Dutch Life 備忘録

オランダのミュージアム、コンサート、レストランなどについて記録するノート。日常的な雑記も…。

本「映画と本の意外な関係!」

2017-06-30 15:49:18 | Book
町山智浩著「映画と本の意外な関係!」を読了。
映画を取り上げ、その中に出てくるセリフが、実はある本に基づいていて、その本はこういう本でというように、いろいろと事実がつながっていくさまが面白かったです。
全部で22章、つまり22本の映画がメインに取り上げられています。メジャーな映画もありますが、古い映画や少しマイナーなものもあり、私は実際に見たことがあるのは四分の一くらいでした。
映画を見たことなくても読んで問題ないですが、やはり見ていたほうが理解しやすいと思います。
私が見たことがあったのは、「インセプション」「トゥルー・グリッド」「ミッドナイト・イン・パリ」「恋人たちの予感」「007 スカイフォール」でした。
英文学の素養があると元ネタの作家のことがよくわかるので、もっと楽しめるでしょうね。
この本、新書です。簡単に読めちゃいます。

本「蜜蜂と遠雷」

2017-05-30 09:49:03 | Book
恩田陸著「蜜蜂と遠雷」を読了。
今年の直木賞作品です。著者は受賞前からもう十分有名だったので、今頃直木賞という印象でした。
以前に「夜のピクニック」を読んだことがあり、青少年向けの作品だなあと思いました。それであまり他の作品には手をだしていなかったのですが、今回の作品は国際ピアノコンクールがテーマということで、クラシック音楽に興味があるので、面白いかなあと思い、読むことにしました。
ピアノの曲が、文章でこれほどまでに情感豊かに表現できるのかと、やはり著者の筆力に驚嘆しました。
たくさんピアノ曲が文中に出てくるのですが、どれも実際に聞いてみたくなります。
最後まで読んで、バルトークのピアノ協奏曲第三番を、早速聴いてみたりしました。
このコンクール、浜松国際ピアノコンクールをモデルにしているそうです。そう知って読むと会場のある町の様子が浜松らしく感じます。浜松浜松国際ピアノコンクールの第四回優勝者はアレクサンダー・ガヴリリュク、私が気に入っているピアニストです。
題名の蜜蜂は、コンクール参加者の「蜜蜂王子」とあだ名が付けられる風間塵という少年から来ています。彼の父親は養蜂家で、ピアノを持たない生活をしているにかかわらず、ピアノの腕前がすごい、天才少年です。この少年の年齢設定は16歳くらいだと思うんですが、なんか本の4分の3くらいまで会話の様子などから10歳位の印象でした。そこがちょっと、気になりました。
つい最近まで、実は題名を「蜂蜜(はちみつ)と遠雷」だと思っていて、題名の意味がいまいちストンとこないなあと思っていたのですが、「蜜蜂(みつばち)と遠雷」だとわかり、シックリきました。ミツバチの羽音も遠雷も自然の音です。
すごく楽しく読めました。次へ次へと、コンクールの結果はどうなるのかと、スリルもありました。
クラシック音楽が好きでない人にはちょっと退屈かもしれないけれど、クラシック音楽、ピアノが好きな人にはおすすめです。



本「宇宙はなぜこのような宇宙なのか」

2017-05-20 17:08:39 | Book
青木薫著「宇宙はなぜこのような宇宙なのか」を読了。
講談社現代新書で、副題は人間原理と宇宙論とあります。
宇宙はどうなっているのか、また物質の最小単位は何なのかという、とっても大きなことととっても小さなことが実はつながっているのではないかということに興味があります。
宇宙や素粒子物理学などをわかりやすく解説した入門書を読んだりしますが、読んだときはふむふむと思うのですが、そのうち細かなことは忘れてしまいます。
この本は、人間原理について説明していると同時に、簡単に歴史にそって、宇宙の捉え方の変化を解説しているということだったので、頭の整理ができるかなと思って、読んでみました。
とてもわかりやすく、読みやすく書いてありました。
宇宙が私たちがいて、観測して、あれやこれや推測している宇宙以外に、まだたくさんの宇宙がのだという理論が今はメジャーだということがよくわかりました。
こういう本を読むのは、何となく現実世界からの逃避なのかもしれませんが、好きです。

