先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

多様性とメディア、企画展始まる 横浜・日本新聞博物館で

2023-04-23 | アイヌ民族関連
有料記事
北海道新聞2023年4月22日 21:20(4月22日 23:40更新)

ニュースパークで始まった多様性とメディアに関する企画展=22日午後、横浜市
 ジェンダー平等や性的少数者への配慮といった多様性の尊重が求められる中、こうした内容に関する記事やニュースの歴史を紹介し、報道する業界内での取り組みのあり方を考える企画展「多様性 メディアが変えたもの、メディアを変えたもの」が22日、横浜市中区のニュースパーク(日本新聞博物館)で始まった。8月20日まで。
 1903年に大阪で開かれた博覧会でアイヌや沖縄、台湾などの人たちを「見せ物」扱いした人種差別的な施設に関する記事や、男尊女卑の気風が根強く残っていた大正時代に生まれた、女性向けの「本格的な家庭面」の紙面など約300点を展示。
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https://www.hokkaido-np.co.jp/article/835959/

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こどもファスト・トラック登場 国立科学博物館

2023-04-23 | アイヌ民族関連
有料記事
北海道新聞2023年4月22日 17:26

国立科学博物館の常設展入り口に設けられた優先レーン「こどもファスト・トラック」=22日午前、東京・上野
 国立科学博物館(東京)の常設展入り口に22日、子ども連れの来館者に向けた優先レーン「こどもファスト・トラック」が登場した。子育てに優しい社会づくりに向けた取り組みの一環で、午前9時の開場とともに、ベビーカーを押す保護者や、友人同士で来た中高生らが相次ぎ優先レーンから入館した。
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https://www.hokkaido-np.co.jp/article/835860/

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札幌で「ハポの手仕事展」 アイヌ刺しゅうなど紹介 苫小牧民報2023/4/22配信

2023-04-23 | アイヌ民族関連
白老町地域おこし協力隊の乾藍那さん(36)=アイヌ文化振興担当=は29日から、札幌市中央区の紀伊國屋書店札幌本店の2階イベントスペースで「白老ハポの手仕事展」を開く。アイヌ刺しゅうや木彫、革工芸作品など約100点を展示する。期間中は午前10時から午後3時まで、冊子掲載の作家による実演も予定している。5月4日まで。

完成したチラシを手に多くの来場を呼び掛ける乾さん
 町内外で活躍するアイヌ刺しゅう作家や木彫家、サークルを紹介した冊子「白老ハポの手仕事」完成の関連企画。会場では冊子の無料配布も行う。
 ハポは「母」「年上の女性」を意味するアイヌ語。先人から受け継いだ伝統の手仕事を次世代に伝える人たちやサークルを紹介する趣旨で、展示がメインだが一部の作品は販売にも応じる。
 乾さんは「伝統的な技法にならって制作された作品だけでなく、現代的なアレンジを加えた作品も並べる」と話す。販売するのは、コースターやランチョンマットなど日用品やストラップなどのアクセサリー類が中心。実演は作家らが午前と午後に1人ずつ交代で行い、エムシアツ(刀掛け帯)の技法を使った手編みや、ひと針ひと針刺しゅうを施す様子を見てもらう。
 A3ポスター30枚、A4チラシ1000枚、はがき500枚は15日までに完成し、札幌、白老を中心に配布と掲示を進めていく。
https://hokkaido-nl.jp/article/29068

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「ハッピーではなく人権」。LGBTQやホームレスのため、渋谷の街を歩いた理由

2023-04-23 | 先住民族関連
ハフポスト2023年04月22日 17時9分 JST
『東京レインボープライド(TRP)』のパレードの前日に、同じ渋谷で行われた『東京リベレーションマーチ』。その理由とはーー。
佐藤雄(Takeru Sato),Jun Tsuboike 坪池順

LGBTQ当事者やホームレスなど、社会的マイノリティの人権のために声を上げた『東京リベレーションマーチ』Jun Tsuboike / HuffPost Japan
「なんとか一緒に生き抜こう」「差別なんかいらない」ーー。
LGBTQ当事者やホームレスなど「社会的マイノリティの人権」のために声を上げる『東京リベレーションマーチ』が4月22日、東京都渋谷区の神宮通公園を拠点に行われた。
きっかけは、性的マイノリティと社会的関連があるホームレスについて、同区で排除が進んでいること。開催日はあえて、国内最大級のLGBTQイベント『東京レインボープライド(TRP)』のパレードの前日にした。
実行委員会は「TRPが企業を巻き込む商業ベースの形をとってきたからこそ、社会が少しずつ変わってきました。LGBTQコミュニティに果たしてきた役割は大きいと思います」と強調。その上で「TRPの会場では抗議や人権について発信するのが難しい側面もあり、取りこぼされている当事者が声を上げる場を作りたいと思いました」と話す。
この日のマーチに、プライドパレードなどで掲げられる「“ハッピー”プライド」という言葉はなかった。LGBTQ当事者やアライ、聾者やアイヌの人々など200人が「私たちは人間だ」「すべての差別をはじき飛ばそう」などと書かれたプラカードをもち、声高らかに人権が守られる社会の実現を求めた。
◆TRPとリベレーションマーチ、両方があることで「LGBTQがより生きやすい社会に」
「リベレーションマーチ」は、フランスなど世界各地で行われている。『東京リベレーションマーチ』の開催は、実行委の1人であるげいまきまきさんが2022年、渋谷区の美竹公園でホームレスの排除を見て、「人を人として扱わないことにショックを受けた」ことがきっかけだ。
実行委はトランスジェンダーや、性産業で働く人の支援者ら9人で構成。ホームレスやLGBTQ当事者などの人権のために声を上げようと思ったのは、両者に深い関連があることも大きい。トランスジェンダーであるというだけで、就労差別を受けたり物件の入居を断られたりし、路上生活者にならざるを得ない人がいるという。
開催日はあえて、国内最大級のLGBTQイベント『東京レインボープライド(TRP)』の1日目と被せた。それは、「スポンサーなどの意向に縛られず、LGBTQ当事者が抱える問題や人権について発信できる場が必要だと思った」からだ。またTRPが開催される渋谷区は、「ダイバーシティ&インクルージョン」を積極的に進めているとしながらも、路上生活者の意向を尊重せず排除してきた側面もある。
実行委はその上で、「TRPのパレードでは『ハッピープライド』という言葉を使っています。でも、今とてもハッピーとは言えない当事者も多くいます。だからTRPと人権について声を上げる東京リベレーションマーチの2つがあることで、取りこぼされている当事者が減ると思うんです」と話す。
◆「ハッピーが救いになった。でも、それだけで良いのかな…」
『東京リベレーションマーチ』の拠点は、神宮通公園。実行委は「ホームレスが排除されている場所だから」と話す。この日は約200人の様々なマイノリティの人らが、虹色のグッズなどを身につけ、約2キロにわたって渋谷の街を練り歩いた。
「毎日生き抜いているうちらってすごい!」「差別がない社会を作ろう」ーー。バイセクシュアルの女性は、マーチでこう声を上げた。
参加した理由について「これまでプライドパレードで『ハッピープライド』という言葉に救わる部分がありました。でも、ハッピーだけで良いのかなって思ったんです」と吐露する。この日は前首相秘書官の差別発言や、いつまでたっても「LGBT理解増進法」すら成立しない現状に対して声を上げるために来たといい、「マジョリティと違う部分があるだけで、人権が守られない社会はおかしいと伝えられてよかったです」と話した。
実行委の1人・浅沼智也さんは「ダイバーシティを掲げる渋谷区で、いろんな人がいるということを見える化できたことは、大きな意味があったと思います」と強調。「悲しいことに攻撃の対象となることもありますが、声を上げないと社会は変わりません」とし、今後も続けていく方針を示した。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_64427371e4b039ec4e7e3553

