20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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アオサギ

2012年03月20日 | Weblog
          
 
 アオサギが、いつもの王国からこちらを見ています。
 よく見ると、王国には、彼ひとり。いえ、一羽。
 仲間たちはどうしたのでしょう?

 彼は、優雅に首をのばすと、とつぜん。
「ギャー!」
 そのすがたからは、想像できないくらいの汚らしい声です。
 ふたたび、
「ギャー、ギャー,ギャー!」
 王国の城主である彼は、うつくしい声でさえずる他の鳥たちを見回し、
「自分はなぜ、こんなみにくい声に生まれてしまったのだろう」と嘆き悲しみます。
 城主である彼の、アイデンティティのめんどくさに、なかまたちは
「勝手に,悩んでろ、めんどくさいヤツ!」
 と、そこを離れていきます。
 ひとりぼっちになってしまった城主は、それでもなお、叫びながら己の声のみにくさを嘆きます。
 
・・・なんてこと、ぜったいありえませんよね。

 でも、それから2日後、対岸にあるその王国の近くを通りかかったら、そこは、もぬけの殻でした。
コメント (2)
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