かったかくんのホームページ

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最後の会話

2012年09月12日 | Weblog
仕事に戻っての初日のことです。三光中学校2年生のTくんから、
「先生、今度、やすらぎ荘でお神楽を舞うので、よかったら、見に来てくれませんか。」
という電話がありました。



「Tくん、やすらぎ荘は先生のお母さんがいるところなんだ。ぜひ、見に行かせて下さい。」
とお願いをしました。



午後からのお神楽。災害の復興も兼ねたお神楽です。時間に遅れないように、母のところに家族と一緒に行きました。連れ合いが、
「おかあさん、お神楽を見に行くよ。」
と暑いので、タオルを頭にかけあげていました。施設の方が、ベッドから車椅子に乗せてくれました。




部屋とは違って、玄関先とはいえ暑さを感じます。日陰になっているところを見るポジションに決めました。母も久しぶりに外に出ました。



Tくんたちが準備を進めていました。そしていよいよ神楽が始まりました。



母は目をつぶっていますが、きっと笛や太鼓の音色は聞こえていたことでしょう。ときおり口元が緩みます。それは、みんながいる賑やかな場所に来たことに対しての喜びでしょう。



鬼になっているTくんが母の近くにやってきました。「ひ」でやさしく入所者の頭をなでています。
「Tくん、こっちも。」
と母の頭も頼みました。鬼のTくんが母そして私、連れ合いと撫でていってくれました。Tくんも優しい少年です。夜電話がかかってきて、

「先生のお母さんが早くよくなって欲しいという願いもこめて舞いました。」

泣かせます。



母とのいい時間でした。



神楽が終わり、しばらく母に話しかけたりしていました。
「帰るからね。」と何度か言うと、母が連れ合いと私に語りかけるかのように、
「また来てね。寂しいからね。待っているよ。」
という言葉をかけてくれました。



きっと母は、家族から離れて、一人でベッドにいることに、表現はできないものの心の中で寂しくつらく感じていたのでしょう。それを考えるとどうしようもない切なさが湧いてきます。



そして、部屋を出て、職員の方にお礼を行って帰りました。これが、母との最後の対面であり、会話となりました。




そうはいっても、母と最後に神楽を楽しむことができたことは、たいせつな思い出となりました。



葬儀が終わって学校に戻ったとき、一番先にしたいことがありました。それは、Tくんにお礼を言いたかったのです。いつも朝、早くTくんが学校に来ます。Tくんを部屋に呼びました。
いすに座って、Tくんに、


「ありがとう。君のおかげで母と最後のいい思い出ができました。」



と伝えました。もし、Tくんが来てくれていなかったら、いつものように、ベッドで寝ている母に寄り添っていただけかも知れません。ほかの用事もあったので、それが優先されていたかも知れません。

Tくんは、にっこりとしていました。



それから10日あまり。母は誰にも告げることなく、旅立っていきました。

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