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地図持たぬフィリピン登山者、先住民ガイドにお任せ 雇用生み出し名峰保全を…山火事頻発、焼き畑に問題

2023-04-23 | 先住民族関連
静岡新聞2023/04/22 12:00

 フィリピン・ルソン島最高峰のプラグ山の稜線に現れた太陽を見つめるイバロイ族の登山ガイド、リザリン・アガトンキリントさん=4月2日
 フィリピンの登山者は地図を持たない。登山道に道標も見当たらない。地元住民を道案内に雇い、安全確保を委ねるのが“常識”だ。ルソン島で最も高いプラグ山(2922メートル)の登山ツアーに参加した。当局はガイド雇用を登山者に義務付け、貧しい先住民に職を与えて国立公園保護区の森林を保全しようと狙う。(共同通信=佐々木健)
▽入山に手間
 プラグ山は、ミンダナオ島にある同国最高峰アポ山と並ぶ名峰だ。首都マニラからすし詰めの車で夜通し7時間かけベンゲット州の山麓に到着した。だが、すぐ山に登れるわけではない。
 全ての登山者は血圧と血中酸素濃度を測定、聴診器を当てられて医師の診断を受ける。そして国立公園事務所に集合し、自然保護や登山コースに関するビデオを見せられ、担当官から禁止事項などの講義を聴き、手の甲に登山適格の押印を受ける規則になっている。手続きに手間がかかり、ツアー登山が主流だ。
 講義を行ったデイシー・モレストさんは「全ての登山者にガイド雇用を義務付けている。国立公園内にいる住民の主な収入源は野菜栽培。森林を畑に変えるのをやめさせるためには、住民に他の収入源を与える必要がある」と説明した。
 ▽「殺人トレイル」に騒然
 今回挑むのは、テント1泊で標高差約2千メートルを登る「アキキ・トレイル」。昨年7月の地震で荒廃し閉鎖されていたが、4月1日に再開。私を含む一団が久しぶりの入山者となった。
 ガイド任せの登山には計画が周知されていない弊害もある。一部の登山者は、登頂に11~15時間を要し「殺人トレイル」と呼ばれる難コースだとの説明に驚き、「引き返そうか」などとざわめき始めた。モレストさんは「テントや調理器具など全て担ぎ上げなくてはならないが、ポーターを雇うこともできる」と付け加えた。
 登山口までは派手な装飾の伝統的な乗り合いバス「ジプニー」で移動する。景色を楽しもうと屋根の荷台に座る登山客も多い。カーブで揺れるたびに歓声が上がる。自由に楽しむのがフィリピン流だ。
 ▽客10人に同行6人
 私が参加した1泊2日のツアーは登山客10人に主催者や料理人ら3人が同行。さらに登山口で先住民イバロイ族のガイド2人とポーター1人が加わり、大登山隊の様相となった。
 各登山者は入山料や文化遺産税などとして800ペソ(約2千円)を徴収された。ガイド2人には計3600ペソを払う。これらを含むツアー代金は、マニラからの交通費と山行中の食事を含めて4600ペソだった。このほか医師診断料が150ペソかかる。
 早朝に着いたにもかかわらず、諸手続きに時間を取られ、入山できたのは正午。でも、フィリピン人は誰も文句を言わない。
 ▽教育費稼ぎ
 登山口の先の斜面にはトマトとカリフラワーが植えられていた。イバロイ族のガイド、リザリン・アガトンキリントさん(28)は、山岳地帯は涼しく、ピーマンやブロッコリーを含む「高原野菜」を毎年3回ほど収穫し、全国に出荷していると話した。ただ「市場価格が安ければ何にもならない」と訴える。
 それだけに、収入が保証される登山ガイドは魅力的。多くの住民が希望し、月に1~2度しか順番が回ってこないという。「子4人の教育にはお金が必要。親戚の体験談を聴き、日本へ農作業の出稼ぎを考えている」と打ち明けた。だが「家族と離れ離れになるし、日本語は難しい」ともこぼした。
 ▽樹林帯が黒焦げに
 峡谷に差しかかると、対岸の山腹から白煙が立ち上っているのに気づいた。がけの一帯が焦げているようにも見える。乾燥する3~4月は、山火事が頻発するらしい。
 登り進むと、名峰の誇りとされる針葉樹林があちこち黒く焦げていた。薄い煙と異臭も漂ってきた。リザリンさんは「焼き畑をしている」と教えてくれた。「当局が見つければ刑務所に送られるが、見つけられなければ何もできない」という。
 当局は、こうした山火事は、違法な焼き畑農業の飛び火や登山者の失火が原因だとみている。プラグ山は貴重な生態系が残り、昨年4月、保護区に指定されたばかりだ。
 ▽持続可能性
 コルディレラ行政地域のラルフ・パブロ環境天然資源局長も「焼き畑をまだ続けている住民がいる」と指摘。「この慣習の根絶に力を尽くし、生活の糧となっている山を破壊しないよう住民に提唱してきた」と強調した。
 「野菜は霜害で駄目になることもあるが、エコツーリズムは持続可能。ガイドやポーターの訓練も行っている」と訴える。現在、登録ガイドが約150人、ポーターが約75人いるという。
 ただ、プラグ山の登山人気は高まる一方。毎年数千人で推移していた入山者は2011年に1万人を突破、コロナ禍前の19年には4万3千人を超えた。「山の収容力の範囲内に入山者数を制限する方針だ」
 ▽サンダルで33キロ担ぐ
 テント場に着いたのは日没直前。ポーターのロジェイルさん(32)はテントや食料など33キロの重荷を化繊袋に入れて担ぎ上げ、妻のリザリンさんに迎えられた。テント場は標高約2千メートルで朝晩は冷え込むが、ロジェイルさんは素足にサンダル履き。過酷な労働だが、リザリンさんの倍の3300ペソ(約8千円)を稼げるという。
 食事づくりはマニラから同行した料理人が担当。手際よくスープや炒め物の夕食を作ってくれた。でも、テントで睡眠できたのはわずか3時間。午前1時に起床し、朝食の後、3時にはヘッドライトを点灯して登山を再開した。
 ▽先住民の権利尊重
 樹林帯が開けると、満天の星が現れた。草地を登り続けると、地平線が明るくなった。雲海が静かに広がっていた。数え切れないほど登頂経験があるリザリンさんも、山影を圧倒していく黎明に見入っていた。
 山頂に着き、山仲間らに「地図は持たないのか」と聞くと、「フィリピンに登山地図はない」との答えが異口同音に返ってきた。ジョンリアン・ラダンさん(27)は「店でも売っておらず、先住民の案内に頼るしかない」と説明した。入山手続きにも不満はないと断言。「フィリピンは先住民の権利を尊重しているんだ」と語った。
 登頂記念撮影の後、最短路のアンバネ・トレイルを一気に下った。登山も下山も、みな自分のペースを貫くので、まとまって行動することはない。先住民のガイドが目配りしてくれなければ、はぐれる登山者が続出してしまうだろう。
https://www.at-s.com/news/article/national/1229024.html

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札幌でのG7気候・エネルギー・環境大臣会合で採択された内容

