(注) 8月30日付ブログ記事を削除して、その後半部を改題改稿して掲載します
安倍首相が難病辞任を表明しました。私は病気辞任できる安倍首相は最後まで運の強い人だと思います。なぜなら、歴史上最長在任の宰相という栄誉に加えて、任期途中の難病辞任という悲運の宰相として退任できるからです。
【人治政治の弊害――官邸官僚が権力を振るう】
安倍政権では官邸官僚が各省次官や局長を動かしていると言われます。そういう姿、その一端は前川喜平前文部次官の加計学園に関する証言でも明らかになっています。 ※下の過去記事をクリックしてご覧いただければ幸いに思います
2017-05-21
<安倍親友 加計学園> あなたは安倍首相がクリーンであると信用できますか? 「総理のご意向」文書 リーク全文文字起こし
2017-05-24
<安倍親友 加計学園> 「総理の意向」文書が裏付ける「加計」の流れ 「広域的に」「限り」の語句追加で京産大離脱
2017-05-26
<安倍親友 加計学園> 前川ショック(前文科省事務次官) 官邸側のネガティブキャンペーンは捨て置け
2017-05-27
「あったものをなかったものにできない。」からもらった勇気 ※他サイト 退職後の前川氏
2017-05-28
<安倍親友 加計学園>「前川ショック」官房長官 記者会見 5/17~5/26 文字起こし
2017-06-01
加計学園問題について語る 前川喜平氏(前文部科学省事務次官)記者会見全録 2017(H29).5.25. 文字化
2017-06-19
<加計学園> NHK新入手文書 「10/21 萩生田副長官ご発言概要」文書画像テキスト化(NHKクロ現 6.19.夜放送)
<安倍親友 加計学園> あなたは安倍首相がクリーンであると信用できますか? 「総理のご意向」文書 リーク全文文字起こし
2017-05-24
<安倍親友 加計学園> 「総理の意向」文書が裏付ける「加計」の流れ 「広域的に」「限り」の語句追加で京産大離脱
2017-05-26
<安倍親友 加計学園> 前川ショック(前文科省事務次官) 官邸側のネガティブキャンペーンは捨て置け
2017-05-27
「あったものをなかったものにできない。」からもらった勇気 ※他サイト 退職後の前川氏
2017-05-28
<安倍親友 加計学園>「前川ショック」官房長官 記者会見 5/17~5/26 文字起こし
2017-06-01
加計学園問題について語る 前川喜平氏(前文部科学省事務次官)記者会見全録 2017(H29).5.25. 文字化
2017-06-19
<加計学園> NHK新入手文書 「10/21 萩生田副長官ご発言概要」文書画像テキスト化(NHKクロ現 6.19.夜放送)
また、醜聞事件に官邸官僚が関係するという、強権腐敗まで起きています。今年2月19日の衆院予算委員会で、ミャンマー出張の折に和泉洋人首相補佐官と厚生労働省の大坪寛子官房審議官が宿泊ホテルのコネティングルームを利用していたとして、取り上げられました。高級官僚同士の公費外国出張中不倫疑惑で、コネクティングルームを予約したことは国会質疑で確認されています。
公費出張中の男女高級官僚がわざわざコネクティングルームを予約して投宿すること自体がおかしなことで、コネクティングルームを予約させられた事務官は情けない思いをしたことでしょう。
安倍首相とつながりが深かった山口敬之氏による詩織さんレイプ事件では、北村内閣情報官が中村格警視庁刑事部長(当時)に連絡して逮捕を中止させたという、アニメかドラマのようなニュースがありました。
昔、テレビや映画の時代劇で、徳川将軍側用人が権力を振るうストーリーがありました。安倍政権の時代に徳川将軍側用人のストーリーが生きていたとは‥‥。この分なら当然、悪徳御用商人も活躍しているはずです。
【人治政治――NHK経営委員に百田尚樹氏、長谷川三千子氏送りこみ】
NHKには経営委員会というものがあります。
※NHK経営委員会 https://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/index.html
