旧「日米防衛協力のための指針(1978年)」を資料として掲載します。
旧 「日米防衛協力のための指針」(1978年)
この指針は、日米安保条約及びその関連取極に基づいて日米両国が有してい
る権利及び義務に何ら影響を与えるものと解されてはならない。
この指針が記述する米国に対する日本の便宜供与及び支援の実施は、日本の
関係法令に従うことが了解される。
Ⅰ 侵略を未然に防止するための態勢
1 日本は、その防衛政策として自衛のため必要な範囲内において適切な規模
の防衛力を保有するとともに、その最も 効率的な運用を確保するための態
勢を整備・維持し、また、地位協定に従い、米軍による在日施設・区域の安
定的かつ効果的な使用を確保する。また、米国は、核仰止力を保持するとと
もに、即応部隊を前方展開し、及ぴ来援し得る その他の兵力を保持する。
2 日米両国は、日本に対する武力攻撃がなされた場合に共同対処行動を円滑
に実施し得るよう、作戦、情報、後方支 援等の分野における自衛隊と米軍
との間の協力態勢の整備に努める。 このため、
(1) 自衛隊及び米軍は、日本防衛のための整合のとれた作戦を円滑かつ効果
的に共同して実施するため、共同作戦計画についての研究を行う。また、
必要な共同演習及び共同訓練を適時実施する。
更に、自術隊及び米軍は、作戦を円滑に共同して実施するため作戦上必
要と認める共通の実施要領をあらかじめ研究し、準備しておく。この実施
要領には、作戦、情報及び後方支援に関する事項か含まれる。また、通信
電子活動は指揮及び連絡の実施に不可欠であるので、自衛隊及び米軍は、
通信電子活動に関しても相互に必要な事項をあらかじめ定めておく。
(2) 自衛隊及び米軍は、日本防衛に必要な情報を作成し、交換する。自衛隊
及び米軍は、情報の交換を円滑に実施するため、交換する情報の種類並び
に交換の任務に当たる自衛隊及び米軍の部隊を調整して定めておく。また
、自衛隊及び米軍は相互問の通信連絡体系の整備等所要の措置を講ずる
ことにより緊密な情報協力態勢の充実を図る。
(3) 自衛隊及び米軍は、日米両国がそれぞれ自国の自衛隊又は軍の後方支援
について責任を有するとの基本原則を踏まえつつ、適時、適切に相互支援
を実施し得るよう、補給、輸送、整備、施設等の各機能について、あらか
じめ緊密に相互に調整し又は研究を行う。この相互支援に必要な細目は、
共同の研究及び計画作業を通して明らかにされる。特に、自衛隊及び米軍
は、予想される不足補給品目、数量、補完の優先順位、緊急取得要領等に
ついてあらかじめ調整しておくとともに、自衛隊の基地及び米軍の施設・
区域の経済的かつ効率的な利用のあり方について研究する。
Ⅱ 日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等
1 日本に対する武力攻撃がなされるおそれのある場合
日米両国は、連絡を一層密にして、それぞれ所要の措置をとるとともに、
情勢の変化に応じて必要と認めるときは、自衛隊と米軍との問の調整機関の
開設を含め、整合のとれた共同対処行動を確保するために必要な準備を行う
。
自衛隊及び米軍は、それぞれが実施する作戦準備に関し、日米両国が整合
のとれた共通の準備段階を選択し自衛隊及び米軍がそれそれ効果的な作戦準
備を協力して行うことを確保することができるよう、共通の基準をあらかじ
め定めておく。
この共通の基準は、情報活動、部隊の行動準備、移動、後方支援その他の
作戦準備に係る事項に関し、部隊の警戒監視のための態勢の強化から部隊の
戦闘準備の態勢の最大限の強化にいたるまでの準備段階を区分して示す。
自衛隊及び米軍は、それそれ、日米両国政府の合意によって選択された準
備段階に従い必要と認める作戦準備を実施する。
2 日本に対する武力攻撃がなされた場合
(1) 日本は、原則として、限定的かつ小規模な略を独力て排除する。侵略の
規模、態様等により独力で排除することが困難な場合には、米国の協力を
まって、これを排除する。
(2) 自衛隊及び米軍が日本防衛のための作戦を共同して実施する場合には、
双方は、相互に緊密な調整を図り、それぞれの防衛力を適時かつ効果的に
運用する。