2023-04-23 | 先住民族関連
e’s2023年04月21日
4月15日と16日、先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境大臣会合が札幌市で開催されました。
気候変動に関しては、「2030年43%、2035年60%削減」の緊急性を強調するなど、さらに踏み込んだ対策の必要性が共有されています。
また、従来はCO2)削減への対策を講じていない化石燃料の段階的廃止の対象を石炭に限っていましたが、今回は「化石燃料」とし、天然ガスなどを対象に加えたことも注目の1つです。
活動している立場としては、「ブルーカーボン」がコミュニケにしっかり登場していることは励みになります!
G7 気候・エネルギー・環境大臣会合コミュニケ(共同声明)ほか、採択された成果文書はこちらにあります。
https://www.env.go.jp/earth/g7/2023_sapporo_emm/index.html
広い範囲を対象に、さまざまな議論がされ、さまざまな認識や確認が共有されています。
「G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合 結果概要」 から、どんなことが確認されたのかを見てみましょう。
https://www.env.go.jp/content/000127856.pdf
~~~~~~~~~~~~~~ここから引用~~~~~~~~~~~~~~~~~
【概要】
・経済成長とエネルギー安全保障を確保しながら、ネットゼロ、循環経済、ネイチャーポジティブ経済の統合的な実現に向けたグリーントランスフォーメーションの重要性を共有。
・全ての部門・全ての主体の行動の必要性を確認。
・バリューチェーン全体の変革と、これに向けた情報開示等の企業の取組の重要性を共有。
・政府による率先行動。非政府主体(都市・地方自治体)の行動を推進・支援。
・2040年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにする野心に合意(大阪ブルー・オーシャン・ビジョンの10年前倒し)。
・NDC及び長期戦略が1.5℃目標、2050年ネットゼロと整合していない国(特に主要経済国)に対し、排出削減目標の強化、2050年ネットゼロを呼びかけ。全ての分野、温室効果ガスを対象にすることを要請。
・締約国に対し、2025年までの世界全体排出量のピークアウト等へのコミットの呼びかけ。
・各国の事情に応じた多様な道筋を認識しつつ、それらがネットゼロという共通目標に繋がることを強調。
・安全性、エネルギー安全保障、経済効率性及び環境(S+3E)を同時に実現することの重要性を再確認
・エネルギー安全保障、気候危機、地政学的リスクに一体として取り組むことにコミット。
・排出削減と経済成長の両立を実現するシステム変革の重要性を強調。
・産業の脱炭素化の重要性の再確認と具体的行動の共有。
【G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合 コミュニケの要点】
■冒頭・共同
・ロシアによるウクライナ侵攻を非難し、ウクライナとの連帯を表明。ウクライナのグリーン復興に向けて協力する用意。
1.ジョイント
・気候変動、生物多様性の損失及び汚染という3つの世界的な危機と、エネルギー危機に関する深い懸念を表明。
・グリーントランスフォーメーションのグローバルな推進。
・エネルギー移行及び環境保全のシナジーを強化。
・全ての部門、全ての主体の行動を推進、ファッション・旅行を含めたあらゆる部門の行動変容を推進。
・科学的知見・イノベーションの促進及び実装の重要性を強調。
・バリューチェーン全体の変革、このための情報公開等の企業の取組を推進。
・重要鉱物等の供給強化、環境上適正かつ効率的な国内・国際の重要鉱物等の回収リサイクルを推進。
・ブルーカーボン等、気候変動対策と生物多様性対策のシナジーを強化するNbSを推進。
・森林・土地劣化への対処、水管理、海洋保全、強靭な食糧システム構築に対してコミット。
・国内外の官民の資金、特にMDBs等の国際金融機関に対して、資金の流れを気候・環境目的に一致させることと、 3つの世界的な危機に向けた効果的・効率的で質の高い資金活用の重要性を強調。
・政府による率先行動、非政府主体(都市・地方自治体)の行動を推進。
・政策を進めるに当たって留意すべき普遍的な社会的事項として、包摂性、先住民族、ジェンダー平等、公正な移行 について初めてそれぞれ個別に取りまとめた。
2.環境
<生物多様性>
・生物多様性条約COP15で合意された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の迅速かつ完全な実施の重要性を確認、生物多様性国家戦略の策定を推進。
・全ての部門において生物多様性保全を主流化させるため、 「G7ネイチャーポジティブ経済アライアンス」を設立。
・ 2030年までに、国内外において陸・海の少なくとも30%を効果的に保全・管理。 「保護地域以外で生物多様性保全に資する地域(OECM)」の指定を推進。
・侵略的外来種対策のための国際協力を推進するため、「侵略的外来種に関するG7ワークショップ」を開催。
・あらゆる資金源からの資金・資源の増加の必要性を認識。
・ 「国家管轄圏外区域の海洋生物多様性(BBNJ)」のための条約合意を歓迎。
・「違法・無報告・無規制(IUU)漁業」の廃絶に向けた取組を再確認。
<資源効率性・循環経済>
・循環経済・資源効率性に関する企業の行動指針を示す「循環経済及び資源効率性の原則(CEREP)」を採択。
・「ベルリン・ロードマップ」に基づくG7協力の強化、廃棄物分野の脱炭素化の強化、バリューチェーンの循環性の測定・流通・活用の促進等に合意。
・循環経済・廃棄物管理等の国際協力の強化、MDBs等のポートフォリオへの循環経済の統合の招請等に合意。
<プラスチック汚染>
・ 2040年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにする野心を持って、プラスチック汚染を終わらせることを確約。
・条約策定に向けた政府間委員会にG7が積極的かつ建設的に参加。野心的かつ包摂的な枠組みを目指す。
<化学物質>
・2020年以降の化学物質・廃棄物の適正管理に関する枠組の採択を含む、ICCM5(第5回国際化学物質管理会議)における野心的な成果を呼びかけ。
3.気候変動・エネルギー
<気候・エネルギー危機の現状、行動の加速化>
・気候変動の加速化・激甚化する影響に強い懸念。1.5℃目標達成、気候の影響に対する強靱化のため、G7がリーダーシップを取ることをコミット。すべての部門・主体にこの10年間における経済変革への協働を要請。2030年43%、2035年60%削減の緊急性を強調。
・パリ協定実施の強化への確固たるコミットメントを再確認。1.5℃目標達成のため排出削減のための取組拡大、気候変動の影響への適応力向上、パリ協定と整合した資金の流れにすることを再確認。
・2030NDCにおける削減目標達成のための政策を迅速に実施。既存のコミットメント・目標の堅持、COP28成功のための協働。全ての締約国に対しCOP28で遅くとも2025年までにピークアウトにコミットすることを要請。1.5℃目標と整合していない国(主要経済国等)への野心強化(2030NDC、長期戦略、2050CN)を要請。すべての分野及び温室効果ガスをNDCの対象とすべき。
・ COP28交渉をにらみ、パリ協定全体の評価を5年ごとに行う仕組みであるGST(グローバル・ストックテイク)の野心的な成果(緩和、適応、実施手段)への貢献、気候行動拡大の政治的機運醸成を約束。
・ エネルギー安全保障強化とクリーンエネルギー移行の加速:世界規模での取組みの一環として、遅くとも2050年までにエネルギーシステムにおけるネットゼロを達成するために、排出削減対策が講じられていない化石燃料のフェーズアウトを加速させるという我々のコミットメントを強調し、他国に対して同様の行動を取るために我々に加わることを要請。各国のエネルギー事情、産業・社会構造、地理的条件に応じた多様な道筋がネットゼロという我々の共通目標に繋がることを強調。エネルギー安全保障、気候危機、地政学的リスクに一体として取り組むことにコミット。
