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脳の働きを支える「グリア細胞」

2019-08-18 10:25:23 | 自然
脳の神経細胞には毛細血管によって栄養や酸素が運ばれていますが、その量は1日に約2000Lとドラム缶10本分もの血液と、約60Kgもの酸素が届けられています。

この酸素や栄養素をたくさん消費すれば、その分老廃物や活性酸素も大量に出るので、それらを細胞の外に排出していかなくてはなりません。

通常身体の細胞から排出された老廃物を運搬し処理するリンパ系がその役割の中心を担うのですが、脳内ではリンパ系システムが見つかっていませんでした。つまり脳神経細胞から大量に出るごみが、どこで処理されているのか分かっていなかったという事になります。

それが数年前、ロチェスター大学メディカルセンターの研究チームが、グリア細胞が脳内の血管と一緒に働いて、脳内にリンパ系システムを構築していることを明らかにしました。

この働きは「グリンパティックシステム」と命名され、現在様々な研究が行われています。グリア細胞(神経膠細胞)には下記の3種類が存在します。

最も多いのがアストロサイトで、星形の突起を持ち脳内を走る毛細血管から栄養分を吸収しニューロンに供給したり、不要な物質が入り込まないようにして、ニューロン周囲の環境を調整しています。

次がオリゴデンドロサイトで、ニューロンが必要な情報を早く伝えられるように、電気信号を送る神経線維の軸索を覆い、よけいな電気信号を遮断する絶縁性の髄鞘(ミエリン鞘)を作っています。

最後がミクログリアで、これは傷ついたニューロンの修復を行うと考えられています。脳細胞と言えばニューロン(神経細胞)の印象が強くなっています。ニューロンは脳神経細胞の僅か1割にすぎないにもかかわらず、細胞同士が複雑に絡み合い、一大情報ネットワークを形成する脳機能の主役として常に脚光を浴びてきました。

一方脳細胞の9割を占めるグリア細胞は、ニューロンを固定したり、毛細血管から栄養を運んだりするなど、ニューロンの手助けをする補助的な脇役にすぎないと考えられてきました。

しかし近年は、グリア細胞が脳の発達や修復の際に、ニューロンの成長を刺激したり、組織を改変したりする物質を分泌して、神経回路の再配線をすることが視床下部を中心に立証されています。

マサチューセッツ大学のマウスによる実験では、視床下部周辺のグリア細胞のひとつ、アストロサイトを活性化すると過食を促進し、抑制すると食欲が抑えられることが分かりました。

アストロサイトの細胞膜には、神経伝達物質を受け取る受容体が存在し、ニューロンと同じように情報伝達に積極的にかかわっている可能性が示唆されています。

このようにこれまでの脳科学の常識が大きく覆されつつあり、謎の臓器であった脳が徐々に解明されてきているようです。