きょうの読売新聞の見出しにはびっくりました。
これまでの世論調査はおしなべて、中止•延期合わせて70%から80%のはず。
調べてみると、設問のしかたに、大きなマジックがありました。
誘導尋問ならぬ誘導設問の類です。
「『社会調査』のウソ」(文春新書)という本があります。きょうの読売調査の実例は、20年前のこの本から迷い出てきた生霊でしょうか。‥‥夏近し。
一般的にオリンピックの実施についての標準的な設問はこれまで、次の4つのタイプでした。 ―― ①開催 ②延期 ③中止 ④わからない
ところが読売新聞では、「延期する」という設問が以前にあったのに、いつのまにか「延期する」設問が取り外されています。
かわりに、• 観客数を制限して開催する • 観客を入れずに開催する と2つの設問が入っています。これは通常使わない設問のしかたです。
これを、上の標準的な4つの設問タイプに置き換えてみると、 ―― ①開催 ②開催 ③中止 ④わからない、になるからです。これでは、正当なアンケートになり得ません。
この場合は通常、開催、延期、中止、わからない、――と4つの設問をして、これらとは別項目を立てて、新たに次のような設問するのが、通常行われている設問方法です。
<設問例> 「開催」とお答えの方に、お聞きします。次のどの方法が良いとお考えでしょうか。
①観客数の制限をしないで開催する。
②観客数を制限して開催する
③観客を入れずに開催する
上の下線部と設問例で示したような、通常行われている方式で世論調査を行えば、結果はかなりの幅で変わってくるものと思います。
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2021.6.7.読売新聞「世論調査」(6/4~6/6 調査実施)の結果は次の通り。
◆今年夏の東京オリンピック•パラリンピックは、どうするのがよいと思いますか。次の3つの中から1つ、選んでください。 (*川本注) 4番目の「答えない」は、選択肢の数に入っていないようなので、これは回答なし空欄の数だろうと推測します。
• 観客数を制限して開催する 24%
• 観客を入れずに開催する 26%
• 中止する 48%
•答えない 2%
◆東京オリンピック•パラリンピックで海外から来る選手や関係者への感染対策は、十分だと思いますか、思いませんか。
• 思う 19%
• 思わない 63%
•答えない 18%
[調査方法] 6月4日~6日に、コンピューターで無作為に作成した固定電話と携帯電話の番号にかけるRDD (Random Digit Dialing) 方式で18歳以上の有権者を対象に実施。固定では有権者在住が判明した708世帯の中から428人、携帯では応答のあった1382人の中から642人、計1070人の回答を得た。回答率は固定60%、携帯46%。小数点以下四捨五入。グラフや表の数値は、合計が100%にならないことがある。0は0.5%未満。―は回答なし。
(以上、読売新聞世論調査の引用、終わり)
――調べてみると、NHKもまた、読売新聞と同じ設問法を採用しています。