現行「日米防衛協力のための指針(1997年)」を資料として掲載します。
現行 「日米防衛協力のための指針」(1997年)
Ⅰ 指針の目的
Ⅱ 基本的な前提及び考え方 1~4
Ⅲ 平素から行う協力
1 情報交換及び政策協議
2 安全保障面での種々の協力
3 日米共同の取組み
Ⅳ 日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等
1 日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合
2 日本に対する武力攻撃がなされた場合
(1) 整合のとれた共同対処行動のための基本的な考え方
(イ)~(ハ)
(2) 作戦構想
(イ)日本に対する航空侵攻に対処するための作戦
(ロ)日本周辺海域の防衛及び海上交通の保護のための
作戦
(ハ)日本に対する着上陸侵攻に対処するための作戦
(ニ)その他の脅威への対応 i~ii
(3) 作戦に係る諸活動及びそれに必要な事項
(イ)~(ニ)
(ホ) (i) ~ (iv)
Ⅴ 日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える
場合(周辺事態)の協力
1 周辺事態が予想される場合
2 周辺事態への対応
(1) 日米両国政府が各々主体的に行う活動における協力
(イ)救援活動及び避難民への対応のための措置
(ロ)捜索・救難
(ハ)非戦闘員を退避させるための活動
(ニ)国際の平和と安定の維持を目的とする経済制裁の
実効性を確保するための活動
(2) 米軍の活動に対する日本の支援
(イ)施設の使用
(ロ)後方地域支援
(3) 運用面における日米協力
Ⅵ 指針の下で行われる効果的な防衛協力のための日米共同の取組み
1 指針についての検討並びに共通の基準及び実施要領等の確立の
ための共同作業
(1) 共同作戦計画についての検討及び相互協力計画について
の検討
(2) 準備のための共通の基準の確立
(3) 共通の実施要領等の確立
2 日米間の調整メカニズム
Ⅶ 指針の適時かつ適切な見直し
別表) 周辺事態における協力の対象となる機能及び分野並びに協力項目例
Ⅰ 指針の目的 ※省略
Ⅱ 基本的な前提及び考え方
指針及びその下で行われる取組みは、以下の基本的な前提及び考え方に従う
。
1 日米安全保障条約及びその関連取極に基づく権利及び義務並びに日米同盟
関係の基本的な枠組みは、変更されない。
2 日本のすべての行為は、日本の憲法上の制約の範囲内において、専守防衛
、非核三原則等の日本の基本的な方針に従って行われる。
3 日米両国のすべての行為は、紛争の平和的解決及び主権平等を含む国際法
の基本原則並びに国際連合憲章を始めとする関連する国際約束に合致するも
のである。
4 指針及びその下で行われる取組みは、いずれの政府にも、立法上、予算上
又は行政上の措置をとることを義務づけるものではない。しかしながら、日
米協力のための効果的な態勢の構築が指針及びその下で行われる取組みの目
標であることから、日米両国政府が、各々の判断に従い、このような努力の
結果を各々の具体的な政策や措置に適切な形で反映することが期待される。
日本のすべての行為は、その時々において適用のある国内法令に従う。
Ⅲ 平素から行う協力 ※省略
Ⅳ 日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等
日本に対する武力攻撃に際しての共同対処行動等は、引き続き日米防衛協力
の中核的要素である。
日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合には、日米両国政府は、事態の
拡大を抑制するための措置をとるとともに、日本の防衛のために必要な準備
を行う。日本に対する武力攻撃がなされた場合には、日米両国政府は、適切
に共同して対処し、極力早期にこれを排除する。
1 日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合
日米両国政府は、情報交換及び政策協議を強化するとともに、日米間の調
整メカニズムの運用を早期に開始する。日米両国政府は、適切に協力しつつ
、合意によって選択された準備段階に従い、整合のとれた対応を確保 する
ために必要な準備を行う。日本は、米軍の来援基盤を構築し、維持する。ま
た、日米両国政府は、情勢の 変化に応じ、情報収集及び警戒監視を強化す
るとともに、日本に対する武力攻撃に発展し得る行為に対応するための準備
を行う。