本「ジヴェルニーの食卓」

2017-05-01 14:11:42 | Book
原田マハ著「ジヴェルニーの食卓」を読了。
実在の印象派の画家(モネ、マティス、ピカソ、セザンヌ)をそれぞれそばにいた人の視点から描く短編集です。
史実に基づいたフィクションなので、実際の画家の背景がよくわかって、絵を思い浮かべて読むと、とてもいいです。
特に、モネとマティスの話がよかったです。すごく簡単に気軽に読めます。
この本を読んだあとは美術館に行きたくなります。なので、実際に行ったのですが、行った美術館には印象派の作品がまったくといっていいほどなくて残念でした。
この作家の美術関連の他の作品も是非読んでみようと思います。


本「ゲンロン0 観光客の哲学」

2017-04-25 13:27:51 | Book
東浩紀著「ゲンロン0 観光客の哲学」を読了。
批評家が書いた哲学書という位置づけの本。難しいかと思ったけれど、わかりやすく書かれていたので、最後までちゃんと読めました。
第一部観光客の哲学は、いろいろ哲学者の名前が出てきて、タームも難しく、じっくりゆっくりとしか読めなかったけれど、第二部家族の哲学に入ってからはかなりスピードアップして読めました。
今の状況が、コミュニタリアニズム(ナショナリズム)とリバタリアニズム(グローバリズム)の二層構造であるという説明は確かにそうだなと思いました。
いろいろと面白いと思ったところはあるのですが、いちばん最後の章のドストエフスキーの小説のところはよかったです。私はドストエフスキーの本をしっかり読んだことはないのですが、ドストエフスキーが生涯かけて小説を書いていき、その小説それぞれに意味があり、最後の『カラマーゾフの兄弟』は実は第一部で、第二部は書かれないまま彼は亡くなってしまった。第二部の展開が予想され、これによって彼の哲学が完成するという具合。
それから、ネットワーク理論の話も、知らなかったので新鮮でした。
最後の結論を含め、もっと私の頭の中で考えなければいけないことがたくさんあるのですが、日常に流されて忘れてしまいそうです。
この本を読んで、派生的に読みたいなあと思った本は、『「複雑ネットワーク」とは何か』と『郵便的不安たちβ』。
他に、本の作りがとてもいいです。下に注があるのはうれしいです。章末や巻末に注があると、参照しにくくて読まないことを多いのですが、下にあると必ず読みます。ところどころ、図や絵が入っているのも好きです。
中味が濃くて、とても良い本でした。

本「楽園のカンヴァス」

2017-04-19 10:22:14 | Book
原田マハ著「楽園のカンヴァス」を読了。
久しぶりに好きな作家を発見しました。この本とても私の好みでした。
アンリ・ルソーの絵画を題材にした小説で、現代と過去がうまく組み合わさせています。ベルエポックの頃の雰囲気がよくわかり、ピカソとルソーの関係など知らなかったことが書かれていて、とても興味深かったです。
アンリ・ルソーの絵は知ってはいますが、今まであまり関心はありませんでした。今度美術館に行ったら、じっくりと見てみたいなあと思いました。
またこの小説のメインの舞台になっている、スイスのバーゼルという町にも是非行ってみたいと思いました。すばらしい美術館があるようです。
それに大原美術館にも行きたいです。
美術館のキュレーターの仕事の話、日本の美術館と世界の美術館との力関係の問題など、ああそうなんだと思うことがいくつもありました。
今まで知らなかったの作家なので若い人なのかと思ったら、50歳半ばの人なんですね。そしてお兄さんが原田宗典。
この著者の他の作品を読んでみるつもりです。


本「ゲンロン4」

2017-04-05 20:03:51 | Book
雑誌「ゲンロン4」を読了。といっても2か月前のことです。ブログをアップするのを忘れていました。
東浩紀が編集長の批評誌です。「ゲンロン1」からずっと読んでいます。
今回の特集は「現代日本の批評III」。共同討議(市川真人、大澤聡、佐々木敦、さわやか、東浩紀)は2001年から2016年を扱っており、わたしが日本を離れてからのことなので、わからない部分も多かったですが、面白かったです。とても長い討議でした。
浅田彰への東浩紀のインタビューも、初めて知る話が結構あり、良かったです。
わかりにくい論考もありましたが、連載の「ダークツーリズム入門」や「他の平面論」などは簡単に読め、興味深い内容でした。
また新連載で、タイの文学が紹介されています。韓国やタイなど、知りづらい文学状況について情報が得られる貴重な雑誌です。
「ゲンロン0」が発行され、手元にもうあるので時間ができたら読むつもりです。

