友人の作家の皆さんの新刊7冊をご紹介いたします。
『海馬亭通信2』(村山早紀・ポプラ文庫)
村山早紀さんの人気シリーズ『海馬亭通信』の第二巻です。
風早の街にやってきたやまんば娘の「由布」から山に住む姉に宛てた手紙三通と、十七年後の風早の街4つの物語が収録されています。
「由布」は、人間は年齢を重ねると年をとるのに、やまんばの自分はいつまでたっても、そのままのすがたであるということから、海馬亭を出て山へ戻る決心をします。けれど由布の心のなかには、海馬亭で暮らす人々への思いがずっと消えずに残っていました。
そんな由布の物語と、ラストは重圧から歩けなくなってしまった少年が10日間、医師になった海馬亭の住人「千鶴さん」と一緒に暮らしながら、いろいろな不思議と、人びとのあたたかい心に出会っていくお話です。
「この先の未来には不幸が待っているかもしれないと思えて怖くても、そこにわずかでも明るい可能性があるならば、ぼくらは生きて、前にいかなくちゃいけない」
この、心に残るメッセージが折々に伝わってきます。
『恋する和パティシェール』(工藤純子・ポプラ社)
3年生の最後の授業で「将来の夢」という作文の課題が出されます。
主人公の和菓子屋さん「和心堂」の娘の「あんこ」は、なにになっていいか自分の将来がみつかりません。仲よしの友だちで、おばあちゃんが日本茶のお店を出している「倫也」は堂々と「日本茶を世界にひろめる」と書いています。
ある日、幼稚園のときから一緒だった「かずくん」と出会います。「かずくん」の家も同じく和菓子屋さん。けれど「あんこ」の家とは違って、創作和菓子で評判の「扇屋」というお店です。
けれどそのお店がつぶれ、「かずくん」は亡くなったおじいちゃんの弟子になりたかったことが忘れられなくて、同じ和菓子屋さんである「あんこ」の家にやってきたのです。
転校生で、パティシェールのすがたで現れたケーキ屋さんの娘、「吉沢さん」や、みんなのすがたに励まされながら、「あんこ」は和菓子の世界に目覚めていきます。
和菓子職人を「和パティシェール」と呼ばせるおしゃれさが、光っています。
『あけちゃダメ!』(小川英子・新日本出版社)
暑い日。
冷蔵庫をあけたら、そこには黒い牛が!
牛は「なにが欲しいのだ」と「ぼく」にたずねます。
「牛乳」と答えると、牛は冷蔵庫へ「ぼく」を引っ張り込みます。
牛のしっぽにしがみついて、運ばれたところは、なんと、そよそよと風のながれる草原。
ここから不思議さがフル回転します。
世にもシュールなストーリーがあれよ、あれよと繰り広げられます。
「シロクマくん」ならぬ「クロウシくん」冷蔵庫のお話です。
そこには、ややグロさが、味つけされています。なにせ、シロクマではなく、「クロウシ」ですから。
小川英子の発想は、これでもか、これでもかと、シュールな世界をかっとばしていきます。
もう一編収録されているのは、「洗濯機」のお話。
これもまた、シュールです。
『ぼくとおじいちゃんとハルの森』(山末やすえ・くもん出版)
おばあちゃんの弟であるモリおじちゃんは、腕のいい大工さん。しかしある日とつぜん、
大工さんをやめたおじさんは、山小屋で暮らすと「ぼく」をその山小屋へ誘います。
そこで出会った捨て犬の「ハル」と、「ぼく」とおじさんの物語。
山末さんというと、ファンタジー。
でもこの作品では、あえてファンタジーを使わず、山小屋を生きる。森で生きることそのものが、ファンタジーのように、ゆったりとした筆で、心地よく描かれています。
木立を流れる風。ブランコのそよぎ。青い海。
そんな自然の中でくらしながら、主人公の「ぼく」の抱える問題。おじさんがかつて抱えていた問題。山小屋に以前住んでいた外国人の話。
そういったさまざまなことが、ゆるゆるとほどけ、「ぼく」はひとつ、大人になっていきます。
このゆるやかさ、おだやかさは、疲れた子どもの心を癒してくれそうです。
『まほうの森のプニュル』(ジーンウィルス作・石井睦美訳・小学館)
おかあさんにないしょで、おねえさんといもうとは、ブルーベルの森に入っていきました。
そこには「まほうのいけ」があるのです。
そこでふたりは、森の子をつかまえました。
カエルくらいの大きさで、まるっこくて、青い色をしたいきもの。どんぐりまなこに、さきっぽのとがったしっぽ。ネズミみたいな耳。あおむけに水の上をうかんでは、行ったり来たり。足のゆびをしゃぶったりもする・・・。