<排出削減と経済成長を実現するシステム変革>
・グリーン市場の実現: 供給・需要側、民間公的主体等の組み合わせの重要性を認識。
・バリューチェーン全体での排出削減を実現する視点: 事業者自らの削減のみならず削減貢献量を認識することの価値を共有。
・炭素市場及び炭素価格付け: 持続可能な経済成長を促進するための重要な措置として極めて重要なことを再確認。
・消費者の行動やライフスタイルの変容による需要側の対策の強化、「脱炭素で豊かな暮らし(ウェルビーイング)のためのプラットフォーム」を設立。
・イノベーション: 2050年までに世界のネットゼロを達成するために、技術の商業化とともに加速させる必要性を強調。
・ トランジション・ファイナンス: 官民及び国内外の資金の流れをパリ協定に沿ったものにする。企業の気候移行計画に基づいたネットゼロ移行をトランジション・ファイナンスが支援できることを認識。
・資金動員の鍵を握る炭素市場の質を確保するため、「質の高い炭素市場の原則」を策定。パリ協定6条の実施に関する能力構築促進のため、「6条実施パートナーシップセンター」の設立を歓迎。
・共同の行動: 他国の脱炭素化の支援する取組としてのアジアゼロエミッション共同体等、様々なイニシアチブを認識。
・メタン、HFC等のCO2以外の気候汚染物質の対策を強化。
<エネルギー部門の移行>
・省エネ: 「省エネルギー・ファーストの原則」を確認。省エネ規制を電化や燃料転換、デジタル化等を含めて進化させることを確認。
・再エネ: 各国既存目標等に基づく洋上風力150GWの増加・太陽光1TWへの増加を含め、再エネ導入拡大やコスト低減への貢献に合意。ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力等次世代技術の開発・実装、事業環境整備の推進を確認。安全で持続可能で強靭なサプライチェーンを整備。
・電力部門: 2035年までに電力部門の完全又は大宗の脱炭素化の達成、国内の排出削減対策が講じられていない石炭火力発電を最終的にはフェーズアウトさせるという目標に向けて、具体的かつ適時の取組を重点的に行うことへのコミットメントを再確認。
・水素・アンモニア: 水素・アンモニアが様々な分野・産業、さらに「ゼロエミ火力」に向けた電力部門での脱炭素化に資する点を明記。ブルー・グリーンといった色によらない「炭素集約度」の概念を含む国際標準や認証スキーム構築の重要性を確認。 当該評価を提案したIEA報告書を歓迎。
・カーボンマネジメント: 2050年ネットゼロに向けた脱炭素化の解決策として、e-fuelやe-methaneの様なカーボンリサイクル燃料を含め、CCS及びCCU/カーボンリサイクル技術が重要となり得ることを確認。CCU/カーボンリサイクル技術のワークショップを含む交流を実施。
・ ガス: グローバルサウスの国々への配慮と将来のガス不足を引き起こさないようにするためのガス分野への投資の必要性を明記。
・原子力: 原子力利用国は、既設炉の最大限活用、革新炉の開発・建設、強固な原子力SCの構築、技術・人材の維持・強化等にコミット。また、G7として、ロシア依存逓減に向けて協力する作業グループ(局長級)の設立に合意。
・福島: 福島第一原発の廃炉の着実な進展や科学的根拠に基づく我が国の透明性のある取組の歓迎、ALPS処理水に関するIAEAの独立したレビューの支持。福島第一原発外の汚染地域の環境回復についての着実な進捗を認識。
・重要鉱物: クリーンエネルギー移行と経済安全保障の両立に向けた、重要鉱物の開かれたマーケットベースの取引の支持、市場歪曲的措置への反対を再確認。G7各国が協調して取り組む「重要鉱物セキュリティのための5ポイントプラン」に合意。
・化石燃料補助金: 2025年までの非効率な化石燃料補助金の廃止を再確認。
・海外公的化石燃料ファイナンス: 国家安全保障と地政学的利益の促進が極めて重要であることを認識した上で、各国が明確に規定する、地球温暖化に関する1.5℃目標やパリ協定の目標に整合的である限られた状況以外において、排出削減対策の講じられていない国際的な化石燃料エネルギー部門への新規の公的直接支援を2022年末までに終了したことの強調。
<産業・運輸・建築部門の脱炭素化>
・産業の脱炭素化: ライフサイクルベースで産業の脱炭素化を評価することの重要性を強調。鉄鋼生産及び製品の排出に関する提案された新しい「グローバルデータ収集フレームワーク」の実施に向け、作業を開始することに合意。
・バイオものづくり: 気候変動等の問題を解決する可能性を持つ技術として、気候エネルギー関連の大臣会合において初めて認識。
・自動車: 2030年までの高度に脱炭素化された道路部門へのコミットを再確認し、G7及びG7以外のメンバーが採る多様な道筋を認識。2035年までにG7の保有車両からのCO2排出を少なくとも共同で50%削減(2000年比)する可能性に留意。水素、合成燃料・バイオ燃料等の脱炭素燃料への言及、バッテリーサプライチェーンの追跡性・持続可能性、バッテリーリサイクルなど持続的な脱炭素化に言及。
・ 国際海運: 2050年までのGHG排出ゼロを達成するための取組みの強化。
・国際航空: 長期目標達成に向け、持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進を含む世界的な取り組みを加速することにコミット。
・建築物: 化石燃料から、ヒートポンプ等クリーンエネルギーへのトランジション推進。ライフサイクル全体での建築物の脱炭素化の重要性を議論。
<レジリエンスの強化、最も脆弱な人々等に対する気候行動の支援>
・地域主体の適応の実施支援(豪雨・熱中症等への対応を含む)
・ロス&ダメージへの対応に関し、脆弱な国の支援に対するアクセスを向上させるため、「G7気候災害対策支援インベントリ」を策定。
・都市間連携や知見共有を通じた地方自治体の行動促進の重要性を確認、「地方の気候行動に関するG7ラウンドテーブル」を設立。
・気候資金目標を満たすための協働、緑の気候基金の二次増資プロセス歓迎、ロス&ダメージ移行委員会の議論に積極的に参加。
・適応やロスダメに対応するための民間部門の役割(インフラやサプライチェーンの強靱化への投資等)を認識。
・国際開発金融機関(MDB)等による脆弱な国に対する資金動員の強化。
~~~~~~~~~~~~~~引用ここまで~~~~~~~~~~~~~~~~~
国内のNGOなどが出した声明を読むと、今回の採択内容の位置づけなどをより多角的に考えることができます。
【WWF 声明】WWF は、G7環境大臣会合「2035 年温室効果ガス 60%削減」必要性の表明を歓迎するも、日本の電力脱炭素化へのリーダーシップ欠如を憂う
https://www.wwf.or.jp/activities/statement/5290.html 
【気候ネットワーク 声明】G7気候・エネルギー・環境大臣会合閉幕にあたって
―日本は議長国として、石炭火力発電の全廃時期も含めた1.5℃への具体的な道筋を示すべき(2023年4月17日)
<https://www.kikonet.org/info/press-release/2023-04-17/g7_sapporo>
【オルタナ】GX・石炭・アンモニア、「G6対日本」の対立構図が鮮明に
消費者の行動やライフスタイルの変容による需要側の対策の強化、
https://www.alterna.co.jp/78807/
個人的には、いろいろなプラットフォームを立ち上げて、知見や情報を収集・蓄積していくことも大事だとは思いつつ、実際の行動変容や変化を創り出すための、もっと強い一押しがほしい......!
https://www.es-inc.jp/insight/2023/ist_id012623.html

