日の名残りのある黄昏時、暗くなる前のほのかな明るさ、あるいは夜明け前の薄明・・・そんな意味のある「Twilight II ( トワイライトII)」という作品です。
ランディー&シェリー・ナップ夫妻のプロダクションシリーズ 「Mandala Series (マンダラシリーズ)」の第5作目として今年発表されたものです。
「トワイライトII」 となっているのは、彼らのごく初期の作品 「トワイライト」のテーマを、現在の彼らの表現で生み出したものだからです。
マンダラシリーズは、ナップ夫妻の映像世界を、手持ち型の作品で豊かに表現するシリーズで、質の高さもあり、また限定版のパーラータイプなどに比べて価格も控えめなので、コレクターにとっては嬉しい作品です。
質の高さは覗きやすさにも通じます。 たとえばアイホールは少し掘り下げた位置にありますから、目をアイホールに近付けやすく、またそうすることで、外部からの光の侵入が防げるので黒い背景に浮かび上がる映像をきれいにとらえることができます。
一方オブジェクトセルは滑らかな回転で、気持ちよく回せます。 黒いローテーターもアイホールもローズエンジンという旋盤で施した彫り込みのラインが美しいですが、ローテーターの場合は滑り止めの意味もあり、機能とデザインが調和しているところが、ナップ夫妻ならではと思います。
この作品は無色透明なオブジェクトが通常よりも多く、その中でオレンジやグリーン、ブルーなどが躍動します。
黒い背景のオイルセルというのがナップ夫妻のスタイルで、初期の頃から追求し続けています。 ポイント数も2ミラー、5ポイント、6ポイントの作品が多いようです。
イタリアのガラスロッドをバーナーワークで加工するのはシェリーさん。 ランディーさんもガラス工芸の技術があり、ガラスオブジェクトにこだわり続けるのも彼らのスタイルです。
透明、半透明、細いライン、煌めき・・・いろいろな要素を組み込んで黒い背景に浮かび上がる映像美は、ゆっくりと流れて変化し続けるところが何といってもその醍醐味です。
美しい映像に、人生の黄昏どきもこうありたいと思ってしまいます。