20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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新刊2冊ご紹介

2011年10月26日 | Weblog
           

『マジックアウト』(佐藤まどか・フレーベル館)
 イタリア在住の作家でいらっしゃる,佐藤まどかさんが新刊を出されました。
 帯には「本格長編ファンタジーの幕開け」と書かれています。どうやら3部作の長編ファンタジーの一巻目のようです。
 孤島であるエテルリア国では、だれもがひとつの「才」を持って生まれてきます。すべてその才術で解決してきました。
 主人公「アニア」の父は「守」の術を使う、神王に次ぐこの国のNO2。けれどアニアは、何の術の才能もない無才人として生まれてきました。アニアはそのことに自らのアイデンティティすら失いがちでした。
 階級社会であるこの国には、「アニア」の父のように特権階級である「使い」の下に、「術師」、その下には「官」「官見習い」「職人」「職人見習い」「下働き」「下働き見習い」というピラミッド式の階級制度があるのです。
 その最下位が「アニア」などの無才人なのです。

 ある日、その国に「マジックアウト」という、すべての才術を消失してしまう出来事が起こります。
 そこで引っ張り出されたのが、お嬢さまである無才人の「アニア」
 才術に頼り切って生きてきたこの国の人たちは、「アニア」の知性から学び、自らもさまざまな知を身につけ、自分たちの力で生きることを切り拓こうとしていきます。
 このあたり、原発に頼り切ってきた日本への、アンチテーゼとしても読めます。
「生まれたときから、あの才の強さだけが物を言うなんて、この国は不公平だと思うよ。・・・・しかもマジックアウトで才術が消えても、階級社会はそのままだ」
 ピュリスのこの言葉のように、これから才術はどうなっていくのでしょう?また階級社会は?
 閉ざされた国の開国を予感させながら、物語は二巻へ続きます。


           

『タンポポ あの日をわすれないで』(光丘真理・文研出版)
 作家の友人・光丘真理さんの、はじめての絵本です。
 3月11日。故郷・宮城県で取材中だった真理さんは、そこで地震や津波に遭遇し、一週間避難生活を体験したそうです。
 やっと東京に戻り、ふたたび宮城県を訪れ、笑顔の子どもたちと出会うと、そばにはタンポポの花が・・・。

 ご自身の体験をもとにお書きになった絵本です。ですから描写にリアリティがあります。
 子どもたちの願いが、タンポポの綿毛となってあちこちにとんでいき、明るい笑顔の花がたくさん咲きますようにとの願いをこめて書かれた絵本です。

 地震、津波と、ややもすれば暗い気持ちになりがちですが、いつまでも忘れてはいけない事実です。
 そういった真理さんの、子どもたちへの応援歌がこめられています。

 また、絵をお描きになっているのが、作家であり画家である山本省三さん。
 山本省三さんの明るい色彩の、元気溢れる子どもたちの表情がいいです。
 仲よしのおふたりが、息のあったコンビを組まれ、作り上げられた絵本です。

 皆さん、ぜひお読みになってください。
コメント (6)
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