Netflix2023年4月28日
ベラ・バジャリア最高コンテンツ責任者
インド系移民の両親のもとイギリスに生まれた私は、ザンビア、そしてアメリカで育ちました。その中で気づいたのは、大好きなTV番組や映画の登場人物たちに自分と似た人がいないこと、そして自分が経験したような物語を語る人もいないということでした。その後テレビ業界に足を踏み入れた私は、毎月たくさんの脚本にコメントをつけていくうちにあることに気づきます。それは自分の生い立ちがとてつもない力を持っていて、物語に対して人とは違う視点を与えてくれるということでした。私は今、世界中のクリエイターたちと一緒に新しい物語を世に送り出し、その声を届けることにワクワクしています。その中で、まだ私たちに届いていないのはどの声なのかを理解することはとても重要だと考えています。
その取り組みの一環として、2年前Netflixは、ステイシー・L・スミス博士と南カリフォルニア大学 (USC) アネンバーグ・インクルージョンイニシアティブに協力を仰ぎ、アメリカで製作されたNetflixの映画・シリーズ作品を対象として、いくつかのインクルージョン指標 (性別、人種・民族、LGBTQ+、障がい、など) に基づく調査を開始しました。2026年まで2年ごとにこの活動の進捗を皆さんにご報告するとともに、企業としての責任を果たし、この業界に持続的な変化をもたらす一助となればと考えています。
USCとの共同調査により、作品に関わるスタッフのバックグラウンドが多様であればあるほど、作品自体のリプレゼンテーションも向上することがわかっています。そこで2021年、私たちは「Netflixクリエイティブ向け創造支援基金」を設立し、世界各地の過小評価コミュニティに属す才能ある人たちにより多くの機会を提供すべく、5年間で1億米ドルの投資を行うことを決めました。本日は、こうした活動の進捗と、その結果に基づく今後の活動についてご報告したいと思います。
USCのアネンバーグ・インクルージョンイニシアティブと行った最新の調査結果について
アメリカで製作された、2020年から2021年のNetflixの映画・シリーズ作品を検証した結果、女性および過小評価されている人種・民族グループの扱いに、前年と較べ明らかな改善が見られることがわかりました。
* Netflix作品の主演俳優の男女比率が均等化: 2018年から2021年のNetflixの映画・シリーズ作品の半数以上 (55%) で、女性が主演または助演を務めています。
* 有色人種の主演俳優のリプレゼンテーションが増加: 2020年から2021年のNetflixの映画・シリーズ作品の半数近く (47%) において、過小評価されている人種・民族グループの俳優が主演または助演を務めています。
* 製作スタッフの女性の割合が増加: 2021年に興行収入上位を記録した映画のうち、監督が女性であった割合が12.7%であったのに対し、Netflix映画では26.9%でした。また、2021年のシリーズ作品においてクリエイターが女性であった割合は38%で、2018年の26.9%と比較して大幅に増加しています。
* 有色人種の女性キャスト・スタッフの大幅な増加: 2021年のシリーズ作品のうち、監督が有色人種の女性であった割合は11.8%で、2018年の5.6%から確実に増加しており、脚本担当やクリエイターといった役職でも同様の傾向が見られます。また、2021年に配信された3分の1近く (27.7%) の映画と半数以上 (54.75%) のシリーズ作品で、有色人種の女性が主演または助演を務めています。
しかしながら今回の結果では、ラテンアメリカ系、中東・北アフリカ系、先住民族、ハワイ先住民・太平洋諸島民といった特定の人種や民族グループのリプレゼンテーションが依然として低いことがわかりました。また、障がいを持つキャラクターのリプレゼンテーションについても、低い割合に留まっています。報告書要旨はこちらから、報告書全文はこちらからご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=QAycy9P-1v0
Netflixクリエイティブ向け創造支援基金の進捗状況について
2021年、Netflixは「Netflixクリエイティブ向け創造支援基金」を設立しました。この取り組みを通して、私たちはクリエイターがNetflix作品に参加するためのトレーニングを提供すると同時に、才能ある人々がエンターテインメント業界で成功するための手助けをしています。
