ごっとさんのブログ

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アルツハイマー病は「脳の糖尿病」

2019-08-15 10:27:07 | 健康・医療
認知症の60%はアルツハイマー病で、一部の研究者の間では「脳の糖尿病」と言われているようです。

糖尿病の人は、そうでない人に比べてアルツハイマー病のリスクが高いことが知られています。九州大学やロッテルダムの研究でも糖尿病予備軍を含め、同様のリスクが報告されています。

認知機能が落ちていない通院中の糖尿病の人に頭部MRI画像を用いてアルツハイマー病に特徴的な海馬の萎縮を観察する「早期アルツハイマー型認知症診断支援ソフト」で検査したところ、59%に軽度な海馬萎縮が見られたと報告されています。

海馬は脳の記憶や空間学習能力に関わる脳の重要な器官です。糖尿病の95%を占める2型糖尿病には「高インスリン」と「高血糖」という特徴があり、この2つはアルツハイマー病の最も重要な危険因子です。

糖質の多い食品を食べて血糖値が上昇すると、それを抑制しようとして身体中から大量のインスリンがあふれてきます。この高インスリンが細胞に多くの害を与える可能性があるようです。

例えば予備軍を含めた中期までの糖尿病患者には、インスリン量は足りているのに機能が十分果たせなくなる人が多くなり、これをインスリン抵抗性と呼んでいます。

これがアルツハイマー病発症の一因となる理由は、インスリンのシグナル伝達は脳内の神経前駆細胞増殖や神経生存を助ける働きがあり、慢性的な高インスリンのもとではシグナル伝達が鈍化するためです。

インスリン抵抗性は高血圧を招き、動脈硬化の進行を速め脳血管障害になりやすくなります。その結果アルツハイマー病と合併しやすいことが知られている、脳血管性認知症のリスクを高めてしまいます。

インスリンは自身の仕事を終わると、インスリン分解酵素(IDE)により分解されますが、この酵素はアミロイドβの分解も行っています。慢性的な高インスリン下ではインスリン分解で手いっぱいとなって、アミロイドβを分解する余裕がなくなり、アルツハイマー病発症リスクが高くなります。

血糖が高いことはそれ以上に問題で、血液を流れる糖分は多くの異なるたんぱく質と結合し終末糖化産物(AGE)という毒性の高い物質に変わり、様々なタンパク質の機能を妨げます。

また「脳だけ糖尿病」の人もいるようです。インスリンには記憶力を高める作用があり、海馬のインスリン抵抗性が高まると、脳内のアミロイドβの分解排除がうまくできなくなり、アルツハイマー病のリスクが高まります。

実験的に血糖値が正常の脳だけ糖尿病のラットを作り、その脳内に持効性インスリンを注入したところ、低下していた空間認知機能が改善して正常になったという研究もあるようです。

こういった海馬を中心とした脳内でのインスリン抵抗性が、アルツハイマー病の大本にあるという研究もあるようです。