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今回も前回につづいて、湾岸戦争の後方支援について引用紹介します。引用元は、W・G・パゴニス著『山動く』、1992年11月20日同文書院刊、です。著者パゴニスは湾岸戦争において米軍第22後方支援司令部司令官でした。これは、めったに見ることのない大軍の、後方支援総責任者です。『山動く』執筆当時は現役陸軍中将でした。
1990年8月、イラクがクウェートに侵攻占領しました。これを受けて、湾岸戦争は1991年1月17日に始まりました。猛烈な空爆と巡航ミサイル攻撃を1ヵ月以上続けた後に、地上軍の進攻を始めました。下に上掲書223ページを転記します。
1991年2月25日、サウジアラビア・ダーランの後方支援施設である兵舎にイラク軍ミサイルが着弾しました。死亡28人、負傷96人。上掲書著者のパゴニス中将は、「思いもよらぬ事態」と書いています。死傷者が出ることを考えたこともない、後方基地のできごとでした。
敵軍ミサイル着弾による死傷将兵124人。パゴニス中将は、「これは偶然の事故であり」と書いています。この5回シリーズ記事の表題「『後方支援部隊』は『前方戦闘部隊』と繋がっている、故に攻撃を受ける覚悟が必要だ」を象徴するできごとです。
『山動く』 W・Gパゴニス米陸軍中将(湾岸戦争当時)
■敵軍ミサイル着弾
2月25日の夜、思いもよらぬ事態が起きた。私はキング・カリド軍事都市(KKMC)の宿舎で書類に目を通し、三×五カードに返答を書きつけていた。11時ごろのこと、ダーランの本部から後方支援作戦本部に電話が入った。スカッド・ミサイルがパトリオット・ミサイルの網をかいくぐって、ア
ル・コバールにある兵舎に命中したのだ。到着したばかりの第99陸軍予備軍司令部と第14需品分遣隊の125人を一時的に収容した建物だ。第22後方支援司令部では詳しい状況を把握していなかったが、いくらかの死傷者が出たことが、ダーランではすでに明らかになっていた。
私は何か手伝えることがあるだろうと思って、すぐに荷物をまとめダーランに急行した。到着した時点で犠牲者は28人に上っており、負傷した96人の兵士は医療施設に収容されていた。私はすぐに病院に向かった。その途中で聞かされたところによると、兵士は到着したばかりだったとはいえ、指示された予防措置はすべて講じていたという。たまたま運悪くその場所に居合わせただけなのである。
これは偶然の事故であり、戦場の醜い実例だった。スカッドは本来、誘導ミサイルではなく、ただ発射された方向に墜落して爆発する代物だ。とくに兵舎に狙って発射されたわけではなかった。もし10メートル手前か先、あるいは横に落ちていたら、犠牲者は出なかっただろう。 (『山動く』から転記、終わり)
■司令部全滅、危険は後方にもある
スカッドミサイルが着弾した兵舎には、第99陸軍予備軍司令部と第14需品分遣隊の125人が居ました。そのうち124人死傷ですから、軍司令部と分遣隊は全滅したわけです。
上の下線部分の表現に従って言えば、「たまたま運悪くその場所に居合わせた」ために、「10メートル手前か先、あるいは横に」砲弾・爆弾・ミサイルが落ちなかったために、多大な人数の兵員・一般人が殺され、傷を負うという「偶然の事故」が、昔も今も世界の各所で、起き続けていることになります。
戦争ではこのように、あるいは小さな戦闘でも、そこに居合わせた人は誰でもが、爆発で肉塊に化した死体となり、負傷して幸いに生き残った場合には、身体障害者として人生を生き抜かねばならない可能性に遭遇します。
■海外派遣先は危ない所
自衛隊の海外派遣が「絶対に安全」というわけがありません。これまでに「犠牲者が出なかったから」という理由では、危険な環境の中で必死の努力を続けているであろう派遣中の自衛隊員があまりに可哀そうです。
そもそも絶対に安全なところでの海外協力ならば、これまでから政府の海外協力機構(JICA)から多くの技術者が派遣されてきています。青年海外協力隊員も派遣されてきています。海外援助資金の投入にともなって日本企業も海外に出向いています。……それなのに、たとえPKOであっても、なぜ、自衛隊の海外派遣が必要なのでしょうか? 海外派遣先が、「安全・平和な環境ではない」からです。
■「防御戦闘」の覚悟
外国軍への「後方支援」があたりまえのように議論されています。私たちは改めて、「後方支援」が戦争行為そのものの一環であることを、再認識しておかねばなりません。戦闘部隊を支える後方支援作戦に従事することは、相手方にとっては敵対行為なのです。こちらに正義があるかどうかは関係ありません。
したがって、「攻撃戦闘」に関わらない後方支援作戦にあっても、「孫子 火攻篇」にあるように、補給線への攻撃を受けて応戦する「防御戦闘」に巻き込まれる覚悟だけはしておかねばなりません。
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<私のアピール>
2012年末の安倍政権成立以後の短年月、武器輸出3原則を廃し、特定秘密保護法の新設、憲法9条解釈変更の7・1閣議決定(※憲法違反です)と、先行き不安な政策ばかり急激に推進されています。安倍内閣はデモクラシー日本を食い破りつつある危険な内閣です。その政治手法は民主主義下の独裁と見えて、危険です。安倍総理退陣まで、来年7月参院選で自民党に“No”を!
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