■■【経営コンサルタントのトンボの目】 関西街角文化論 ~ においと街 ~ 15804
故山本修先生は、美容サロンを独立開業され、その経験を元にサロン経営者に「商品管理」「顧客管理」「計数管理」を提案し、サロン経営の生産性向上に成果を上げてこられました。
日本経営士協会では、専務理事・関西支部長等を歴任され、その貢献度は多大です。その功績に敬意を表して、10年ほど前に、先生が当ブログに投稿してくださったコンテンツを再掲いたします。内容的に、当節にそぐわぬこともあるかもしれませんが、そこから何かを感じ取って下さると幸です。
◆ 関西街角文化論 ◆ ~ においと街 ~
この頃は、「におい」に誘われて店に入るという機会も体験もかつてほどなくなった。今時、食欲をそそられるのは、駅の立ち食い蕎麦屋からもれ出るだしの香りや、食事どきにカレーやラーメン、中華料理をつくる厨房の排気口から噴出する「におい」くらいであろう。
少し前までは、大阪の近鉄電車鶴橋駅のホームでは、夕方になると焼き肉店から吐き出される煙と「におい」がたちこめた。その「におい」に辛抱たまらず、改札の外へ出て、そのままビールで焼肉という流れも良く聞いたし、自分でも体験したものである。
だがこの頃は排煙装置の性能が向上したせいか、「名物」の煙が印象に残らないこともある。駅周辺の焼肉店は、客寄せの「看板」を手放してしまったとも言える感じである。
■ におい消えた店先・近づく「無臭社会」
むかしは、家の近所の商店街や市場には、味噌を商う店や漬物を売る店が必ずあった。品物は桶に入っていたので店先はその「におい」で満たされていた。八百屋からは野菜の青臭い「におい」がしたし、魚屋の店先は魚臭いものと決まっていた。
しかし、スーパーマーケットやコンビニエンスストアが増えるにつれ、完全密封の包装が標準となり、街から「におい」が失われていった。気が付くと、「味噌臭い」「魚臭い」「漬物臭い」と言うようなことばを使う場面も機会も無くなっていることに我ながら唖然とすることもある。
それぞれの文化に特有の調味料や食材への抵抗感を示す「ことば」は、以前は他の文化を受け入れない姿勢を表した。たとえば、「バタくさい」という表現がそうであり、乳製品が苦手ということは西欧人を好きになれないに通じていた。
けれどもグローバル化は、他の社会の食材や料理を身近なものにした。ニンニクをふんだんに使う料理をはじめ、アジア各地の食材や、スパイスにも慣れてきた。香草だけは勘弁してほしいと言う人はまだいるようであるが。 グローバル化によって、食や「におい」の多様性が認められたことは喜ばしいことである。 しかし、食べ物の「におい」なら許容されても、いったんそれが人体に入ると口臭や体臭の原因として忌避される。ニンニクの香ばしい「におい」はおいしさを予感させるのに、ニンニク臭がするオジサンはまちがいなく嫌われてしまう。
脱臭、消臭のための清涼剤が必需品となった。衣類や部屋に噴霧するスプレーも良く使われている。冷蔵庫やエアコンなど家電製品でも脱臭機能の無いものをみつけるこのほうが困難な昨今である。 電子メディアが作りだす「におい」のない世界。その無臭世界に、現実の社会の方が歩み寄っているような錯覚に陥る昨今であると感じるのは、筆者だけであろうか。
参考文献 産経新聞夕刊掲載
関西大学社会学部教授 永井良和著
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