日米両国政府は、事態の拡大を抑制するため、外交上のものを含むあらゆ
る努力を払う。
なお、日米両国政府は、周辺事態の推移によっては日本に対する武力攻撃
が差し迫ったものとなるような場合もあり得ることを念頭に置きつつ、日本
の防衛のための準備と周辺事態への対応又はそのための準備との間の密接な
相互関係に留意する。
2 日本に対する武力攻撃がなされた場合
(1) 整合のとれた共同対処行動のための基本的な考え方
(イ) 日本は、日本に対する武力攻撃に即応して主体的に行動し、極力早期に
これを排除する。その際、米国は、日本に対して適切に協力する。この
ような日米協力の在り方は、武力攻撃の規模、態様、事態の推移その他
の要素により異なるが、これには、整合のとれた共同の作戦の実施及び
そのための準備、事態の拡大を抑制するための措置、警戒監視並びに情
報交換についての協力が含まれ得る。
(ロ) 自衛隊及び米軍が作戦を共同して実施する場合には、双方は、整合性を
確保しつつ、適時かつ適切な形で、各々の防衛力を運用する。その際、
双方は、各々の陸・海・空部隊の効果的な統合運用を行う。自衛隊は、
主として日本の領域及びその周辺海空域において防勢作戦を行い、米軍
は、自衛隊の行う作戦を支援する。米軍は、また、自衛隊の能力を補完
するための作戦を実施する。
(ハ) 米国は、兵力を適時に来援させ、日本は、これを促進するための基盤を
構築し、維持する。
(2) 作戦構想
(イ) 日本に対する航空侵攻に対処するための作戦
自衛隊及び米軍は、日本に対する航空侵攻に対処するための作戦を共
同して実施する。
自衛隊は、防空のための作戦を主体的に実施する。
米軍は、自衛隊の行う作戦を支援するとともに、打撃力の使用を伴う
ような作戦を含め、自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する。
(ロ) 日本周辺海域の防衛及び海上交通の保護のための作戦
自衛隊及び米軍は、日本周辺海域の防衛のための作戦及び海上交通の
保護のための作戦を共同して実施する。
自衛隊は、日本の重要な港湾及び海峡の防備、日本周辺海域における
船舶の保護並びにその他の作戦を主体的に実施する。
米軍は、自衛隊の行う作戦を支援するとともに、機動打撃力の使用を
伴うような作戦を含め、自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する
。
(ハ) 日本に対する着上陸侵攻に対処するための作戦
自衛隊及び米軍は、日本に対する着上陸侵攻に対処するための作戦を
共同して実施する。
自衛隊は、日本に対する着上陸侵攻を阻止し排除するための作戦を主
体的に実施する。
米軍は、主として自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する。そ
の際、米国は、侵攻の規模、態様その他の要素に応じ、極力早期に兵力
を来援させ、自衛隊の行う作戦を支援する。
(ニ) その他の脅威への対応
(i) 自衛隊は、ゲリラ・コマンドウ攻撃等日本領域に軍事力を潜入させて
行う不正規型の攻撃を極力早期に阻止し排除するための作戦を主体的
に実施する。その際、関係機関と密接に協力し調整するとともに、事
態に応じて米軍の適切な支援を得る。
(ii) 自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し
調整する。米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要
に応じ、打撃力を有する部隊の使用を考慮する。
(3) 作戦に係る諸活動及びそれに必要な事項
(イ) 指揮及び調整
自衛隊及び米軍は、緊密な協力の下、各々の指揮系統に従って行動す
る。
自衛隊及び米軍は、効果的な作戦を共同して実施するため、役割分担
の決定、作戦行動の整合性の確保等についての手続をあらかじめ定めて
おく。
(ロ) 日本周辺海域の防衛及び海上交通の保護のための作戦
自衛隊及び米軍は、日本周辺海域の防衛のための作戦及び海上交通の
保護のための作戦を共同して実施する。
自衛隊は、日本の重要な港湾及び海峡の防備、日本周辺海域における
船舶の保護並びにその他の作戦を主体的に実施する。
米軍は、自衛隊の行う作戦を支援するとともに、機動打撃力の使用を
伴うような作戦を含め、自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する
。
(ハ) 日本に対する着上陸侵攻に対処するための作戦
自衛隊及び米軍は、日本に対する着上陸侵攻に対処するための作戦を