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4章 新型コロナが残したもの:(3)1000万人のコロナ孤児が待ち受ける過酷な運命

2023-04-23 | 先住民族関連
nippon.com2023.04.22石 弘之

コロナ禍で孤児となった1000万人以上の中には、貧困層や人種的・民族的マイノリティーとしてもともと弱い立場に置かれていた子どもが多い。彼らは、教育、幸福度、健康の面でさらなる重荷を負わされることになった。また、コロナ禍はエイズへの関心を低下させ、検査や治療の遅れでエイズ孤児をさらに増やす恐れがある。パンデミックは社会の脆弱(ぜいじゃく)層を狙い撃ちにする。
1000万人以上のコロナ孤児
新型コロナによる全世界の死者数は、2023年3月時点で約690万人という膨大な数にのぼる。埼玉県の人口が730万人、千葉県の人口が630万人だから、大都市圏の一つの県に暮らす人々がそっくり消えてしまったことになる。この死者の陰で多くの孤児(0~17歳)が発生していた。親もしくは保護者を失った子どもの数は、2022年5月1日現在、世界で約1050万人にのぼるという推定を、米国小児科学会が発表した。米疾病予防管理センター(CDC)、世界保健機関(WHO)、国際児童基金(UNICEF)など13の国際機関が協力して調査したものだ。
米ハーバード大学などの研究チームによると、2020年4月1日から 21年6月30日までの間に、米国だけで約 12万人の子ども(18歳未満)が、親や親権を持つ祖父母、介護者を失ったという。さらに2万2000 人の子どもが、2次介護者(主として祖父母や親戚)の死を経験した。孤児の問題は新型コロナ流行における現在進行中の2次的な悲劇であり、パンデミックがつづく限り次の世代に引き継がれていくことになる。
孤児の発生には人種的、民族的、地理的な差がある。米国の総人口の61%を占めるのは白人だが、コロナ孤児の65%までが人種的・民族的マイノリティーの子どもだ。孤児となることは子どもに過酷な境遇を強いることになる。学校の中退、自殺、暴力被害、性的虐待、搾取などに陥るリスクが高まる。研究チームは「これらの調査結果は、パンデミックによってもっとも脆弱な立場に置かれた子どもたちの実態を明らかにしている。今すぐに彼らを守る施策が必要だ」としている。
新型コロナによる死亡率と入院者数は先進国では減少している一方で、低所得国では死亡者数が増加している。低所得国の人口の3分の1がワクチン接種を受けていない。インドでは流行の激しかった2021年春には毎日4000人前後が命を落とし、このために孤児が急増した。2020年3月から2021年4月までの間に、インドでは10万人以上の子どもが孤児になったであろうと国連の「児童の権利委員会」(CRC)は推定している。
インドの主要ニュース週刊誌「インディア・トゥデイ」の調査報道によると、怪しげな複数の組織がSNS などを通じてコロナ孤児の人身売買取引を持ちかけているという。ある組織は、2人の孤児を150万ルピー(約250万円)で売りに出していた。病院の医師が違法取引を仲介する例もあった。
国連児童基金(UNICEF)のヘンリエッタ・フォア事務局長は、「新型コロナによって生まれたもっとも脆弱な存在は孤児たちだ。家族や家庭から引き離された子どもたちの権利を守り、彼らをウイルスのまん延から保護するために団結することは、国際社会の責務だ」と訴えている。
キャンベラにあるオーストラリア国立大学(ANU)の研究チームが、コロナ孤児の組織的な調査をつづけている。オーストラリアでは、2023年1月末までに関連死を含めて約2万人が死亡した。この事実から推定すると、約 2600人が孤児になった可能性がある。関連死を含めて新型コロナの死者100人ごとに、約13人の子どもが両親の一方または両方を失ったみられる。
研究者のひとりコラム・コーは、「成人と高齢者に比べて、新型コロナの18 歳未満の死亡率は極端に低い。これは、一家で感染すると親や介護者は死亡しても子どもだけが生き残り、彼らが孤児になる可能性が高いことを意味する。孤児の増加は、パンデミックの隠された悲惨な現実だ」と述べている。
「孤児は、精神衛生、健康、教育、長期的な幸福度などの面で大きな被害を受ける。新型コロナは現世代だけでなく、次世代に大きな禍根を残したことを忘れてはならない。とくに、先住民や農村地域に暮らす家族のようにきずなが強いコミュニティーでは、両親の一方または両方の死は子どもたちに強い精神的な打撃を与える」 
ペスト禍では捨て子が横行
感染症の歴史を振り返ってみると、パンデミックが起きれば必ず多くの孤児が社会からはじき出されてきた。14世紀に欧州を席巻したペストがもたらした荒廃は史上最悪の悲劇を招いたが、とくに子どもたちにとっては過酷なものになった。わが身を守るのが精いっぱいの大人たちは、子どもをかまってなどいられない。当時の年代記作者の記述には、両親による「子捨て」が横行した事実が数多く語られる。
イタリアの年代記作者が書き残した記録には、こんな一節がある。「ある子どもがこう叫んでいる。お父さん、どうして私を見捨てたの。 私があなたの子どもであることを忘れたの。お母さん、どこへ行ったの。昨日はあんなに優しくしてくれたのに。今はどこにいるの」
ジョヴァンニ・ボッカチオの『デカメロン』は、1348年にイタリアのトスカーナ地方を襲ったペストの流行から逃れるために邸宅に引きこもった10人の男女が、退屈しのぎに交代で面白い話を語り合う物語だ。当時のペスト流行の様子が生々しく語られている。「教会の墓地という墓地に深い溝が掘られて、運ばれてきた亡きがらが何百となく投げこまれた。死体は層をなし、たちまち溝からあふれ出した」。さらに「ほとんど信じられないことに、父親と母親が自分の子どもを自分のものではないかのように育てたり助けたりすることを拒否した」という一節もある。
1918年から 1920年にかけて世界がスペイン風邪のパンデミックに巻き込まれたとき、両親のひとりまたは両方を失った子どもたちが街にあふれ出した。米国では、67万5000人が死亡したが、その約半数は20歳から45歳の子育て期にあり、 孤児の数は数十万人に上ったと思われる。たとえば、1918年の最悪の3カ月間で、ニューヨーク市では2万1000人、ペンシルベニア州では4万5000人が新たに孤児となった。孤児は貧困層に集中した。
新型コロナの流行でエイズへの関心が低下
1980年代にはじまったエイズの世界的な流行も、現在までに8420万人の感染者と約4010万人の死者を出し、いまだに収束していない。感染者の数はドイツの人口に匹敵し、死者数は新型コロナの約6倍にもなる。このパンデミックで膨大な数の子どもが孤児となった。WHOの推定では流行開始から2020年末までに、190万人の子どもたちが両親のひとりか両親を失った。彼らの4分の3は、サハラ砂漠以南のアフリカに暮らしている。
私は、エイズ孤児の発生がピークを迎えた2000年前後に、アフリカ南部のザンビアにある日本大使館で働いていた。エイズ死者数のワースト10に入る国で、エイズはあまりにも日常的だった。大使館の現地職員やその家族、レストランや理髪店の店員、出入り業者らが突然に姿を消し、しばらくたってからエイズが原因で亡くなったことを知らされた。
エイズの感染経路は輸血、注射の回し打ちなどさまざまだが、性感染症がもっとも多い。婚姻者間でのエイズ感染は、子どもが両親を失う可能性が高いことを意味する。一時はアフリカの大都市にあふれたストリート・チルドレンも、エイズ孤児が目立って多かった。これらの子どもたちの大半は物乞いや強盗、少女の多くはセックス・ワーカーとして生きざるを得ない。親を失った子どもたちは、自分では解決できない重荷を背負わされた最弱者といってよいだろう。
私もザンビアの孤児院や病院などを回って実情を聞き取り、日本のNGOにも支援を呼びかけた。15歳ぐらいからセックス・ワーカーとして働き、本人もエイズに感染した少女が数多く収容されていた。男児の場合には、拉致(らち)されて少年兵として反政府軍に組み込まれる例が後を絶たなかった。
現在でも、年間10万人を超える子どもたちがエイズ孤児となっている。国連の新たな報告書は、「新型コロナの流行によってエイズへの関心が下がっている」と懸念する。感染率の高いアフリカ諸国における乳児のエイズ検査は 50~70%も減少し、14 歳未満の子どもに対する新たな治療はこの3年間で25%も減った。いくつかの国では、感染者の医療施設への収容、妊産婦の エイズウイルス(HIV) 検査および抗ウイルス薬の治療開始が大幅に遅れるようになった。こうした事態も新型コロナのパンデミックがもたらした悲劇だといえよう。
(文中敬称略)
バナー写真=新型コロナのパンデミックの中で、イード アル フィトルの祈り(ラマダンの終わりを告げる祈り)をささげるイスラム教徒。南アフリカ・ケープタウンのモスクで。2021年5月14日撮影(この写真は記事の内容に直接の関係はありません)(Photo by Xabiso Mkhabela/Anadolu Agency via Getty Images)
https://www.nippon.com/ja/japan-topics/b09519/

