ごっとさんのブログ

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うがい薬買い占めで見る研究結果と真実

2020-08-12 10:27:37 | 時事
日本の西の方で「イソジン」などのポヴィドンヨード剤が「コロナウイルスを減少させる」といった、多分衛生機関が提出した常識的なレポートを、学術見識の無いいわば素人で発信力の大きな人が会見で発表し、大きな騒ぎになってしまいました。

私はこの会見をテレビで見ていましたが、非常に恥ずかしいことと感じました。ひとつには一般的にある研究結果は、その後の多くの再現性などの検証を経て、初めて真実となる点です。もうひとつは、その実験結果が科学的に正しい過程でなされたかの検証すらできていないという点です。

こういったところを無視して(知らずに)、知事という発信力の高い人が公の場で発言してしまうと、それは真実と受け止められ、うがい薬の買い占め騒ぎとなってしまうのです。

まず最初の点は、研究(実験)結果というのは、たまたま非常に良い結果が出ることがあるという、ある意味非科学的なことが起こってしまうものです。

一流の科学雑誌に掲載された論文が、他の人が追試を行って同じ結果が出る確率は、私の専門の有機化学は高い方ですが、それでも50%程度とされています。これは医学系は非常に低く20%程度といわれていますが、これは雑誌の査読者がしっかり見ていてもこの程度となっています。

つまりひとつの実験結果が真実であることはかなり低いことが前提となっているのです。これは研究者が嘘をついたり、ごまかしているのではありません。

研究者仲間では、チャンピオンデータは報告するなという約束があります。例えばある反応の収率が悪い場合、反応条件などの研究を行います。すると突然それまで50%程度だった収率が、90%近く出たりすることがあります。

ところがこれはその後全く再現されず、良くても60%程度しか出ないというのはよくあることです。このように科学の世界というのは、ひとつの実験結果から判断してはいけないという鉄則の上に成り立っているのです。

さて今回のうがい薬の研究が、本当に科学的に正しく、統計学的な検証がされていたのかが次の問題点です。

このブログではアビガンに効果がないということを紹介しましたが、実際の回復者を見るとアビガン投与群は無投与と比較すると良い結果が出ていました。しかし対象者が少なかったため統計学的には有意差がなく、効果なしと判定されたわけです。

今回のうがい薬の試験が何百人規模で行われたとはとても思えませんので、本当に効果があったかどうか疑わしいと思っています。

現在のコロナの状況を見ると、少しでも良さそうなものに飛びつくというのはやむを得ないのかもしれません。単にうがいをするだけでなく、飲んでみようなどという人が出ないことを祈っています。


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