本「解縛 ―母の苦しみ、女の痛み―」

2017-03-09 10:04:01 | Book
小島慶子著「解縛 ―母の苦しみ、女の痛み―」を読了。
著者は元TBSアナウンサー。TVではまったく知らなかったけれど、ラジオの「キラキラ」という番組を聞いていて、そのメインパーソナリティーが彼女でした。
かなりはっきりとした物言いで、自分の意見をいい、番組はとても面白かったです。彼女は当時もう30歳代後半で、TBSを退社するのとともにこのラジオ番組も終了となりました。
今は、オーストラリアに夫と子供二人で移住し、エッセイや小説を執筆したり、メディアの仕事を日本でしたりしています。
番組当時から、彼女は、女というものについてよく考えていて、女であるために不自由なことや、娘であることで不自由なことなど、ところどころで語っていました。
母の理想を押しつけられ、東京郊外から都心のお嬢さま学校に中学から通い、女性の花形職業アナウンサーになりながらも、自分を肯定できず、悩みつづけた彼女の半生と、どうやってその悩みから這い出てきたかが語られています。
女であることを武器として賢く生きていくことに長けている女性は、この本を読んでもあまり共感はないでしょうが、女であることに不自由さを感じ、自由に羽ばたきたいと思いながら、男性社会で辛い思いをしている人には好感がもてる本ではないかと思います。また、子である以上、親を愛して感謝するものだということはわかっていながらも、親の振る舞いや押しつけが子どもの頃に一種のトラウマとなっており、親のことを心から愛せないという、罪悪感をともなった痛みをもつ人にも、この本は、そういうことも普通にあるんだという癒しを与えてくれます。
親は親で、自分がそうありたかったようになるよう子どもを育てて、またその一方で、そうなった子どもに嫉妬を抱くということも、よくあることのようです。
まあ、エッセイなので、深く論理的に展開しているわけではないですが、著者の心の変遷がわかり、読んでよかったです。
かといって、この著者の他の本を読みたいかというと、もうこの本だけで十分のような気がします。


本「罪の声」

2017-03-02 15:17:41 | Book
塩田武士著「罪の声」を読了。
グリコ森永事件を題材にしたフィクションです。企業名などは別の名になっていますが、事件の推移などは事実を元にしています。
私自身、記憶にある事件だったので、興味があって読みました。
未解決事件は気持ちが悪いものです。この本のなかで、このグリコ森永事件はオランダのハイネケン事件にヒントを得たのではないかという指摘があります。ハイネケン事件は、オランダのビール会社の社長ハイネケン氏が誘拐され、身代金要求が行われ、犯人たちは身代金を手に入れます。ハイネケン氏は無事解放されています。犯人たちは逃亡しましたが、少したってから、逮捕されています。しかし、お金は大部分が行方不明のままです。
この本の犯人たちは、著者の考えた架空の人物たちですが、ほんとうにいそうな感じがしてリアルでした。
この事件で、犯人たちが指示に子どもの声で録音したテープを使った事実があります。その子どもたちにはもちろん罪がないですが、この未解決事件の陰で深いトラウマを感じているだろうことは予想されます。今や、彼らも40から50代です。この事件の当事者や関係者もどんどんと鬼籍に入っており、犯人たちからの告白かなんかがない限り、実際に事件が解明されることはもうないでしょう。
長い小説でしたが、うまくまとまっており、読みごたえがあり、楽しめました。

本「コブのない駱駝」

2017-02-18 13:56:50 | Book
きたやまおさむ著「コブのない駱駝」を読了。
著者は学生時代に加藤和彦、はしだのりひこと共にザ・フォーク・クルセーダーズというバンドでヒット曲をとばし、脚光をあびました。その後、医学の道に戻り、精神分析医となります。ときどき、作詞をしたり、DJをしたり、舞台に立ったり、コラムを書いたりと小さな活動はずっと続けてきました。
この本では、精神分析医の視線から、自らの人生を振り返り書いた自伝的要素の強いものでした。
私は著者のことはよく知らないのですが、加藤和彦のことはなんとなく知っており、自殺したときはショックでした。加藤和彦と親友だった著者が語る彼についての話は興味深い部分がありました。
また「空しさ」についての考察もかなり丹念にされていました。
「あれか、これか」の二者択一的に人は物を考えることが多いけれど、「あれと、これと」といった曖昧な感じのほうが自然ではないかという指摘も、そうだなあと思いました。
本の題名の「コブのない駱駝」は最後のほうで、わかります。