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脳に電磁刺激で記憶力を改善

2019-08-13 10:31:29 | 健康・医療
物忘れは老化の典型的な特徴のひとつで、65歳以上の約40%が加齢に伴う記憶力低下にまつわる問題を何かしら抱えているようです。

いったん物忘れが始まると、たいていは年齢を重ねるごとに悪化します。しかし脳に刺激を与える新たな治療法により、衰えていく記憶力を回復させることができるという研究が発表されました。

記憶力の低下を示す事例は、海馬が自然に衰えていくことが原因であることが多いといわれています。脳の一領域である海馬は、短期記憶、長期記憶、空間記憶と密接に結びついています。

年齢とともに海馬はある程度縮小していき、これはMRIのスキャン画像から確認できます。海馬のサイズを若者と同じ程度まで回復させる方法はありません。しかし適切な刺激を与えれば海馬は多少なりとも若々しくなり、活力を取り戻す可能性はあるようです。

ノースウェスタン大学の研究では、磁気パルスを使って海馬を再び活性化させて、高齢者の記憶力を改善する方法を示しています。

実験の被験者は64歳から80歳までの16人で、健常な範囲内で加齢による記憶力の低下を示す症状がみられる人たちでした。いくつかの記憶テストを実施した結果、成績は押しなべて悪く、回答の60%以上が不正解でした。

テストの後、一部の参加者に経頭蓋磁気刺激(TMS)を行い、残りにはプラシーボ操作が行われました。TMSは頭の外部から磁場の変化を伝え、電磁誘導により脳の特定領域に電流を発生させる非侵襲的手技です。

海馬は脳の深い部分にあるため、磁場を到達させることができないため、代わりに海馬と連携している脳領域のひとつで、左耳の上あたりに位置する頭頂葉に刺激を与えました。1日に20分の刺激を5日連続で与えられたあと、被験者たちはもう一度記憶テスト受けました。

すると若者に匹敵する成績を出しましたが、驚いたことに被験者は自分たちの記憶力が改善されたことに気づいていませんでした。これは自分の記憶力に問題があるという自覚が、長い時間をかけて形成されるものだからと分析しています。

今回の被験者が16人というのは少ないような気もしますが、研究グループは今回の磁気刺激法に記憶力を増強させる効果があることを確信していました。

これが臨床現場に導入されるほど劇的な効果を期待できるか判断するのは性急ですが、この手法が確実に脳を刺激していることは確かなようです。記憶力の改善をより安定的で持続性のあるものにできるかを検証するために、より長期の(数週間)連続した刺激の実験を検討しているようです。