニシン漁の伝説、紙芝居に 江差町・上ノ国町学校給食センター
江戸から明治期にかけ、江差町と上ノ国町の近海で大漁にわいたニシンの甘露煮が主菜。ニンジンやゴボウ、サツマイモをふんだんに入れ、正月に作り置きするなどして味わう「つぼっこ汁」や「フキの油炒め」も献立にした。
栄養教諭の江畑美穂さん(25)は、江差町内の農業者らでつくる「えさし水土里(みどり)の会」などから地元の伝統料理の調理法を学んだ。
江差町は2017年、ニシン漁をテーマに道内初となる日本遺産の認定を受けた。同漁にまつわる伝説を紙芝居にし、給食中の読み聞かせを予定しており、江畑さんは「物語なら子どもにも伝わりやすい。給食から地域の歴史や文化に興味を持ってもらえるのでは」と期待を込めている。
<寸評>地域の歴史や文化をしっかり学んでいる。紙芝居の読み聞かせについても積極的に行ってほしい。
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受賞した献立と作り方は、道教委のホームページ(https://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/ktk/96352.html)で公開している。道教委は23、24日の2日間限定で、しらおい食育防災センターと函館市立亀田中の献立を道議会食堂(札幌市中央区北2西6)で提供する。いずれも一食650円。(今関茉莉) ◆チェプオハウの「プ」とユクの「ク」は小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/659331