ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

バリア機構を持つ皮膚を突破する病原体

2022-09-23 10:30:58 | 健康・医療
ヒトの皮膚は非常に優秀なバリア機能を持っています。私は皮膚に塗るだけで効果を発揮する薬が作れないかを研究したことがありました。

ある大学と共同研究をしたのですが、皮膚のバリア機能は想像以上にしっかりとしており、真皮までも入るようにすることはかなり難しいものでした。

私はこの皮膚吸収を促進する薬剤を作ったのですが、とても毛細血管まで到達させることはできませんでした。その点現在使われている湿布薬は、かなり皮膚の奥まで薬剤が届いていますので、多くのノウハウが使われているのでしょう。

さて病原体の感染経路は口や呼吸器だけでなく、この優れたバリア機能を有する皮膚でさえ突破してしまうという経路もあるようです。ヒトが病原体に触れても、それだけで感染するということはほとんどありません。

ヒトの表皮は、病原体の侵入を防ぐ優秀なバリアとしての機能を持っているからです。しかし水虫(白癬菌)のように、ごく一部の病原体は皮膚そのものに感染することがあり、この様なケースを接触感染と呼んでいます。

咳やくしゃみとともに生じた飛沫などが別の人に付着し、手指などを介して口に運ばれ、経口感染や経気道感染を起こしたり粘膜から侵入したりするケースも接触感染と呼ばれており、境界はあいまいになっているようです。

粘膜以外の皮膚から体内に病原体が侵入するのが経皮感染です。ヒトの皮膚は優秀なバリアですが、例えば傷口や火傷などがあると、その部分から病原体が体内に侵入することがあり、創傷感染と呼ばれています。

また蚊やダニ、ノミ、虱などの吸血性の節足動物が「病原体の運び屋」として病原体を媒介するものが多くみられます。吸血するときに皮膚を傷つけ、血液や体組織に病原体を送り込んでしまい、この様なケースをベクター感染と呼んでいます。

ペストやマラリア、デング熱などがその例であり、媒介する節足動物の種類は病原体ごとに決まっています。皮膚から直接侵入可能な病原体も皆無ではなく、住血吸虫や糞線虫などの一部の寄生虫は、皮膚を破って侵入します。

細菌では野兎病菌が付着した表皮に潰瘍を作って感染可能とされています。このほか家畜やペット、野生動物などヒト以外の動物が感染源になるものもあり、人獣共通感染症と呼ばれています。

この中には狂犬病のように、動物からヒトに伝播しても、ヒト同士では伝染しない「伝染病でない感染症」もあります。この様に皮膚からの感染症は多数存在しますが、皮膚のバリアを超えて体内に侵入するものはほとんどないといえるようです。

水虫などのごくわずかの例外を除けば、皮膚に何らかの物理的な傷を作って侵入するものがほとんどです。それだけヒトの皮膚は優れたバリアといえますので、化粧品などの宣伝文句は疑ってみる方がよいのかもしれません。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