ふたりは、そのいきものに、「プニュル」と名付けました。持ち帰った「プニュル」を、ふたりはものおきごやに隠しました。ところが、「プニュル」は日に日に元気がなくなっていきます。ある日、ふたりは・・・・。
架空のいきもの「プニュル」。でもこの絵本を読んでいると、へんな格好をした、愛らしく、ゼリーのようないきものと会ってみたい。飼ってみたいと思わされます。
ラストには「あなたの森の子についてのメモ」というコーナーがあって、森の子を守る会から、森の子についてのアンケートが記されています。
『ちっちゃなしろうさぎ』(ケビン・ヘンクス作・石井睦美・BL出版)
これも、石井睦美さんの翻訳された絵本です。
お馴染み、「ケビン・ヘンクス」の絵本です。
ここでは小さな「しろうさぎ」が「みどりって、どんなふう?」と思ったり、
「たかいって、こんなかな?」と思ったり、「じっとしてるって、どんなふう?」と思ったり、
「はばたくって、こんなかな?」と感じたり、小さな「しろうさぎ」は、まだまだわからないことでいっぱい。
でも、だれがすきかってことだけは、ちゃあんとわかっていた、というお話。
小さい子どもたちが、抱く疑問が、やさしく、あるときは力強く絵と、詩のような文章で、表現されています。
『セロリマン♪さんじょうでやんす』(吉田純子・岩崎書店)
吉田純子さんの小学校1~2年生向け新刊です。
学校から帰ってくると家で待ち構えていたのは、なんと赤いマントを着て、腰に金ぴかのベルトをしめた「セロリマン」。
セロリマンが言うには、セロリの嫌いな子どものところへいって、子どもたちのお役に立ちたいと・・・。
セロリ王国の宣伝マンといったところでしょうか?
ところがこのセロリマン、情けないほどへっぽこで役立たずで、「~でやんす」言葉でしゃべる愛すべきキャラクターです。
さて、子どもたちとセロリマンは、どんな楽しいことを見つけ出していくのでしょう?
そして、はたして子どもたちはセロリを好きになったでしょうか?
それは読んでのお楽しみ~。
セロリマン♪・シリーズ、第1作です。
楽しいエンタメ作品に仕上がっています。
今回は新人賞の本読みやらなにやらに追われていてばたばたしていて、まとめて7冊ものご紹介になってしまいました。
皆さま、ぜひお読みになってください。
『海馬亭通信2』(村山早紀・ポプラ文庫)
村山早紀さんの人気シリーズ『海馬亭通信』の第二巻です。
風早の街にやってきたやまんば娘の「由布」から山に住む姉に宛てた手紙三通と、十七年後の風早の街4つの物語が収録されています。
「由布」は、人間は年齢を重ねると年をとるのに、やまんばの自分はいつまでたっても、そのままのすがたであるということから、海馬亭を出て山へ戻る決心をします。けれど由布の心のなかには、海馬亭で暮らす人々への思いがずっと消えずに残っていました。
そんな由布の物語と、ラストは重圧から歩けなくなってしまった少年が10日間、医師になった海馬亭の住人「千鶴さん」と一緒に暮らしながら、いろいろな不思議と、人びとのあたたかい心に出会っていくお話です。
「この先の未来には不幸が待っているかもしれないと思えて怖くても、そこにわずかでも明るい可能性があるならば、ぼくらは生きて、前にいかなくちゃいけない」
この、心に残るメッセージが折々に伝わってきます。
『恋する和パティシェール』(工藤純子・ポプラ社)
3年生の最後の授業で「将来の夢」という作文の課題が出されます。
主人公の和菓子屋さん「和心堂」の娘の「あんこ」は、なにになっていいか自分の将来がみつかりません。仲よしの友だちで、おばあちゃんが日本茶のお店を出している「倫也」は堂々と「日本茶を世界にひろめる」と書いています。
ある日、幼稚園のときから一緒だった「かずくん」と出会います。「かずくん」の家も同じく和菓子屋さん。けれど「あんこ」の家とは違って、創作和菓子で評判の「扇屋」というお店です。
けれどそのお店がつぶれ、「かずくん」は亡くなったおじいちゃんの弟子になりたかったことが忘れられなくて、同じ和菓子屋さんである「あんこ」の家にやってきたのです。
転校生で、パティシェールのすがたで現れたケーキ屋さんの娘、「吉沢さん」や、みんなのすがたに励まされながら、「あんこ」は和菓子の世界に目覚めていきます。
和菓子職人を「和パティシェール」と呼ばせるおしゃれさが、光っています。
『あけちゃダメ!』(小川英子・新日本出版社)
暑い日。
冷蔵庫をあけたら、そこには黒い牛が!
