アオサギが、いつもの王国からこちらを見ています。
よく見ると、王国には、彼ひとり。いえ、一羽。
仲間たちはどうしたのでしょう?
彼は、優雅に首をのばすと、とつぜん。
「ギャー!」
そのすがたからは、想像できないくらいの汚らしい声です。
ふたたび、
「ギャー、ギャー,ギャー!」
王国の城主である彼は、うつくしい声でさえずる他の鳥たちを見回し、
「自分はなぜ、こんなみにくい声に生まれてしまったのだろう」と嘆き悲しみます。
城主である彼の、アイデンティティのめんどくさに、なかまたちは
「勝手に,悩んでろ、めんどくさいヤツ!」
と、そこを離れていきます。
ひとりぼっちになってしまった城主は、それでもなお、叫びながら己の声のみにくさを嘆きます。
・・・なんてこと、ぜったいありえませんよね。
でも、それから2日後、対岸にあるその王国の近くを通りかかったら、そこは、もぬけの殻でした。