経営執行陣トップのNHK会長は経営委員会が決めます。
経営委員会は、NHKの経営内容、コンテンツ企画内容などNHKのあらゆる活動分野にわたって審議する最高機関です。経営委員は12名で、その中から互選で経営委員長を選出します。2013年10月、安倍内閣の推薦、国会承認を経て、NHKの新しい経営委員が任命されました。その中に、作家の百田尚樹氏と埼玉大学名誉教授の長谷川美千子氏が入っていました。百田尚樹氏はその後、自分から申し出て辞職しました。長谷川三千子氏は今も経営委員をつづけています。
(参照)2014-12-01 安倍首相によるNHK間接支配 (上)
2014-12-04 安倍首相によるNHK間接支配(中) 天皇は現御神(アキツ ミカミ)であると言う長谷川NHK経営委員
2014-12-06 安倍首相によるNHK間接支配(下) 百田尚樹語録 国防軍は 戦争を抑止する一番の力、土井たかこは売国奴
2014-12-04 安倍首相によるNHK間接支配(中) 天皇は現御神(アキツ ミカミ)であると言う長谷川NHK経営委員
2014-12-06 安倍首相によるNHK間接支配(下) 百田尚樹語録 国防軍は 戦争を抑止する一番の力、土井たかこは売国奴
政府が統制するのではなく、安倍首相と意を同じくする同志とも言える人をNHKに送りこんで誘導統制していきます。これが「人治」というものです。
百田尚樹氏は「永遠のゼロ」と「日本国紀」でよく知られています。「日本国紀」はよく売れたと聞きます。それだけ百田氏のファンが多いのでしょう。しかし、まちがいが多いので、日本史の世界では相手にされていないようです。
百田尚樹氏は『日本国紀』に「我が国、日本は神話の中の天孫の子孫が万世一系で二十一世紀の現代まで続いているとされている」と書いています。神話の中の天孫の子孫が今につづく天皇家であると現代にあって書くのは、まともな神経ではありません。万世一系でないのは、古代に暗殺された天皇や滅ぼされた皇子があり、中世に南北朝の争いがあったことを思い起こせば、誰もが知っている事実です。
長谷川三千子氏は、野村秋介氏追悼文で次のように書いています。
<「野村秋介氏追悼文」から ―― 長谷川三千子>
「すめらみこと いやさか」と彼が三回唱えたとき、彼がそこに呼び出したのは、日本の神々の遠い子孫であられると同時に、自らも現御神(アキツミカミ)であられる天皇陛下であった。そしてそのとき、たとへその一瞬のことではあれ、わが国の今上陛下(※きんじょうへいか=今の天皇)は(「人間宣言」が何と言はうと、日本国憲法が何と言はうと)ふたたび現御神(アキツミカミ)となられたのである。――2013(H25).10.15. 野村秋介追悼20年 群青忌
野村氏が自死に際して「すめらみこと いやさか」と3回唱えたとき、そのとき元気に生きている天皇がどう思うとも、その瞬間に現御神(アキツミカミ)となられた。――という価値観の持ち主である長谷川三千子氏を、安倍首相が選んでNHKに送りこみました。長谷川氏は2013年から今も、NHK経営委員を務めています。
安倍首相は、自分の身内的人脈を優遇する性癖が強い。長谷川三千子氏は、2012年自民党総裁選前に結成された団体「2012年安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」http://test2.unitedscene.jp/abe/whatus.html の代表幹事で、百田尚樹氏も発起人の一人です。長谷川氏はまた、日本会議代表委員35人のうちの一人でもあります。
◆法の公正運用に反する私的運用と私的立法、法治政治に反する人治政治
【集団的自衛権に関する憲法解釈変更は「法の私的運用」である】
ここで私が定義する「法の私的運用」とは、権力者が自分の政治観や政治目的に都合よく合うよう法を解釈して運用することを言います。