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2022年のアメリカの国立公園訪問数、パンデミック前のレベルに回復

2023-04-23 | 先住民族関連
観光経済新聞2023.04.22
 アメリカ国立公園局は、2022年のアメリカの国立公園訪問数がパンデミック前のレベルに回復したと発表した。
アメリカ国立公園局(NPS)はこのたび、国立公園を含むNPSが管理を行う施設の2022年の年間訪問者数を発表し、訪問者の合計が約3億1,200万人に達し、前年同期比で5%増加したことを明らかにしました。2020年は、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大とそれに伴うロックダウンにより、NPSの管理地への訪問者数は前年比で27.6%減少しましたが、2021年と2022年の2年間で大きな回復をみせ、2022年末までにほぼパンデミック以前のレベルにまた戻っています。
具体的な訪問者数は、2021年が2億9,700万人で、2022年は3億1,200万人となり、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大以前の 2019年の訪問者数(約 3 億 2,750 万人)に迫っています。このうち、国立公園の訪問者の合計は、2021年は9,220万人、 2022年は8,860 万人で、これは2019年の9,100万人にほぼ到達するレベルで、2020年の6,790万人から大幅に回復しています。NPSの報告書では、「訪問者数は新型コロナウイルス感染症の世界的拡大以前の水準に回復した」と記されています。
NPSの管理地への訪問者数推移と1979年~2022年までの国立公園の訪問者数の推移
2022 年に最も訪問者数を集めた国立公園のトップ 5 は以下のとおりです。
第1位 グレートスモーキー山脈国立公園(テネシー州とノースカロライナ州)訪問者数1,290万人(全体の14.59%)

2022年に最も訪問者数の多かった国立公園で1 位を獲得したのは、グレートスモーキー山脈国立公園です。昨年の訪問者数は1,300万人近くを記録し、イエローストーン、ヨセミテ、グランドキャニオン国立公園の訪問者数を合わせた数を上回りました。2022年の訪問者数は2021年の1,410万人には達しませんでしたが、2019年の1,250万人を上回る結果でした。 世界遺産に登録されている同国立公園は2,100平方キロメートルの広さを有し、ノースカロライナ州とテネシー州にほぼ均等にまたがっています。常に発生している朝の霧からスモーキー山脈と呼ばれる山脈は、植物の多様性、豊富な野生生物、歴史的建造物、美しい古代の山々でその名を世界に轟かせています。ジップラインとハイキングは特に人気のアクティビティで、約1,300キロを超えるハイキングトレイルがあり、冬には凍った滝、春には野生の花を見ることができます。また、約4,700キロに及ぶ小川が流れており、1年を通して釣りができます。この公園には、30種類のサンショウウオ、4千種の植物、140種の樹木、約65種の哺乳類、200種の鳥類、67種の在来魚種、約1,500頭のクマ、80種類以上の爬虫類と両生類が生息しています。入場は年中無休ですが、車で来園の場合は駐車タグを購入する必要があります。料金は5ドル(約700円)~です。
第2位 グランドキャニオン国立公園(アリゾナ州)訪問者数470万人(全体の5.34%)
2022年中、 470万人以上がグランドキャニオン国立公園を訪れ、2 番目に多くの人が訪れた国立公園になりました。訪問者数は、450万人が来園した2021年から微増で、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大前の2019年に記録した600万人には程遠い数字です。この世界遺産は1919年に国立公園に指定され、コロラド川によって何百万年も前に切り開かれた広大な赤い岩で知られています。この公園は、端から端まで約450キロにわたり、平均の低高差は約1,200メートルで、アメリカで最も有名なランドマークの 1 つとなっています。アリゾナ州北部に位置し、ネバダ州とユタ州の州境から数時間です。ハイキングに加えて、サイクリングトレイルでのサイクリング、ラバの旅をしたり、ボートやいかだで峡谷を探索したりして、秘境の滝や峡谷を散策することもできます。入場料は1人あたり20ドル(約2,700円)、または車1台(すべての乗客を含む)につき35 ドル(約4,800 円)です。
第3位 ザイオン国立公園(ユタ州)訪問者数470万人(全体の5.29%)
第3位のザイオン国立公園の2022年の訪問者数は470万人弱で、2021年に記録した500万人からはわずかに減少していますが、2019年の450万人よりは増加しました。ユタ州に位置し、1919年に国立公園に指定され、約600 平方キロに及ぶ赤い岩の景観、高台、カラフルな空中庭園のある砂岩の峡谷と滝の迷路があります。長さ約24キロのザイオン渓谷沿いで、ロッククライミング、キャニオニング、川遊び、ハイキングコースなどを楽しめます。ザイオン国立公園への入園パス(1週間有効)は、個人1人あたり20ドル(約2,700円)、または車1台(すべての乗客を含む)につき35ドル(約4,800円)です。
第4位 ロッキーマウンテン国立公園(コロラド州)訪問者数430万人(全体の4.85%)
4位になったロッキーマウンテン国立公園には2022年度、430万を超える人々が訪れ、2021年の440万人、2019 年の470万人に近づいています。国立公園は約1千平方キロで、山地の生活地帯に見られる牧草地、輝く高山湖、高くそびえる山頂、約500キロのハイキングコースなど、壮大な山岳環境が広がります。公園に生息する動物の数が多いため、写真家の間では国内トップの野生動物観察地の1つと捉えられており、3,000頭以上のヘラジカ、400頭のオオツノヒツジ、多数のミュールジカとヘラジカを観察できます。また、キイロマーモット、ナキウサギ、カンジキウサギ、フクロウ、ハチドリ、蝶、300種類近くの鳥などの小さな生き物も生息しています。公園の入園料は、移動手段や滞在期間に応じて、1人あたり15ドル (約2,000円)からです。また、10月から5月初旬までのピークシーズンには、時間指定の入場許可が必要となります。
第5位 アーカディア国立公園(メイン州)訪問者数約400万人(全体の4.48%)
第5位のメイン州にあるアーカディア国立公園には2022年、約400万人が訪れました。この数は、2021年の400万人強からわずかに減少していますが、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大前の2019年の340万人をはるかに上回っています。「北大西沿岸の王冠の宝石」として知られ、1919年に国立公園に指定された、北東部で唯一の国立公園です。雄大な森、静かな池、丸みを帯びた山々、野生の海岸線で知られています。43キロの歴史的な自動車道、254キロのハイキングコース、72キロの馬車道があります。交通手段にもよりますが、入場パス(1週間有効)は1人あたり15ドル(約2,000円)~です。
2022 年の最も訪問者数が多かった国立公園トップ 10(1万以下は四捨五入)
第1位 グレートスモーキー山脈国立公園(テネシー州とノースカロライナ州) 1,294万人
第2位 グランドキャニオン国立公園(アリゾナ州) 473万人
第3位 ザイオン国立公園(ユタ州) 469万人
第4位 ロッキーマウンテン国立公園(コロラド州) 430万人
第5位 アーカディア国立公園(メイン州) 397万人
第6位 ヨセミテ国立公園(カリフォルニア州) 367万人
第7位 イエローストーン国立公園(ワイオミング州) 329万人
第8位 ジョシュアツリー国立公園(カリフォルニア州) 306万人
第9位 カヤホガバレー国立公園(オハイオ州) 291万人
第10位 グレイシャー国立公園(モンタナ州) 291万人
また2023年中は次の日程で、全ての国立公園の入園料が一斉に無料となります。
・4月22日(土):国立公園週間初日
・8 月 4 日(金): グレート・アメリカン・アウトドア法記念日
・9 月 23 日(土):国立公有地の日
・11 月 11 日(土):退役軍人の日
*予約、キャンプ、宿泊、ツアー、割引、第三者が徴収する料金などのその他の料金は、特に明記されていない限り含まれていません。
写真のクレジット:National Park Service (グレートスモーキー山脈国立公園 左から1枚目、3枚目、グランドキャニオン国立公園 左から1枚目、3枚目、ザイオン国立公園 左から1枚目、2枚目、ロッキーマウンテン国立公園 左から1枚目、アーカディア国立公園 左から2枚目、3枚目、4枚目)
・アメリカ合衆国国立公園局(NPS)について
すべての国立公園、多くの国定記念物、およびその他の自然、歴史、娯楽施設を含む 423カ所の場所を管理するアメリカ連邦政府の機関。423カ所のうち、国立公園と見なされているのは63カ所のみです。公園が国立公園としての資格を得るには、公園が議会によって指定され、国家の重要性、適合性、および実現可能性などNPSの基準を満たさなければなりません。NPSは、アメリカの天然資源と文化遺産を保護および管理する米国内務省傘下の機関で、科学的な情報を提供したり、アメリカンインディアン、アラスカ先住民、アメリカ領の島のコミュニティなど、さまざまな先住民グループに対する責任と特別な取り組みを展開しています。
https://www.kankokeizai.com/2022年のアメリカの国立公園訪問数、パンデミック/

