■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】 信州・上田の歴史を映し出す会社名 3621-4c03
経営コンサルタントを半世紀にわたってやってきた経験から、すこしでも皆様のご参考になればとお届けしています。
【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】は、皆様から寄せられたり、私が支援したり、見聞したりした企業の事例を紹介していますが、お陰様で、毎回拍手をいただいています。
また、あなたのクライアント・顧問先やお知り合いの会社で、ここで紹介したい企業・団体等がありましたら、是非ご連絡ください。
■ 信州・上田の歴史を映し出す会社名 3621-4c03
信州・上田は「蚕都」として栄えた都市だ。江戸時代から養蚕が盛んで、 幕末に鎖国が解かれるや、時の藩主・松平忠固はいち早く上田の生糸を横浜港 から海外に輸出させた。その後、日本は世界一の生糸輸出国になり、製糸産業 が大きく発展した。日本近代化は上田から始まったといっても言い過ぎではない かもしれない。
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近代日本を支えた製糸産業は戦後、衰退の一途をたどる。1989年(平成元年) に全国で約5万7000戸あった養蚕農家は2021年度にはわずか186戸にまで落ち 込み、国内の製糸工場の数は7社を残すのみとなっている。養蚕や製糸産業が 栄えた上田も現在は輸送用機械や精密電子機器などの産業が地域経済を牽引する。 桑畑は稲作や果樹、花き栽培の農地に姿を変えた。
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そんな上田市で「蚕」の社名を今に残す会社がある。K社だ。 造園業者向けにプロ仕様の業務用アルミ三脚を製造・販売する。「うちの三脚は、 頑丈で安定性が高い。伸縮機能の使い勝手もよく、特に造園業者に高い評価を いただいている」とK氏。Kのアルミ三脚は知る人ぞ知る トップブランドだ。
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創業は大正時代。「もともとは木工の仕事を営んでいたが、その技術を生かし て先代が養蚕農家向けに『まぶし』についた毛羽を取る機械を製造・販売した」 のが社名の由来だそうだ。やがて、養蚕の衰退が進む。桑畑からリンゴやブドウ などの果樹園に変わる中、農家のニーズに対応してつくり始めたのが三脚だった。 材料にこだわり、設計に工夫を凝らしたアルミ三脚は農家だけでなく、造園業者 の必須アイテムになった。
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「社名を残すのにはそれなりの意味がある。昔からの取引先に親しまれ、 企業イメージとして定着している」とK氏。その半面、「今の若い人は、 うちの社名が読めない。求人では不利になる」ことが悩みの種で、社名の変更を 検討している。激動の時代を生き抜いた会社ゆえの難しい経営判断を迫られて いる。
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【 コメント 】
地場産業に直接・間接に寄与できる企業は、その地元では不可欠な存在となり、存続しやすいです。一方、それに甘んじていては、生き残りが難しいという側面があります。
同社の社名は、難読といって良いもので、若い人には読めないことが多いといいます。
芸能人などで、難読名で成功している人は少なく、それでも人気が続いている人は、相当なる芸技なりキャラクタを持っているのでしょう。芸名だけではなく、社名を同様です。
K社は、CI戦略を採ってはどうでしょうか。その結果、現社名で行くという結論に至れば、現社名を続けるのが良いでしょう。一方、社名変更をするという方針に転換される場合には、業種業態なり、事業内容なりが伝わりやすい社名にすべきです。
たとえ、難読社名であっても、その名前が定着している場合には、社名は残し、ブランド戦略で対応するという方法も考えられます。素人判断で進めるよりは、CIなり経営戦略なりの専門家の支援を受けることをお勧めします。
出典: e-中小企業ネットマガジン掲載承認規定に基づき作成