ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

アリの行動を支配する寄生菌

2017-11-24 10:43:10 | 自然
スイスバーゼル大学の研究グループが、アリの体内を乗っ取り「ゾンビアリ」とするメカニズムを発表しました。

熱帯雨林に住むオオアリは、ある菌類に肉体を乗っ取られその命令のままに動くという不可解な行動をとることが知られていました。通称「ゾンビアリ」と呼ばれるこの行動の謎が新たな研究によって解明されつつあります。

この寄生性の菌類は、アリの体内に侵入すると宿主を支配し、やたらに動き回る無為な生活を送らせた後、葉や小枝の下側にかみついたまま死を迎えさせるのです。最後には死んだアリの頭部からこの菌類の子実体を伸ばし、地面に向かって胞子を放出します。下では何も知らないアリたちがこれを浴びて、同じようにゾンビアリになっていくのです。

アリのマインドコントロールのようなことを、菌類がどのように行っているのかは正確にはわかっていませんでした。研究者はこれまで、菌類がアリの脳に直接入り込むと考えられていました。

今回スキャンした標本をコンピューターで3Dモデル化し、さらに人工知能(深層学習機能)を用いた画像識別技術を使って分析しました。

その結果、このアリに寄生するタイワンアリタケと呼ばれる菌の仲間は、アリの全身に侵入しているものの、脳には全く手を付けていないことが分かりました。この菌は脳に直接働きかけるのではなく、筋肉に微調整を加えアリを人形のように操るものの脳は無傷で残しているようです。

脳をそのままにしておくのは、宿主を死の間際にほかのアリを感染させる場所まで連れていくのに、脳が必要だからではないかと推測しています。このように脳からの正しい指令をブロックし、筋肉に別な指令を出すというのは、まるでSFの世界のようで恐ろしい気もします。

アリの巣内の環境はこの菌の生育に適していないため、アリの巣に直接この菌が入り込むことはできないようです。これは巣の中に入り込むと、それが全滅してしまう恐れがありますので、適度に繁殖するという菌の知恵なのかもしれません。

別な研究者は、今回の発見がアリの体内で何が起こっているのかを解明するヒントになるかもしれないと期待を寄せています。おそらくこの菌には、アリが奇妙な行動を起こさせる化合物が隠されているのではないかとしています。

今回の調査が将来ほかの菌性の病気や予防の研究に役立つかもしれません。ヒトと菌類は大きく違っているようでも、共通点もかなり多いので、色々な可能性が考えられるようです。

しかしこんな分野にも人工知能による画像分析が役に立つというのは非常に面白く、多方面に広がりそうな気もします。