共同して実施する。
自衛隊は、日本に対する着上陸侵攻を阻止し排除するための作戦を主
体的に実施する。
米軍は、主として自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する。そ
の際、米国は、侵攻の規模、態様その他の要素に応じ、極力早期に兵力
を来援させ、自衛隊の行う作戦を支援する。
(ニ) その他の脅威への対応
(i) 自衛隊は、ゲリラ・コマンドウ攻撃等日本領域に軍事力を潜入させて
行う不正規型の攻撃を極力早期に阻止し排除するための作戦を主体的
に実施する。その際、関係機関と密接に協力し調整するとともに、事
態に応じて米軍の適切な支援を得る。
(ii) 自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し
調整する。米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要
に応じ、打撃力を有する部隊の使用を考慮する。
(3) 作戦に係る諸活動及びそれに必要な事項
(イ) 指揮及び調整
自衛隊及び米軍は、緊密な協力の下、各々の指揮系統に従って行動す
る。自衛隊及び米軍は、効果的な作戦を共同して実施するため、役割分
担の決定、作戦行動の整合性の確保等についての手続をあらかじめ定め
ておく。
(ロ) 日米間の調整メカニズム
日米両国の関係機関の間における必要な調整は、日米間の調整メカニ
ズムを通じて行われる。自衛隊及び米軍は、効果的な作戦を共同して実
施するため、作戦、情報活動及び後方支援について、日米共同調整所の
活用を含め、この調整メカニズムを通じて相互に緊密に調整する。
(ハ) 通信電子活動
日米両国政府は、通信電子能力の効果的な活用を確保するため、相互
に支援する。
(ニ) 情報活動
日米両国政府は、効果的な作戦を共同して実施するため、情報活動に
ついて協力する。これには、情報の要求、収集、処理及び配布について
の調整が含まれる。その際、日米両国政府は、共有した情報の保全に関
し各々責任を負う。
(ホ) 後方支援活動
自衛隊及び米軍は、日米間の適切な取決めに従い、効率的かつ適切に
後方支援活動を実施する。
日米両国政府は、後方支援の効率性を向上させ、かつ、各々の能力不
足を軽減するよう、中央政府及び地方公共団体が有する権限及び能力並
びに民間が有する能力を適切に活用しつつ、相互支援活動を実施する。
その際、特に次の事項に配慮する。
(i) 補給
米国は、米国製の装備品等の補給品の取得を支援し、日本は、日本
国内における補給品の取得を支援する。
(ii) 輸送
日米両国政府は、米国から日本への補給品の航空輸送及び海上輸送
を含む輸送活動について、緊密に協力する。
(iii) 整備
日本は、日本国内において米軍の装備品の整備を支援し、米国は、
米国製の品目の整備であって日本の整備能力が及ばないものについて
支援を行う。整備の支援には、必要に応じ、整備要員の技術指導を含
む。また、日本は、サルベージ及び回収に関する米軍の需要について
も支援を行う。
(iv) 施設
日本は、必要に応じ、日米安全保障条約及びその関連取極に従って
新たな施設・区域を提供する。また、作戦を効果的かつ効率的に実施
するために必要な場合には、自衛隊及び米軍は、同条約及びその関連
取極に従って、自衛隊の施設及び米軍の施設・区域の共同使用を実施
する。
(v) 衛生
日米両国政府は、衛生の分野において、傷病者の治療及び後送等の
相互支援を行う。
Ⅴ 日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に
重要な影響を与える場合(周辺事態)の協力
周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態である。周辺事
態の概念は、地理的なものではなく、事態の性質に着目したものである。日
米両国政府は、周辺事態が発生することのないよう、外交上のものを含むあ
らゆる努力を払う。日米両国政府は、個々の事態の状況について共通の認識
に到達した場合に、各々の行う活動を効果的に調整する。なお、周辺事態に
対応する際にとられる措置は、情勢に応じて異なり得るものである。
1 周辺事態が予想される場合
周辺事態が予想される場合には、日米両国政府は、その事態について共通
の認識に到達するための努力を含め、情報交換及び政策協議を強化する。
同時に、日米両国政府は、事態の拡大を抑制するため、外交上のものを含
