20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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「マブイ 魂 MABUI」(佐藤佳代作・金の星社)

2009年12月16日 | Weblog
 若い作家の友人、佐藤佳代さんのデビュー二作目です。
 これまで佐藤佳代さんと言えばファンタジーというイメージがあるくらい、いくつもの壮大なファンタジー作品を書いていた作家です。
 もちろんデビュー作もファンタジー。(「オリガ学園 仕組まれた愛校歌」金の星社)
 しかし今回のこの「マブイ 魂」は、海の中での幻想的でファンタジックなシーンはありますが、ファンタジーというよりむしろリアリズムです。

 舞台は石垣島近くの離島。
 ですから作中での会話は、沖縄のことばです。
 主人公の住む離島には、エメラルドグリーンの海や寄せては返す白い波、風にあおられる葉ずれの響きや、あったかい人びとの暮らしがあります。
 その暮らしの中で起こる、家族をめぐるいくつもの不幸。
 思いがけず、突然起こる不幸のシーンには、読んでいてどきっとしました。
 大切な人たちの死。
 マブイ(魂)は道を通って島にもどってくる・・・。
 海でおぼれかけたナナミとテルは、海のなかで必死にもがきながら、たしかにそのマブイの通ってくる光の道を見ました。
 ニィニィとヒトミネーネーの幻想も。
 臨場感のあるシーンです。

 離島の暮らしの豊かさ、あたたかさ。
 風のそよぎや、美しい夕日。
 芳醇な果実の匂い。
 海の蒼さ。
 そんなものを、視覚いっぱいに感じさせてくれる物語です。
 ぜひ皆さん、お読みになってください。
コメント (4)
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