(i)作戦構想
(a)陸上作戦 陸上自衛隊及び米陸上部隊は、日本防衛のための陸上
作戦を共同して実施する。
陸上自術隊は、阻止、持久及び反撃のための作戦を実施
する。
米陸上部隊は、必要に応じ来援し、反撃のための作戦を
中心に陸上自衛隊と共同して作戦を実施する。
(b)海上作戦 海上自衛隊及び米海軍は、周辺海域の防衛のための海
上策戦及び海上交通の保護のための海上作戦を共同して
実施する。
海上自衛隊は、日本の重要な港湾及び海峡の防備のた
めの作戦並びに周辺海域における対潜作戦、船舶の保護
のための作戦その他の作戦を主体となって実施する。
米海軍部隊隊は、海上自術隊の行う作戦を支援し、及
び機動打撃力を有する任務部隊の使用を伴うような作戦
を含め、侵攻兵力を撃退するための作戦を実施する。
(c)航空作戦 航空自衛隊及び米空軍は、日本防衛のための航空作戦
を共同して実施する。
航空自衛隊は、防空、着上陸侵攻阻止、対地支援、航
空偵察、航空輸送等の航空作戦を実施する。
米空軍部隊は、航空自衛隊の行う作戦を支援し、及び
航空打撃力を有する航空部隊の使用を伴うような作戦を
含め、侵攻兵力を撃退するための作戦を実施する。
(d)陸上作戦、海上作戦及び航空作戦を実施するに当たり、自衛隊及び
米軍は、情報、後方支援等の作戦に係る諸活動について必要な支援を
相互に与える。
(ii)指揮及び調整 自衛隊及び米軍は、緊密な協力の下に、それぞれの指
揮系統に従って行動する。自衛隊及び米軍は、整合のと
れた作戦を共同して効果的に実施することができるよう
、あらかじめ調整された作戦運用上の手続に従って行
動する。
(iii)調整機関 自衛隊及び米軍は、効果的な作戦を共同して実施するた
め、調整機関を通し、作戦、情報及び後方支援について相
互に緊密な調整を図る。
(iv)情報活動 自衛隊及び米軍は、それそれの情報組織を運営しつつ、
効果的な作戦を共同して遂行することに資するため緊密に
協力して情報活動を実施する。このため、自衛隊及び米軍
は、情報の要求、収集、処理及び配布の各段階につき情報
活動を緊密に調整する。自術隊及び米軍は、保全に関しそ
れぞれ責任を負う。
(v)後方支援活動 自衛隊及び米軍は、日米両国問の関係取極に従い、
効率的かつ適切な後方支援活動を緊密に協力して実施
する。このため、日本及び米国は、後方支援の各機能
の効率性を向上し及びそれぞれの能力不足を軽減する
よう、相互支援活動を次のとおり実施する。
(a)補給 米国は、米国製の装備品等の補給品の取得を支援し、日本
は、日本国内における補給品の取得を支援する。
(b)輸送 日本及び米国は、米国から日本への補給品の航空輸送及び
海上輸送を含む輸送活動を緊密に協力して実施する。
(c)整備 米国は、米国製の品目の整備であって日本の整備能力が及ば
ないものを支援し、日本は、日本国内において米軍の装備品
の整備を支援する。整備支援には、必要な整備要員の技術指
導を含める。関連活動として、日本は、日本国内におけるサ
ルベージ及び回収に関する米軍の需要についても支援を与え
る。
(d)施設 米軍は、必要なときは、日米安保条約及びその関連取極に
従って新たな施設・区域を提供される。また、効果的かつ経
済的な使用を向上するため自衛隊の基地及び米軍の施設・区
域の共同使用を考慮することが必要な場合には、自衛隊及び
米軍は、同条約及び取極に従って、共同使用を実施する。
Ⅲ 日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える
場合の日米間の協力
日米両政府は、情勢の変化に応じ随時協議する。
日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合に日
本が米軍に対して行う便宜供与のあり方は、日米安保条約、その関連取極、
その他の日米間の関係取極及び日本の関係法令によって規律される。日米両
政府は、日本が上記の法的枠組みの範囲内において米軍に対し行う便宜供与
のあり方について、あらかじめ相互に研究を行う。このような研究には、米
軍による自衛隊の基地の共同使用その他の便宜供与のあり方に関する研究が
含まれる。