憲法9条解釈の集団的自衛権合憲論を政府部内で固めるために、安倍首相は内閣法制局長を取り替えました。外交上国際的に通用する現実的な安全保障政策がどういうものかについて通暁している外務省から人材を起用しました。この小松法制局長官は着任まもなくから病を得て、お気の毒なことに任務を果たす暇もなく病没されました。
同じく集団的自衛権容認派である横畠裕介次官が内閣法制局長官に昇格しました。この横畠法制局長官が安倍首相の意を体して、集団的自衛権を是認する憲法9条解釈変更は自衛権に関する従来の政府解釈の延長線上にあって、従来解釈から逸脱するものではない――という法制局見解を貫きました。
憲法を変えることなく、内閣法制局長官を取り替える。新任の法制局長官は法の解釈変更が、従来の法解釈の延長線上にあって従来解釈から逸脱するものではない、という法制局見解を示す。
内閣法制局は政府新法案を国会提出前に審査するところですから、法制局長官のお墨付きがあってこそ、解釈変更の内閣閣議決定ができます。
法を変えることなく → 所管部局長を取り替える → 新任部局長が法解釈や法運用を修正して、安倍首相の政治目的を叶える役割を果たす。
これが、新任責任者が「法の私的運用」行うことで安倍首相の政治目的達成に貢献するという、安倍式人治政治の一つの典型です。
2014年、2015年の集団的自衛権論議の時期、私は一貫して憲法9条解釈変更に反対してきました。
平和の問題は安全保障政策の問題であり、安全保障政策とは軍事力・経済力・外交力・国際民間交流など総合力をもってして、最大限に戦争を避けようとする問題です。
憲法解釈を自分の流儀に合わせて容易に変更することは、法解釈の私的運用をずるずると広げていくことにつながり、法適用全般の乱れにつながっていきます。法解釈・法運用・法適用には公正の観点で自制の効いた厳格なものが要請されます。
私は集団的自衛権の是非については、政治要求に強いられた憲法9条解釈の変更ではなく、憲法9条改正の是非をもって臨まなければならないと考えてきました。
【黒川弘務東京高検検事長定年延長問題は法の私的立法である】
ここで私が定義する「法の私的立法」とは、権力者が自分の政治観に都合よく合うよう新法または既存法の改正法を作ることを言います。
安倍首相は黒川東京高検検事長を最高検察庁検事総長に任命したかった。しかし検察庁の抵抗が強くて叶えることができなくなった。検察庁が抵抗しているうちに、黒川検事長の定年退職日が近くなったのです。
そこで安倍首相は、個別の検察官について特例定年延長をできるよう検察庁法を改正して、黒川検事長の定年を延長することを考えました。そうすれば、抵抗する現検事総長の定年が先に来ます。
検察庁法改正をする → 改正検察庁法に従って人事配置の幅を広げて時を待つ → 意中の人材を検事総長に任命して検事総長を取り替える → 新任検事総長が安倍首相の意向を尊重して、事件の捜査・立件・起訴不起訴について政治的配慮を常とする。これが安倍首相の企てでした。
必要とあらば「私的立法」をしてでも所管部局長を取り替える → 意中の人材を新任部局長に据える → その新任責任者が安倍首相の政治目的に見合うよう政治的配慮をした法運用を行う。
これが、安倍式人治政治のもう一つの典型です。
安倍首相は自分に都合の良い人材を検事総長に据えて、検察庁を制約しようと考えました。内政統治を危うくするような危険な考えでした。しかし、幸いにも黒川弘務氏個人の賭け麻雀の問題で、安倍首相の企ては一朝にして崩れました。
検察庁支配の企ては、私的立法を経て、自分に都合の良い人材を都合の良い部署に配置して、柔軟性の幅が大きい法運用を期待する手法です。
憲法9条解釈変更は、自分にとって都合の良い人材を必要な部署に配置して法運用や法解釈の変更を企てる手法です。
どちらも人治政治で、法治政治や法の公正運用とは対極にあります。
安倍首相はこうして前代までの首相には見られないほどの乱れた政治手法を取ってきました。公文書の保全についても、これほどの乱脈ぶりが公然と行われる時代が来るとは思いもよりませんでした。