(注1)「8年間12億6千万円」という数字は、朝日新聞の報道によります。
(注2)「9億円」という数字は、鳩山首相の母が毎月1500万円仕送りしたという毎日新聞報道
に5年間を掛けた数字です。
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後追いで納税したところで、「脱税行為」は事実として残り、それを消すことはできません。金額が大きくなるとふつうは告発されて、裁判の結果、刑の対象になります。しかし、鳩山首相の場合は、脱税に問われることはないようです。
たとえ国が「脱税」と認定しなくとも、私の常識では「脱税」です。一庶民の私が言ったところで、犬の遠吠えにもならないところは悲哀であります。
それにしても、脱税にならないという理由付けはどこにあるのでしょうか?
<鳩山首相が「脱税」に問われない理由>
鳩山首相の場合、なんら罪に問われないのは相続税法第68条にいう「偽りその他不正の行為」に該当しないという認定でしょう。「育ちがいいもので」と、ぼうっとしたぼんぼんを装う必要があったのは、このゆえだろうと思います。
8年間も無申告状態で大金を使いつづけてきた行為は、「知らなかった」と言い張っても、何もしないことそのもの、すなわち不作為という行為が「偽り」に該当し、「不正の行為」に該当すると、私は思います。
だってふつう事業家が所得税をごまかす場合、収入のいくつかを隠すか、支出のいくつかを水増しするかのどちらかです。「収入のいくつかを隠す行為」は、その収入について申告もしないし納税もしないという行為です。要するに、「何もしないという不作為」です。
鳩山首相はこの8年間、毎年、その全額について申告もしないし納税も何もしなかった。ふつうの税逃れでは、1年間の数々の取引のうち、いくつかの取引を計上しない。「帳簿に計上せずに税務上の申告もしない」という行いは「何もしないという不作為」という点で、鳩山首相も一般の脱税者も同じなんです。
相続税法
第68条 偽りその他不正の行為により相続税又は贈与税を免れた者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前項の免れた相続税額又は贈与税額が500万円を超えるときは、情状により、同項の罰金は、500万円を超えその免れた相続税額又は贈与税額に相当する金額以下とすることができる。
<計12億6千万円を8年間無申告をつづけても罪に問われない理由――わかりません>
相続税法第69条では、正当な事情なくして提出期限内に申告書を提出しないときは、罰せられる。8年間もつづけていれば、当然、罰せられると思う。
「使用人に任せきりだったから知らなかった」ということは、どう考えても「正当な事由にあたらない」。社員10人や20人の会社の社長が、「経理担当や税理士に任せていたので知らなかった」と言っても、責任を逃れることはできません。鳩山首相のケースはこれと同じです。
「情状により、その刑を免除することができる」というのは裁判になった後のことです。告発されなければ、この文言の対象にはなり得ません。
ということで、理由探しをしても今のところ私にはわかりません。
相続税法
第69条 正当の事由がなくて期限内申告書をその提出期限内に提出しなかつた者は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。
<「申告・納税したのであって修正申告ではない」という理由>
首相のことばをニュースで知ってから勉強しました。下に国税通則法を掲げておきます。
通常の申告は期限内申告(第17条)と言います。申告しないで放っておいても、税務署が何らかの行動を起こさないうちに先手を打って申告することができます。これを期限後申告(第18条)と言います。鳩山首相が言う通りで、修正申告とは異なります。
鳩山首相の案件では、税務署は8年間、何もしてきませんでした。鳩山首相は税務署が第25条の行動を起こす前に申告・納税を済ませたということでしょう。税務署も首相相手では手出しができないのでしょう。ただ、加算税なんかは勝手に納税できませんから、この申告・納税のあとに本税の追加が税務署によってなされるものと思います。
(期限内申告)
第17条
申告納税方式による国税の納税者は、国税に関する法律の定めるところにより、納税申告書を法定申告期限までに税務署長に提出しなければならない。
2 前項の規定により提出する納税申告書は、期限内申告書という。
(期限後申告)
第18条 ――略――その提出期限後においても、第25条(決定)の規定による決定があるまでは、納税申告書を税務署長に提出することができる。
2 前項の規定により提出する納税申告書は、期限後申告書という。
(決定)
第25条 税務署長は、納税申告書を提出する義務があると認められる者が当該申告書を提出しなかつた場合には、その調査により、当該申告書に係る課税標準等及び税額等を決定する。