牛は「なにが欲しいのだ」と「ぼく」にたずねます。
「牛乳」と答えると、牛は冷蔵庫へ「ぼく」を引っ張り込みます。
牛のしっぽにしがみついて、運ばれたところは、なんと、そよそよと風のながれる草原。
ここから不思議さがフル回転します。
世にもシュールなストーリーがあれよ、あれよと繰り広げられます。
「シロクマくん」ならぬ「クロウシくん」冷蔵庫のお話です。
そこには、ややグロさが、味つけされています。なにせ、シロクマではなく、「クロウシ」ですから。
小川英子の発想は、これでもか、これでもかと、シュールな世界をかっとばしていきます。
もう一編収録されているのは、「洗濯機」のお話。
これもまた、シュールです。
『ぼくとおじいちゃんとハルの森』(山末やすえ・くもん出版)
おばあちゃんの弟であるモリおじちゃんは、腕のいい大工さん。しかしある日とつぜん、
大工さんをやめたおじさんは、山小屋で暮らすと「ぼく」をその山小屋へ誘います。
そこで出会った捨て犬の「ハル」と、「ぼく」とおじさんの物語。
山末さんというと、ファンタジー。
でもこの作品では、あえてファンタジーを使わず、山小屋を生きる。森で生きることそのものが、ファンタジーのように、ゆったりとした筆で、心地よく描かれています。
木立を流れる風。ブランコのそよぎ。青い海。
そんな自然の中でくらしながら、主人公の「ぼく」の抱える問題。おじさんがかつて抱えていた問題。山小屋に以前住んでいた外国人の話。
そういったさまざまなことが、ゆるゆるとほどけ、「ぼく」はひとつ、大人になっていきます。
このゆるやかさ、おだやかさは、疲れた子どもの心を癒してくれそうです。
『まほうの森のプニュル』(ジーンウィルス作・石井睦美訳・小学館)
おかあさんにないしょで、おねえさんといもうとは、ブルーベルの森に入っていきました。
そこには「まほうのいけ」があるのです。
そこでふたりは、森の子をつかまえました。
カエルくらいの大きさで、まるっこくて、青い色をしたいきもの。どんぐりまなこに、さきっぽのとがったしっぽ。ネズミみたいな耳。あおむけに水の上をうかんでは、行ったり来たり。足のゆびをしゃぶったりもする・・・。
ふたりは、そのいきものに、「プニュル」と名付けました。持ち帰った「プニュル」を、ふたりはものおきごやに隠しました。ところが、「プニュル」は日に日に元気がなくなっていきます。ある日、ふたりは・・・・。
架空のいきもの「プニュル」。でもこの絵本を読んでいると、へんな格好をした、愛らしく、ゼリーのようないきものと会ってみたい。飼ってみたいと思わされます。
ラストには「あなたの森の子についてのメモ」というコーナーがあって、森の子を守る会から、森の子についてのアンケートが記されています。
『ちっちゃなしろうさぎ』(ケビン・ヘンクス作・石井睦美・BL出版)
これも、石井睦美さんの翻訳された絵本です。
お馴染み、「ケビン・ヘンクス」の絵本です。
ここでは小さな「しろうさぎ」が「みどりって、どんなふう?」と思ったり、
「たかいって、こんなかな?」と思ったり、「じっとしてるって、どんなふう?」と思ったり、
「はばたくって、こんなかな?」と感じたり、小さな「しろうさぎ」は、まだまだわからないことでいっぱい。
でも、だれがすきかってことだけは、ちゃあんとわかっていた、というお話。
小さい子どもたちが、抱く疑問が、やさしく、あるときは力強く絵と、詩のような文章で、表現されています。
『セロリマン♪さんじょうでやんす』(吉田純子・岩崎書店)
吉田純子さんの小学校1~2年生向け新刊です。
学校から帰ってくると家で待ち構えていたのは、なんと赤いマントを着て、腰に金ぴかのベルトをしめた「セロリマン」。
セロリマンが言うには、セロリの嫌いな子どものところへいって、子どもたちのお役に立ちたいと・・・。
セロリ王国の宣伝マンといったところでしょうか?
ところがこのセロリマン、情けないほどへっぽこで役立たずで、「~でやんす」言葉でしゃべる愛すべきキャラクターです。
さて、子どもたちとセロリマンは、どんな楽しいことを見つけ出していくのでしょう?
そして、はたして子どもたちはセロリを好きになったでしょうか?
それは読んでのお楽しみ~。
セロリマン♪・シリーズ、第1作です。
楽しいエンタメ作品に仕上がっています。
今回は新人賞の本読みやらなにやらに追われていてばたばたしていて、まとめて7冊ものご紹介になってしまいました。
皆さま、ぜひお読みになってください。