むあらゆる努力を払うとともに、日米共同調整所の活用を含め、日米間の調
整メカニズムの運用を早期に開始する。また、日米両国政府は、適切に協力
しつつ、合意によって選択された準備段階に従い、整合のとれた対応を確保
するために必要な準備を行う。更に、日米両国政府は、情勢の変化に応じ、
情報収集及び警戒監視を強化するとともに、情勢に対応するための即応態勢
を強化する。
2 周辺事態への対応
周辺事態への対応に際しては、日米両国政府は、事態の拡大の抑制のため
のものを含む適切な措置をとる。これらの措置は、上記Ⅱに掲げられた基本
的な前提及び考え方に従い、かつ、各々の判断に基づいてとられる。日米両
国政府は、適切な取決めに従って、必要に応じて相互支援を行う。
協力の対象となる機能及び分野並びに協力項目例は、以下に整理し、別表
に示すとおりである。
(1) 日米両国政府が各々主体的に行う活動における協力
日米両国政府は、以下の活動を各々の判断の下に実施することができ
るが、日米間の協力は、その実効性を高めることとなる。
(イ) 救援活動及び避難民への対応のための措置
日米両国政府は、被災地の現地当局の同意と協力を得つつ、救援活
動を行う。日米両国政府は、各々の能力を勘案しつつ、必要に応じて
協力する。
日米両国政府は、避難民の取扱いについて、必要に応じて協力する
。避難民が日本の領域に流入してくる場合については、日本がその対
応の在り方を決定するとともに、主として日本が責任を持ってこれに
対応し、米国は適切な支援を行う。
(ロ) 捜索・救難
日米両国政府は、捜索・救難活動について協力する。日本は、日本
領域及び戦闘行動が行われている地域とは一線を画される日本の周囲
の海域において捜索・救難活動を実施する。米国は、米軍が活動して
いる際には、活動区域内及びその付近での捜索・救難活動を実施する
。
(ハ) 非戦闘員を退避させるための活動
日本国民又は米国国民である非戦闘員を第三国から安全な地域に退
避させる必要が生じる場合には、日米両国政府は、自国の国民の退避
及び現地当局との関係について各々責任を有する。日米両国政府は、
各々が適切であると判断する場合には、各々の有する能力を相互補完
的に使用しつつ、輸送手段の確保、輸送及び施設の使用に係るものを
含め、これらの非戦闘員の退避に関して、計画に際して調整し、また
、実施に際して協力する。日本国民又は米国国民以外の非戦闘員につ
いて同様の必要が生じる場合には、日米両国が、各々の基準に従って
、第三国の国民に対して退避に係る援助を行うことを検討することも
ある。
(ニ) 国際の平和と安定の維持を目的とする経済制裁の実効性を確保する
ための活動
日米両国政府は、国際の平和と安定の維持を目的とする経済制裁の
実効性を確保するための活動に対し、各々の基準に従って寄与する。
また、日米両国政府は、各々の能力を勘案しつつ、適切に協力する
。そのような協力には、情報交換、及び国際連合安全保障理事会決議
に基づく船舶の検査に際しての協力が含まれる。
(2) 米軍の活動に対する日本の支援
(イ) 施設の使用
日米安全保障条約及びその関連取極に基づき、日本は、必要に応じ
、新たな施設・区域の提供を適時かつ適切に行うとともに、米軍によ
る自衛隊施設及び民間空港・港湾の一時的使用を確保する。
(ロ) 後方地域支援
日本は、日米安全保障条約の目的の達成のため活動する米軍に対し
て、後方地域支援を行う。この後方地域支援は、米軍が施設の使用及
び種々の活動を効果的に行うことを可能とすることを主眼とするもの
である。そのような性質から、後方地域支援は、主として日本の領域
において行われるが、戦闘行動が行われている地域とは一線を画され
る日本の周囲の公海及びその上空において行われることもあると考え
られる。
後方地域支援を行うに当たって、日本は、中央政府及び地方公共団
体が有する権限及び能力並びに民間が有する能力を適切に活用する。
自衛隊は、日本の防衛及び公共の秩序維持のための任務の遂行と整
合を図りつつ、適切にこのような支援を行う。
(3) 運用面における日米協力
周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与えることから、自衛
隊は、生命・財産の保護及び航行の安全確保を目的として、情報収集、
警戒監視、機雷の除去等の活動を行う。米軍は、周辺事態により影響を
受けた平和と安全の回復のための活動を行う。
自衛隊及び米軍の双方の活動の実効性は、関係機関の関与を得た協力
及び調整により、大きく高められる。
Ⅵ ※省略
Ⅶ ※省略
別表 ※省略