その3.谷 甲州「天を越える旅人」
この話が「岳人」に連載されたのは90年代の初め、もう15年以上
前のことになります。それまでの山岳小説とのあまりの違和感に、
毎号楽しみに読むといったものでは、ありませんでした。
しかし今度読み返してみて、なんと壮大な構想の話かと驚きました。
「チベット奥地の僧院で暮らす少年僧・ミグマは、自分がヒマラヤ
の高峰で凍死するという不思議な夢を繰り返して見る。前世をさぐる
ため旅に出たミグマは、修行により肉体を離脱する方法を会得する。
曼荼羅世界に入り込み、シェルパとして高山に挑み、個人の転生の謎
を探ることから次第に真の世界の構造を解明していく…」というお話
なんですが…
「アインシュタイン以後の宇宙観を仏教的な宇宙観で再構成できるか」
という作者の試みは、完全に成功したとは言えない…出来るはずが
ありません…が、確かに面白い。「時間と空間、物質とエネルギー」が
「色即是空」や「曼荼羅」世界と対照されるのですから…
ひょっとすると「生とは何か、死とは何か」を考える歳になったから
この本の面白さが分かってきたのかも知れません。
なんだか無性に、またあの神々の座を眺めるために、チベットかネパール
へ行きたくなってきました。

この話が「岳人」に連載されたのは90年代の初め、もう15年以上
前のことになります。それまでの山岳小説とのあまりの違和感に、
毎号楽しみに読むといったものでは、ありませんでした。
しかし今度読み返してみて、なんと壮大な構想の話かと驚きました。
「チベット奥地の僧院で暮らす少年僧・ミグマは、自分がヒマラヤ
の高峰で凍死するという不思議な夢を繰り返して見る。前世をさぐる
ため旅に出たミグマは、修行により肉体を離脱する方法を会得する。
曼荼羅世界に入り込み、シェルパとして高山に挑み、個人の転生の謎
を探ることから次第に真の世界の構造を解明していく…」というお話
なんですが…
「アインシュタイン以後の宇宙観を仏教的な宇宙観で再構成できるか」
という作者の試みは、完全に成功したとは言えない…出来るはずが
ありません…が、確かに面白い。「時間と空間、物質とエネルギー」が
「色即是空」や「曼荼羅」世界と対照されるのですから…
ひょっとすると「生とは何か、死とは何か」を考える歳になったから
この本の面白さが分かってきたのかも知れません。
なんだか無性に、またあの神々の座を眺めるために、チベットかネパール
へ行きたくなってきました。
