20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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新刊4冊ご紹介

2011年10月13日 | Weblog
 友人の作家、3人の方々の新刊のご紹介です。

             
 まずはじめは田部智子さんの「ユーレイ通り商店街」シリーズの3巻、4巻です。この2冊、同時発売です。
 このシリーズは、ユウレイ通りや、その先にあるジャーマン通りの商店街で暮らすいろいろな子どもたちが主人公になり、そのときどきに抱えている問題や悩みを描いています。
『クールな三上も楽じゃない』(田部智子・福音館書店)
 1巻の主人公だったのは,ユウレイ通りにあるパン屋の息子「ムカシ」
 この巻では、ジャーマン通りにあるパン屋さんの息子「三上」が主人公です。 
 ある日、クラスで体験学習にいくことになります。
 あれこれ迷いながら,最後に貧乏くじをひかされた「三上」が行ったのは、のぞみ保育園。
 そこで「三上」が出会った、頑固で、でも自分の気持ちにとっても正直な五歳児の「真吾」
 この「真吾」という幼児が、とても「いま」を象徴していて、その屈折した思いに笑ったり、じんときたりします。
 また「三上」と「真吾」の、ビミョーなつながりもステキです。
 ラスト、歩道橋の上からみた夕日の大きさと、ふたりの気持ちがつながりあう瞬間は、感動的です。

             
『あたしだけに似合うもの』(田部智子・福音館書店)
 ユーレイ通りにある薬屋さんの娘、理香子が主人公の物語。
 理香子がすきなのは、おしゃれとヒップホップダンス。雑誌の読者モデルにも応募するくらいです。
 けれど、薬屋さんをやっているお父さんは、理香子を薬剤師にしたいので、そういった理香子の気持ちを理解しません。
 おまけにお店の前には、さまざまな薬の広告文を下げています。
 クラスの子たちに騒がれるくらい衝撃的なキャッチコピーに、理香子は傷つきます。 
 とうとう理香子は家出してしまいます。
 家出したのは、クラスでも目立たない、おしゃれの話もまったく合わない地味な女の子、都のアパート。都との関係がいいです。
 理香子はその都の家にもいられなくなり、とうとう電車に乗って夜の表参道に向かいます。
 そこで、理香子を助けてくれたのは・・・。

 このシリーズのおもしろいところは、人と人との関係が、実にあたたかく、そして人間としての真実を見つけながら真摯に描けているところです。
 親子の関係。友だちとの関係。そういったことが、毎回、しみじみと胸に落ちてきます。

             
 
 次は、松本聡美さんの新刊です。
『ともだち まねきねこ』(松本聡美・国土社)
 学校のかえりみち、お蕎麦屋さんの前で煤けた「まねきねこ」をもらったマキオに、それからふしぎなことが起きます。
 まねきねこは、壊れかけでひび割れも入っていて、おしりのあたりにかかれた文字も半分消えかけていました。
 それをお掃除、修理してやると、そのまねきねこが・・・。
 
 関西弁のまねきねこが、とてもかわいいです。
 そのまねきねこに背中を押されるように、いろいろなことに挑戦していくマキオ。
 いじめっこの大場くんと作った三色弁当がおいしそうです。
 子どもが作れるようにと、すべて電子レンジで作る方法もイラスト入りで、書かれています。
 ちょっとしたきっかけで、自信を持って前へ進んでいく子どものすがたが,生き生きと描かれています。

             

 『モーグルビート!』(工藤純子・ポプラ社)

 表紙の帯には、モーグルの上村愛子選手の推薦が載っています。
 私たちにモーグルがお馴染みになったのはトリノオリンピックでの、この上村選手のすべる様子を手に汗を握りしめて観戦してからではないでしょうか。

 主人公の「一子」と、モーグルをはじめるきっかけになった「美鈴」とのライバル関係。
 いつもあたたかい眼差しで「一子」を見つめている、友だち「俊平」との関係。
「一子」と家族との関係。
 また、雪山でスキーを滑降するシーン。
 モーグルの大会での、息をのむような迫力あるシーン。
 そういったものがテンポのいい文体で、ぐいぐいと書き進められていき、読ませます。
 スポーツ物語として、一級品の出来映えに仕上がっています。
 
 続編は、12月に発売されるようです。
 あさのあつこの『バッテリー』(角川文庫)に続く、人気のスポーツ物語になればいいなと願っています。

 皆さま、ぜひお読みになってください。
コメント (8)
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