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ステークホルダーエンゲージメントはなぜ重要?具体的な取り組み事例も

2023-04-23 | 先住民族関連
HEDGE GUIDE2023.04.22
個人投資家の間でも、ESGに対する意識が高まってきています。「ステークホルダーエンゲージメント」という言葉を、聞いたことがある方もいるでしょう。
言葉は知っているけれど、具体的な取り組みやメリットについて知りたい方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、ESGに積極的に取り組んでいる花王の事例を元に、ステークホルダーエンゲージメントについて、具体的に見ていきたいと思います。
※本記事は2023年4月17日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
1.ステークホルダーエンゲージメントとは
そもそも、ステークホルダーエンゲージメントとは、どういうものなのでしょうか? ステークホルダーとエンゲージメントについて解説します。
1-1.ステークホルダーの概要
ステークホルダーを一言の日本語で表すと、企業の利害関係者です。たとえば、株主です。企業の業績が良く株価が上がれば利益を得られる一方、その逆なら損失を被りますので、株主はステークホルダーの一つです。
また、従業員もステークホルダーです。企業の業績の良し悪しで給料や賞与の額は変動し、経営危機になれば早期退職の募集なども考えられます。
顧客、取引先、地域社会や自治体、同業者も、企業活動によって利害があるため、ステークホルダーです。
1-2.エンゲージメントとステークホルダーエンゲージメント
エンゲージメントとは一般的に、何らかの関係を構築することを表します。一方で投資の世界では、株主(特に機関投資家)が企業に対して行う、建設的で目的を持った対話を指します。
もう少し噛み砕いて表現すると、株主と経営者が、どうしたらものごとが良くなるのか、積極的に有益な話し合いをすることです。
エンゲージメント単独では、株主と企業の関係を表すことに留まり、また対話の主体は機関投資家であると説明されることが多いようです。対して、ステークホルダーエンゲージメントは対話の主体が企業側であり、その相手もステークホルダー全体と多岐にわたります。
企業がESGに対する取り組みを進めるにあたって大切にしないといけないのが、世の中をよりよくしようという姿勢をもって、利害関係者としっかり対話をすることです。ステークホルダーエンゲージメントとは、まさにこのことを指す言葉です。
1-3.ステークホルダーエンゲージメントはなぜ重要?
それでは、ステークホルダーエンゲージメントの重要性はどういったところにあるのでしょうか。企業・投資家・顧客・社会全体の、それぞれの視点で見てみます。
まずは、企業側の視点で考えてみましょう。企業の社会的信頼やイメージの向上がステークホルダーエンゲージメントに取り組むメリットとして思い浮かびやすいかもしれませんが、それだけではありません。
ステークホルダーエンゲージメントとは、企業を取り巻く周囲の声をよく聴き、対話を行い、それに基づいた改善をしていくことを指します。真摯に取り組むことは、世の中のニーズに合った商品やサービス作りにも役立ち、長期的には企業の収益向上にもつながる可能性があることが想像できます。
次に、投資家側の視点です。例えば株式の投資家は、企業のオーナーとして、企業価値の向上を望む立場です。
投資先企業が、しっかりとステークホルダーエンゲージメントに取り組むことで、長期的には企業価値向上に繋がることが期待できます。さらに、企業が積極的に投資家に情報開示をしてくれることで、投資判断がしやすくなるというメリットもあります。
顧客側の視点ではどうでしょうか。たとえば、企業が顧客アンケートを行い、結果を製品に反映させることもステークホルダーエンゲージメントの一つです。より良い製品が顧客の手に渡ることで、生活の質が向上することが期待できます。
また、製品についての情報開示をきめ細かに行うことで、顧客側は、より自分の意向に合った商品を選ぶことができ、満足度の向上にもつながります。
最後に、社会全体の視点から見てみましょう。企業のステークホルダーは、様々な方面にわたって存在します。多くの企業が、各ステークホルダーと適切な関係性を築き、協働して物事を動かすことができれば、世の中全体が加速度的に良くなる可能性があると考えられます。
企業がステークホルダーエンゲージメントに取り組むことで、企業自身のメリットにもつながるうえ、広く世の中に利益をもたらすことが期待されます。
2.花王の事例を紹介
ここまでは、ステークホルダーエンゲージメントについて、一般的な内容を説明してきました。より具体的に知るために、ESGに積極的に取り組んでいる花王の事例を見ていきましょう。
2-1.花王のステークホルダー
花王は、日本の生活用品メーカー最大手の1つです。同社のステークホルダーは、株主、社員、顧客の他にも多岐にわたります。
たとえば、サプライヤーです。サプライヤーとは、企業が製品を作るために必要な原材料や、サービスを供給する企業などのことです。
花王の場合は、石鹸・洗剤などの生活用品を作るのに欠かせない素材として、パーム油があげられます。パーム油のメーカーや農園などがサプライヤーの代表格になります。なおパーム油には、厳密には果肉から取れるパーム原油、種子部分から取れるパーム核油があるものの、当記事では両方の総称として「パーム油」を用いることとします。
また各地にある事業所、工場、研究所などの周辺地域社会も大事なステークホルダーの一つです。企業活動に伴い、廃棄物や排水・排気などにより、地域環境にネガティブな影響を与える面もあります。しかし企業の工場や事務所がその地域にあることで、雇用が生まれるというポジティブな面もあります。
その他、行政や自治体、業界団体や同業者などで関係性があるところは、同社のステークホルダーといえます。
2-2.どのステークホルダーとどんな対話をしているのか?
花王は各ステークホルダーとどのような方法で対話をしているのでしょうか。例を見ていきましょう。
株主に対しては、主に決算や経営についての説明、それに対する株主からの質問に答えることなどが求められます。そのための場として、年1回の株主総会や四半期に1回の決算説明会をはじめ、事業説明会や個人株主向け説明会、社長スモールミーティングも随時行われています。
消費者に対しては、製品に関する意見を聞くことや、製品に関する正しい知識・使い方の啓蒙をすることが大切です。活動としては、相談の場やモニターの家庭訪問、イベントなどが随時行われています。
良いものづくりに欠かせないパートナーであるサプライヤーとのエンゲージメントとしては、品質向上会議や、花王の求める基準の遵守状況についてモニタリングが行われています。
その他にも、行政、業界団体、NGO・NPO、公共の研究機関などの外部組織との間では、随時意見交換会が開かれるなどの交流が持たれています。
2-3.具体的な取り組み事例
〇〇会、〇〇ミーティングなどと言われても、ピンとこない方は多いと思います。ここからは、身近な事例も含めた、より具体的な取り組み内容をご紹介します。
