ペンギン夫婦の山と旅

住み慣れた大和「氷」山の日常から、時には海外まで飛び出すペンギン夫婦の山と旅の日記です

東明寺のご開帳

2006-02-12 16:58:17 | 矢田だより
午後になって、久しぶりに矢田を歩きました。
矢田座久志玉比古神社の横で、市民マラソンの最後尾グループ
を見送って、東明寺への道を登りました。

矢田山麓の東明寺は舎人親王の勅願寺といわれ、持統天皇八年
創建の古いお寺です。



たまたま今日、2月12日は年に一度の薬師法会の日で、重文の
薬師如来座像(平安時代の作)を拝観させて頂いた上に、竹筒
に入った笹酒まで頂きました。



大黒さんが「お持ちになって花をいけて下さい」と言われました。
1時間半ほど矢田丘陵を一緒に歩いて、帰ると可愛い花入れに
なりました。寒い一日でしたが、心が温かくなりました。



ねじの回転

2006-02-10 20:52:36 | 四方山話
先週日曜日に亡母十三回忌の法事を済ませました。そのあと
風邪を引いてしまって、この一週間はほとんど寝たり起きたり
の状態。寝床の中で、法事のときに弟が置いて帰った何冊かの
本を読みましたが、その一つがタイトルの「ねじの回転」です。



副題に「FEBRUARY MOMENT」とありますが、まさに今の季節に
ピッタリ。舞台は1936年(昭和11年)の東京。2月26日からの
4日間、あの「2.26事件」がテーマですが、そこは才女の誉れ
高い恩田陸。(実は「才女嫌い」で今まで敬遠していました)
ひねりにひねり、さまざまな仕掛け、伏線が張られています。

これは純粋のSF。しかも私の大好きなタイムトラベル・テーマ
です。久しぶりにページを繰るのがもどかしい気持ちで、遅読
みの私には珍しく二日足らずで読み終えました。とにかく面白
かったです。

最近読んだ山の本(3)

2006-02-09 17:17:21 | 四方山話
その3.谷 甲州「天を越える旅人」

この話が「岳人」に連載されたのは90年代の初め、もう15年以上
前のことになります。それまでの山岳小説とのあまりの違和感に、
毎号楽しみに読むといったものでは、ありませんでした。
しかし今度読み返してみて、なんと壮大な構想の話かと驚きました。

「チベット奥地の僧院で暮らす少年僧・ミグマは、自分がヒマラヤ
の高峰で凍死するという不思議な夢を繰り返して見る。前世をさぐる
ため旅に出たミグマは、修行により肉体を離脱する方法を会得する。
曼荼羅世界に入り込み、シェルパとして高山に挑み、個人の転生の謎
を探ることから次第に真の世界の構造を解明していく…」というお話
なんですが…

「アインシュタイン以後の宇宙観を仏教的な宇宙観で再構成できるか」
という作者の試みは、完全に成功したとは言えない…出来るはずが
ありません…が、確かに面白い。「時間と空間、物質とエネルギー」が
「色即是空」や「曼荼羅」世界と対照されるのですから…
ひょっとすると「生とは何か、死とは何か」を考える歳になったから
この本の面白さが分かってきたのかも知れません。

なんだか無性に、またあの神々の座を眺めるために、チベットかネパール
へ行きたくなってきました。



最近読んだ山の本(2)

2006-02-05 13:23:51 | 四方山話
その2. 谷 甲州「ジャンキー・ジャンクション」

誘われて国際登山隊に参加した日本人アルピニストがヒマラヤ
の高峰で遭遇する奇妙な体験を描く小説です。
冒頭、舞台になるヴァジュラカン北壁のルート図が挿入されてい
ますが、この山が実在のものかどうか…私には分かりません。

物語としては、はっきり言ってそれほど面白くありませんでした。
筋書きだけでなく、山岳登攀の描写にもそれほど迫力が感じられ
ません。もちろん、フィクションですから絵空事になるのは避け
られませんが、時間的には後から読んだ「凍」には、事実の持つ
力でしょうか、「巻を置くあたわず…」という息を呑むような描写が
随所にありました。

がっかりしましたが、以前「岳人」連載中に読んだ同じ作者の別の
本を読み返してみました(続く)。




御在所岳の氷瀑

2006-02-04 09:59:16 | 過去の今日
1962年2月4日、御在所岳でトレーニングをしたときの
想い出です。下はそのときの手書きのルート概念図。



前夜は上の図の下端、藤内沢出合の藤内小屋で泊まり、
快晴の朝を迎えました。



1ルンゼ、中俣、3ルンゼで氷の感触を味わいながらアイゼン
ワークやザイルワークの練習を繰り返しました。



前列右が若かりし日の変愚院。白いスキー帽をかぶり、跳ね上げ式
のサングラス?を付けています。
このときに初めてナイロンザイルを使い「雪がつかず、しなやかで
快適」と山日記に書いています。それまでは麻ザイルで、雪が付く
とワイヤーロープのように固くなって、扱いにくかったのです。



最後は3ルンゼから山頂部に出ました。
「稜線に出るところがシブく、腕力を頼りによじ登る。上からスキー
ヤーがあきれ顔で見物していた。」
今夜放映されるNHKのドラマ「氷壁」からの連想で、遠い昔を懐かしく
思い出しました。

最近読んだ山の本

2006-02-03 11:14:17 | 四方山話
その1. 沢木耕太郎「凍」

著者の後書きによると、題名を決めるのに考え抜いた末、「闘」
の意味も持たせて「とう」にしたという。
実在のクライマー山野井泰史、妙子夫妻のギャチュンカン北壁
における1週間を越える苦闘の物語である。
帯にあるようにノンフィクションだが、克明な聞き取りと密着した
取材で描かれた「物語」は、まるでその場にいるような臨場感で、
息をつかせない迫力がある。
手足の指の殆どを失ってまで、なぜ山に登るのか?ここには本当
に山に取り憑かれたものにしか分からない何かがある。
ありきたりの「感動」という言葉ではいい尽くせない、久しぶりに
感銘を受けた本との出会い…「深夜特急」の耕太郎は健在でした。