98 雪彦山(915m)
(せっぴこさん)夢前川の源流に位置する山で、新潟の弥彦山、福岡の英彦山とともに「日本三彦山」の一つとして知られる。洞ヶ岳、鉾ヶ岳、三辻山の三つの山の総称であるが、上の標高は三角点がある三辻山のものである。洞ヶ岳は険しい四つの岩峰からなる古くからの修験道の山で、その大天井岳を雪彦山の主峰とすることもある。
始めて登ったのは1969年だが、1枚の写真も残していない。ここでは1993年、二人で訪れたときの様子を記す。
マイカーで山麓の賀野神社大鳥居前の駐車場に着き、頭上に聳え立つ不行岳の岩峰を仰ぎながら出発。岩や木の根の階段状の急登で、不行岳の岸壁を間近に見る岩の上に出る。尾根上の道となりホッとしたのも束の間、再び灌木帯の中の厳しい登り。尾根の左を捲くと、はるか下に沢の水音が聞こえ、大きな岩塊を越えて出雲岩に着く。
大きく道の上にオーバーハングした岩に、いくつかアブミがセットされている。しっかりした岩の道を左側から捲くように登ると、5メートルほどのチムニーに鎖が取りつけられている。登りきると出雲岩の上に出た。
ついで覗き岩のクラック。
少し登るとテラス状の見晴らし台。明神山の鋭峰を始めとする播州の山々の展望が素晴らしいが、凄い絶壁で下を見ると足が疎む。次にちょっと岩登りのテクニックが要る、細かいスタンスのスラブがあり直登する。捲道もあり「馬の背」と呼ばれる所だ。これで核心部は終わり、あとは一登りで洞ヶ岳に着いた。
大天井岳(884M)の標識があり非常に展望が良い。笠形山が整った美しい姿を見せ、播州平野の向こうには瀬戸の海が鈍く光る。
大天井岳から鉾立山
いったんコルに下って鹿の壷への道に入る。ここから山の形相はがらりと変わり、潅木帯の中の熊笹の道となる。人影が消え、この後、下山するまで誰一人にも出会わなかった。熊笹の中を登ると、三つ目のピークが915Mの地図上の雪彦山(三辻山)だった。灌木に覆われ展望が悪く、わずかに北から西にかけて峰山高原と遠く氷の山が望めるだけ。下りは背丈を越える熊笹を漕いで、何本もの倒木が道を塞ぐ林の中の分かり難い道となり、最後に長い熊笹の中を登り切ると、鉾立山頂に出た。
ここは960Mで三山では最も高い。しかし全く展望なし。緩く下っていくと、急に谷に向かって急勾配で下り出す。どんどん下ってこれで正しいのか不安になる頃、峰山←→雪彦の古い標識が見つかった。
紅葉谷の源流らしい細い流れに沿って下る。徒渉したり古い橋を渡ったり美しい滝を見たりしながら下る。やがて右岸の岸壁に沿った長い桟道が連続する。足下は深い谷に落ち込んでいてスリルがある。
(虹の滝・1997年11月)
滝の音は耳を聾するばかり。右に地蔵岳の岸壁を仰ぐようになると洞が岳からの下降路に出会う。ここから急に広い道となる。賀野神社への道を左に分けると急坂の下りで、再び谷を渡りゴロゴロの岩塊の急降下。谷間に夕闇が迫る頃には後の大きな滝に出合う。なだらかな草原の道を通り、ダムの横に出た。
<コースタイム> 駐車場10:45…出雲岩11:45…大天井岳(洞が岳)12:23……途中昼食…13:50雪彦山…鉾立山14:30……15:40虹の滝?15:50…16:40駐車場
1997年11月9日、低山徘徊派・秋のオフ会9人で同じコースを歩く。素晴らしい紅葉を見ながらの楽しい山行だった。