【経営コンサルタントのお勧め図書】 貴重な知見「ビジネスDD(デューデリジェンス)」
「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。
日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。
今回は、「ビジネスDD」すなわち「ビジネスデューデリジェンス」について、M&A(merger and acquisition)の視点で、実務的な入門書を、酒井先生にやさしく紹介していただきました。
■ 今日のおすすめ
「スモールM&Aのビジネスデューデリジェンス実務入門」
(寺嶋 直史、斎藤 由紀夫著 中央経済社)
■ 実践・体験で得られた「ビジネスDD」を経営改善・革新に活かそう(はじめに)
紹介本は、共著者自身の中小企業のM&Aアドバイザーとしての実践・経験を基に書かれた貴重な知見書です。著者は、広く経営者・経営関係者、経営コンサルタント・アドバイザーに向けて、状況把握・課題設定・課題解決を通して企業価値を高める、「ビジネスDD」を明らかにしています。
本書の私流の読み方を発見しました。「ビジネスDD」の全体像が10章『「ビジネスDD」の全体構成』に記述されています。「Ⅰ会社概要」は10章に、「Ⅱ外部環境分析」は9章に、「Ⅲ経営分析」は6章~8章に、「Ⅳ内部環境分析;1.経営・組織活動、2.営業・販売活動、3.製造活動」は11章~13章に、「Ⅴ総合評価」は15章に記述されています。14章は「小売店・飲食店・サービス業の『ビジネスDD』」の別枠章。最終章の16章は、6章~15章(除く14章)の結果を踏まえた「事業計画書+PMI(買収後の経営改善・革新計画)」について記述されています。Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ・16章の順番で読んでいくと体系的に頭に入ります。
さて、本書の知見を経営にどのように生かしたら良いのでしょう。それは、「ビジネスDD+PMI」の手法を、‟まねび”(真似を通じた学び)を通して、自社版「経営自己診断(調査・分析)⇒課題抽出⇒経営改善・革新計画・行動計画⇒PDCAによる実行・管理」として創出することです。
本書の‟まねび”から創出した、自社の経営改善・革新計画(以下「経営計画」と略称)を、実行・振返り・改善行動により経営改善・革新の成果を上げることができます。
次項では具体的な“まねび”と、さらには一歩一歩レベルを上げる“守破離”について記します。
■ 本書を‟まねび”、‟守破離”へと飛躍し、経営改善・革新を実現しよう
【本書を‟まねび”、その上で、自社の経営計画を策定する】
まず、「経営改善・革新プロジェクト・チーム」を立ち上げます。上述のⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ・16章「事業計画+経営計画」に沿って、担当委員とリーダーを次のように決めます。「Ⅰ会社概要」は総務部員、「Ⅱ外部環境分析」は調査部員、「Ⅲ経営分析」は経理部員、「Ⅳ内部環境分析」の1.経営・組織活動は経営企画部員、2.営業・販売活動は営業企画部員、3.製造活動は製造管理部員、「Ⅴ総合評価」と「事業計画+経営計画」はリーダーが担当します。こうして6名の担当委員とリーダーが決まりました。リーダーは兼社内コンサルタントを務めます。
早速‟まねび”をスタートします。“まねび”のゴールは、本書のⅠ~Ⅴと「事業計画+経営計画」を自社版経営計画として創出し、経営会議において発表し、同時に「経営改善・革新会議」をスタートさせることです。
担当委員とリーダーが創出する経営計画の作成に於いて大切なことは、チーム・メンバー&リーダー間のコミュニュケーションと共助です。
具体的な作成ですが、「Ⅲ経営分析」は本書の購入者がダウンロード出来る『「経営分析」シートのフォーマットExcel』を活用します。このフォーマットに自社の財務計数を入力することで、本書の「Ⅲ経営分析」の図表が自動的にアウトプットされます。加えて財務評価指標については、同業の平均値との比較が可能になります。
「Ⅲ経営分析」の図表を除くと、‟まねび”により創出する「図表」の要作成数は42個です。経理部員を除く5名の担当委員とリーダーで割ると、一人当たり平均7個を作れば完成です。自社版「図表」に伴うコメント・課題・対応策も同時に作成します。
これで‟まねび”による、「経営計画」の創出は完了しました。創出した「経営計画」の一貫性と精度を高めるため、リーダーがファシリテートをし、チーム全員で一つ一つの「図表&コメント・課題・対応策」をチェックし、一貫性と精度を確認、修正します。
更に「経営計画」を具現化・行動化する全社と部門・現場のKPI(重要業績評価指標)を作ります。これで「経営改善・革新会議」に提出する段取りは完了です。
この様にして、毎月1回の「経営改善・革新会議」がスタートします。回数を重ねるごとにプロジェクトの内容を一歩一歩レベルアップすると共に、「経営計画」を行動に移しPDCAによる実行・管理を進めます。
【次のステップは‟守破離”の実施】
スタート当初は、‟まねび”により創出された経営改善・革新のスキームをベースとした活動です。大切な次のステップは、このスキームに独自のアイデアを積み重ね、更新・革新していくことです。つまりスキームの守破離を実現することです。守破離の‟守”は‟まねび”で確立されました。次は‟破離”です。次に‟破離”の例を示します。
【‟破離”の例➀―中小機構「経営自己診断システム」の活用―】
‟まねび”で作成した「経営計画」の会計数値を「診断システム」に入力しましょう。
入力の結果は、自社27経営指標と同業種の中央値と上位30%値が線グラフに表示される「個別指標分析結果」、27指標を5総合指標に纏めレーダーチャートが表示される「総合分析結果」、デフォルト企業の経営10指標と自社指標とが棒グラフと安全性得点で表示される「倒産リスク分析」として活用できます。
これらの分析から新たな気づきが有ります。(中小機構「経営自己診断システム」は下記URL)
https://k-sindan.smrj.go.jp/viewpoint
【‟破離”の例②―企業価値を向上する「ROIC経営」の導入―】
「Ⅲ経営分析」の課題を的確・効率的に実現するのが『企業価値を向上する「ROIC経営」』です。ROIC逆ツリー展開により現場におけるKPIの設定とPDCAの実行によりROICを高める手法です。(詳細は「経営士ブログ」下記URL参照。)
https://ameblo.jp/keieishi17/entry-12698434783.html?frm=theme
■ ‟まねび”と‟守破離”の先には明るい未来が(むすび)
‟まねび”と‟守破離”による経営計画の実践と経営の改善・革新には熱意と根気が必要です。しかしその先に明るい未来が開けることを覚えましょう。希望を持って前に進みましょう。
【酒井 闊プロフィール】
10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。
https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/
http://sakai-gm.jp/index.html
【 注 】
著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。
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