ごっとさんのブログ

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「命の値段」は?費用対効果で薬価が決まる

2017-11-10 10:41:27 | 
社会が支払いを許容する「命の値段」を、新薬の価格に反映する議論が進んでいるようです。

厚生労働省は2018年度にも既存薬に比べた新薬の効果を測り、効果に対して値段が高すぎれば値下げする費用対効果という評価の仕組みを薬価に適用する計画です。背景には医療費の膨張があり、15年度に42兆円だった国民医療費は高齢化などにより、25年度には61兆円まで増えると推計されています。

新薬は、開発費の高騰によって高額化し医療財政を圧迫しています。日本は高額な薬にも原則として保険が適用され、保険料と税金で多くの財源を賄っています。医療経済学の専門家は、すべての医療サービスを漫然と保険でカバーしている日本は例外的であるとしています。

医療に費用対効果の考え方を導入する動きは欧州やアジアで広まっており、英国では高額で話題になったガン治療薬の「オプジ-ボ」が日本のほぼ半額となっています。新薬の値段が下がるのは良いことばかりではなく、企業が新薬の開発に消極的となる懸念もあります。

不治の病にかかった人が新薬によって元気に1年延命できるとしたら、この新薬に社会はいくらまで支払えばよいかという質問をします。これはインターネットの回答では、日本は500万円程度だったという研究もあるようです。

厚生労働省は大規模な調査などにより基準額を決め、基準を上回る新薬を値下げする方針です。薬の費用対効果の捉え方は単純ではないようです。病気やけがを治すだけでなく、患者の苦痛を和らげたり、精神の状態をよくしたりする様々な効果があるためです。

当然効果の測定には測定者の主観が入ってしまったりしますので、正確な評価には膨大なデータの蓄積が必要となります。ここで費用対効果の導入の必要性については、やはり日本が「世界に誇れる国民皆保険」という制度となっている点です。

皆保険を導入している国は欧州を中心にいくつかありますが、日本のように基本的にすべての医療サービスを保険でカバーしてきた国はなく、このままでは高齢化や医療の高度化により費用が膨らみ、皆保険制度の持続可能性が危ぶまれて来るためです。

限られた予算の下ではすべての医療サービスをカバーできないという現実の中で、優先順位を付ける方法が費用対効果の評価ということのようです。

私はこの意見には賛成ですが、どうも日本の政策は慎重を期すあまり何もしないという傾向があるような気がします。やはり最初から完璧な制度を目指さず、不完全なものでも試行錯誤で変えていくというような考え方が必要な気がします。