まず、対サプライヤーについての事例です。前述の通り、花王のサプライヤーの代表格として、パーム油農園やメーカーが挙げられます。しかし、パーム油生産は、ESGの観点で大きな問題を抱えています。
たとえば、環境問題です。パーム油は、アブラヤシという植物の実から取れます。主な産地は東南アジア、とりわけインドネシアやマレーシアなどの熱帯雨林が豊かな地域です。
アブラヤシの農園を新規で作るためには、こうした森林を切り開く必要があります。そのため、パーム油の生産活動は、森林破壊とそれに伴う野生動物の生息地縮小に繋がってしまいます。
更にアブラヤシ農園では、人権問題も深刻です。農園で働く労働者に対しては、暴力や脅しなどを伴う強制労働や、契約期間や条件を明示しないなどの労働環境問題、児童労働などの問題が存在します。
米国労働省による報告書「児童労働または強制労働によって生産された品目リスト」の中では、マレーシアでは児童労働や強制労働、インドネシアでは児童労働のリスクがある生産物として、アブラヤシの実が指定されています。また、先住民の人権問題も抱えています。
こういった問題の解決に向けて、花王はサプライヤーと、どのようなエンゲージメントを行っているのでしょうか。
前述の問題については、大規模なパーム油生産企業よりも、小規模農園の方がより深刻です。小規模パーム農園に対する支援として、「SMILE」(SMallholder Inclusion for better Livelihood & Empowerment program) というプログラムが開始されました。
花王と、インドネシアのアピカルグループ(油脂製品製造・販売会社)、同アジアンアグリ(農園会社)の3社が協働して、インドネシアの小規模パーム農園の生産性向上、持続可能なパーム油に対する認証(RSPO)の取得を支援するものです。内容としては、経験豊富な指導グループが農園を訪問し、持続可能性に配慮した生産管理や、生産性向上のための教育、RSPOの認証取得に向けた支援、安全対策や教育が行われています。この取り組みは、2030年まで行われる予定です。
身近な取り組み事例として、顧客(生活者)との対話事例をあげておきましょう。花王がどんなに環境負荷の低い製品を作ったとしても、消費者が使い方を間違えれば、効果は下がり、ゼロになることもあります。
たとえば、すすぎ1回の衣料用洗剤を開発しても、生活者がすすぎ2回で洗濯をすれば、意味がありません。製品の環境価値を正しく伝え、正しく行動してもらうことが非常に大切です。花王はさまざまなイベントを通じて、CO2削減の重要性や同社の活動、製品の環境価値を伝える取り組みを行うことで、生活者の啓蒙に努めています。
もう一つ、身近な事例として、地域や大学との協働事例をご紹介します。「使用済み紙おむつ」の環境負荷について知っていますか?
紙おむつは、現代社会の子育てに欠かせません。昨今では高齢化により、赤ちゃんだけではなく、大人向けの紙おむつの使用量も増加しており、環境に与える影響が更に大きくなると予想されています。
使用済み紙おむつは、現在、年間200万トン以上がごみとなっており、その割合は可燃ごみの4~6%を占めると言われています。また、水分量が多く、焼却炉の燃焼効率を悪化させる原因にもなり得ます。
花王はこの問題に対し、京都大学と、花王サニタリープロダクツ愛媛(おむつなどの生産拠点)のある愛媛県西条市の協力のもと、紙おむつのリサイクルにかかる実証実験をすることで解決に向けて取り組んでいます。
実証実験の現場は、西条市にある保育施設です。リサイクルの概要は、紙おむつを炭素化(炭にすること)し、活性炭などの炭素素材として空気や水の浄化、植物の育成促進などに役立てるというもので、ごみの削減と二酸化炭素排出量の削減が期待されます。
取り組み内容としては、対象の施設に開発した炭素化装置を設置、使用済み紙おむつを殺菌・消臭、体積を減らしたうえで回収し、前述の方法でリサイクルをする、というものになります。今後の予定としては、2023年までに炭素素材への変換技術を確立、2025年以降の社会実装を予定している、とのことです。
実用化されれば、紙おむつによる環境負荷を減らすことができるだけでなく、保育施設や老人ホームでの職員の負担軽減にも役立ちます。一般家庭向けの展開については言及がないものの、もし一般家庭がこの設備を使える仕組みが整えば、家庭でのにおい問題なども解決されるのではないかと期待が持てます。
その他にも、花王は「リサイクリエーション」という取り組みを実施しています。今では広く浸透した詰め替えパッケージですが、詰め替えた後は、ごみとして捨てるしかありません。プラスチック使用量はボトル容器よりも少ないものの、詰め替えパッケージ自体もリサイクルできれば、より環境負荷を減らすことができます。
花王は、地域やNPO、同業他社と協働して実証実験を行っており、特定の地方自治体で詰め替えパッケージの回収が行われています。東京都墨田区で、同業のライオンと協働して行われた実証実験では、洗浄・乾燥して出すことについても、多くの方の協力が得られることが確認できたようです。
詰め替えパッケージは中身の保護のため複雑な構造をしているため、水平リサイクル(リサイクルにより元の製品と同じものを作ること)が困難と言われています。しかし花王は、最終目標をこの「水平リサイクル」の実現と位置付けて、前述した回収の実証実験と並行して、リサイクル技術の研究も行っています。
3.まとめ
ステークホルダーエンゲージメントと聞くと、分かりにくい印象を持つ方も多いでしょう。一方で花王の事例は私たちの生活に根ざしたものも多く、具体的なイメージが湧きやすかったのではないでしょうか。
ステークホルダーエンゲージメントからは、企業のESGに対する取り組みの熱量を感じることができます。投資先や投資を検討している先がESGにしっかりと取り組んでいるか気になる場合は、ステークホルダーエンゲージメントの事例を調べてみると、ヒントが得られるかもしれません。
https://hedge.guide/feature/stakeholderengagement-kao-esg2023.html

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多様性とメディア、企画展始まる 横浜・日本新聞博物館で

2023-04-23 | アイヌ民族関連
千葉日報2023年4月22日 21:00 | 無料公開
 ジェンダー平等や性的少数者への配慮といった多様性の尊重が求められる中、こうした内容に関する記事やニュースの歴史を紹介し、報道する業界内での取り組みのあり方を考える企画展「多様性 メディアが変えたもの、メディアを変えたもの」が22日、横浜市中区のニュースパーク(日本新聞博物館)で始まった。8月20日まで。
 1903年に大阪で開かれた博覧会でアイヌや沖縄、台湾などの人たちを「見せ物」扱いした人種差別的な施設に関する記事や、男尊女卑の気風が根強く残っていた大正時代に生まれた、女性向けの「本格的な家庭面」の紙面など約300点を展示。
https://www.chibanippo.co.jp/newspack/20230422/1051278

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