私は新卒就職した会社で輸入貿易業務を数年間担当していました。輸入相手国は米英仏伊スペイン。そのころ欧州では「付加価値税」というのがありました。この税率が短年のうちに上がっていくのを知って、「ひどいな」と思ったことが強く記憶に残りました。付加価値税は今の日本の消費税に相当しますが、当時の日本にはありません。
日本では昭和63年度(1988年度)で廃止された「物品税」というのがありました。宝石や乗用車など高額ぜいたく品に限定して課税される間接税で、税率の一例をあげると、3ナンバー車23%、5ナンバー車18.5%、軽乗用車15.5%。
この物品税が廃止されると、平成元年(1989年)4月1日から始まった「消費税3%」に引き継がれて、宝石や高級車がよく売れるようになりました。それまで国産車で3ナンバー車はなかったのですが、大型乗用車日産シーマが新発売になり、これがまたよく売れて「シーマ現象」と話題になりました。
税制改革で不要不急のぜいたく品が劇的に安くなったのに反して、無税であった食料や家賃、住宅建設費など生活に欠かせないものすべてに3%の税金が課せられました。私はこの税制改悪に反対でした。そして欧州の付加価値税が短年のうちに簡単に上がるのを知っていたので、日本も欧州のように簡単に10%、15%になるだろうと思い、公正でない税制がまかり通ることに一貫して不満でした。
れいわ新選組代表 山本太郎氏が声を上げた「消費税ゼロ」。そこへなんと自民党からも、「消費税10%」対抗政策としての「消費税ゼロ」提唱議員が出てきたのだから、こんなに喜ばしいことはありません。
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「6月に消費税0%」提言で自民党議員60人が賛同
自民党内議員連盟 「日本の未来を考える勉強会」 主宰 衆院議員 安藤 裕
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20200401/pol/00m/010/002000c
―― 「 2020.4.2. 毎日新聞 政治プレミア 」 から 全文転載
今年6月を目指して消費税率を0%にする提言を自民党の有志議員60人の賛同も得てまとめた。
これまでは5%に減税すべきだと主張してきたが、新型コロナウイルスによる事態をうけ、一気に0%にして徹底的に国民の生活を支えるという強いメッセージを出すべきだと考えた。
コロナ以前に壊れていた日本経済
内閣府が3月に発表した2019年10~12月期(第3四半期)の国内総生産(GDP、季節調整値)改定値は、年率換算で7.1%減という衝撃的な数字だった。
(川本注) 2019年の景況は綱渡り。民間側では「低迷している」という見る向きが多
かった。企業やエコノミストの間では消費税増税実施は危険だと見ていました。一方、
政府・日銀は当然、第1四半期から第3四半期に至るまで、実態より強気の景況判断を
公表し続けてきました。安倍首相は政権の威信を守るために消費税増税を強行したの
ですから、「年率換算7.1%減」では批判の大波を浴びるところでした。がしかし、彼は
コロナショックに救われたのです。すべては、コロナのため? …なのです。
コロナ以前に、昨年10月の消費増税がいかに大きなマイナスだったかを認識しなければならない。すでに日本の経済は土台が壊れている。
コロナ対策としてではなく、日本の経済を立て直すために消費税減税が必要だ。
低所得者ほど恩恵がある消費税減税
コロナの経済対策として現金給付や商品券配布が取り沙汰されているが、いずれもコストがかかり、貯蓄されて消費に十分回らない懸念もある。所得税減税は所得税を払っている人にしか効果がない。
消費税減税はすべての国民にあまねく届く。消費税率を0%にすれば商品を事実上1割値引きすることになるので、一番効果がある。
しかも、消費税は所得の低い人ほど負担に感じるという逆進性がある。裏返せば消費税率を下げれば所得の低い人ほど恩恵がある。
永田町では十分認識されていないように感じるが、格差は拡大し、貧困問題は深刻化している。たとえば今、一番影響を受けているのはサービス業だ。
パートやアルバイトで生計を立ててきた人が「仕事がないからシフトに入らなくていい」と言われ、まさに今日から仕事がなくなっている。
そういう人たちが決して切り捨てられることがない対策をしなければならない。そこにもっとも届くのが消費税0%だ。
中小企業にも恩恵
また中小企業対策も重要だ。消費税は消費者から企業が税を預かって国に納める「預かり税」だと言われることがあるが、実際には中小企業は消費税分を転嫁しきれていない。税率があがればあがるほど、利益を削ってかぶっているのが実情だ。消費税0%は中小企業にとっても恩恵になる。
財源については国債でまかなう。国債発行には「後世にツケを回す」という指摘があるが、国債を出すことは実際には国が通貨を新たに発行して、政府支出を通して国民に供給するという行為にあたる。恐れる必要はない。
消費税減税で経済を再生すれば、法人税収や所得税収は伸びていく。それによって社会保障財源も生まれてくる。これが一番堅実な王道だ。
他党議員と連携も
自民党内の減税派はまだ多数を占めることはできていない。しかし、今回の事態を受けてその状況も大きく変わる可能性が十分ある。
れいわ新選組の山本太郎代表のように野党で消費税減税を主張している人もいる。まず自民党の政策を変えることに努力しているが、必要とあれば他党の議員とも連携し、できるだけ大きな力を結集して取り組んでいくことも一つの手段だ。
政治への信頼を取り戻す
日本の政治はこの30年間ずっと、消費税率をいかにあげるかがテーマだった。税率引き下げに強い抵抗があるのは予想していた。
それでも私があえて消費税減税を主張してきたのは、自民党の信頼を取り戻すことにつながると考えているからだ。国民生活の安定があってこそ、政治に対する信頼がある。私たちは政権を支えるために提言している。
コロナの経済に対する影響は甚大でリーマン・ショックをはるかに上回り、第二の世界恐慌が起こる可能性がある。失業者が増え、自殺者も急増しかねない。疾病ではなく、経済的な理由で亡くなる方が増えていく恐れがある。
経済的な理由による死者を減らすのは政治の力だ。 これができるかどうかで国民の政権に対する信頼感が変わってくると思っている。
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