* 世界中の新進気鋭の才能への投資: わずか2年間で、Netflixは35を超える国々の80以上の組織と提携し、100以上のプログラムに2900万米ドルの投資を行いました。
* 製作現場と育成の両面からパイプラインを構築: この基金では、監督、プロデューサー、脚本家、視覚効果アーティストなど、4500人以上のクリエイターに、彼らが地元の業界で働いていくための準備として、資金やトレーニングなどの支援を行ってきました。また、Netflixが資金を提供するプログラムで作られた短編映画は、40を超える映画祭で上映されました。
* Netflix作品に携わる機会を創出: これまでに、395名のプログラム参加者がNetflixの作品に携わってきました。その役割はラインプロデューサーから、アソシエイト編集者、キャスティングアシスタント、機材担当など多岐にわたります。こうした研修生たちは、イギリスの「クイーン・シャーロット ~ブリジャートン家外伝~」や、フランスの「Lupin/ルパン」、ナイジェリアの「ブラッド・シスターズ」、カナダの「You Are So Not Invited To My Bat Mitzvah! (原題)」、アメリカの「デイ・シフト」「Rebel Moon (原題)」など、世界中のNetflix作品の製作に参加しています。また、Netflixが主催する「Series Director Development Program」の参加者たちは、大きな話題を集めたNetflixシリーズ、「オザークへようこそ」「ファミリー・ストーリー ~これみんな家族なの?~」「マイ・ブロック」「ロスト・イン・スペース」などで、エピソード監督を務めました。
https://www.youtube.com/watch?v=HexKLoJOm3I&t=197s
プログラムのハイライトはこちらからご覧ください。ここからは、まだまだたくさんある課題に向けて、今後取り組んでいく新しいプログラムについてご紹介していきます。
* Shondaland Producers Inclusion and Ladder Initiatives (アメリカ): プロデューサー・インクルージョンイニシアティブの新プログラム。製作スタジオのシステムにおいてリプレゼンテーションの低いグループのためにラインプロデューサーのトレーニングを行います。また、13名の研修生は現在、近日公開予定のNetflixシリーズ「The Residence (原題)」のセットで製作職や技術職に就いています。
* Gold Producers Accelerator presented by Gold House, AUM and Netflix (アメリカ): ニナ・ヤン・ボンジョヴィが主催するこのプログラムは、アジア・太平洋諸島系民族のプロデューサーたちに対し、インディーズ映画製作の現場で有償で働く機会を提供するほか、メンターシッププログラムやカスタマイズされたマスタークラスも行います。
* imagineNATIVE Production Mentorship Program (カナダ): 先住民族のクリエイターのために、カナダの制作現場でメンターシップの機会を提供します。
* Netflix x Film Companion Take Ten Program (インド): 5人の新進気鋭のインド人映画製作者に対し、リミテッドシリーズを制作する機会と業界トップの専門家たちから学ぶ機会を提供します。
* 欧州視聴覚研究所 (EAVE)、ハウスオブヨーロッパ、ニューヨークフィルムアカデミー、ウクライナフィルムアカデミー (ウクライナ): ウクライナのプロデューサーとラインプロデューサーを対象に、オンラインのマスタークラスの参加募集が新たに開始されました。
これらの最新の調査結果や、Netflixクリエイティブ向け創造支援基金における最初の2年間が与えてきた影響には勇気づけられます。しかし、一企業としてだけではなく業界全体に真の変化をもたらすためには、まだ聞こえない声に耳を傾け続けること、そして次世代のストーリーテラーを見つけていくことが大切なのだということに確信を持ってこれからも取り組んでいきます。
https://about.netflix.com/ja/news/making-progress-our-latest-film-and-series-diversity-study-and-netflix-fund